エピローグ 回る世界
広く真っ白な空間に再びやってきた。
私とヨージとリンツの三人。
なにもない空間に、老人は居る。
「そういう女が好みか」
老人はこちらを見て言った。
その言葉を無視して、ヨージは口を開く。
「こいつらを元の世界に戻してくれ」
ヨージは深々と頭を下げる。
いつものヨージからは考えられなかった。
それほどの人物ということだろうか。
老人は押し黙り、なにかを考えている。
「私は、ご一緒させていただいてもかまいませんわ」
リンツが言った。
まだ完全には、事情も把握できていないだろうけれど。
「おい」
「私には、見えていないことが多すぎます。これで終わりなんてどうにも納得できませんわ」
リンツはキッパリ言い放った。
私はどうなのだろう、ふと考える。
世界を救ってもらって、知らない世界に来て。
知らない場所へ行って、知らない人々に会って。
色んなことを教えてもらって、色んなことを経験して。
悲しいこともあった。
大変だったし、体もまだ痛む。
そして、やっぱり元いた世界も恋しい。
世界はどのようになったのだろうか。
友人は元気にしているだろうか。
故郷の様子も確認したい。
それでも、
「私も、連れて行ってください」
と言う。
「よく躾けられているようだな」
「黙れ」
老人の言葉をヨージは遮った。
「考え直せ、酷い旅だ」
ヨージは私たちへと忠告する。
「私、まだお肉の味忘れられませんの」
リンツは平然と答え、
「お邪魔じゃなければ、一緒に行きたいです」
私も答える。
リンツが言ったような、知らないことを知りたいという気持ちもある。
でも、そういうことを含めて、まだ旅は終わってないと感じる。
ヨージさんだけが、まだ旅を続けていくのはなんだか嫌だ。
せっかく助かった命、自分の思ったままに生きていく。
「安心しろ、帰す気はなくなった」
老人は愉快そうな口調で告げた。
ヨージは老人を睨みつけ、息を吐く。
「どちらにしろ、あいつを倒せばそこで終わりだ」
切り替えて大剣を構えるヨージ。
「わかりましたわ」
髪を振り、体勢を整えるリンツ。
「ふう」
私は、拳を握って確認を行う。
この空間では、いつものように魔法が使えそうだ。
「いくぞ」
私たち三人は、老人へと向かっていく。
イノナカノ私、世界を知らず 嘘付本音 @honneusotsuki
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