第12話 アガサ・クリスティ「アクロイド殺し」(後)
第11話の続きです。
☆後半
翌日から、ポワロとシェパードは別行動をとる機会が多くなった。
シェパードはセシル・アクロイドに呼ばれた。
(相変わらず他人の悪口ばかりのセシルがウザい)
セシルはアクロイド氏の食器を漁り、ロンドンに競りに出そうとしていた。
ラルフ・ペイトンの編み上げ靴が黒なのか、茶色なのかを、ポワロは知りたがっていた。
その調査をキャロラインがしているようだ。
ポワロは茶色だろうと考えていたが、キャロラインの調査によると黒だった。
シェパードは、キャロラインのカリンのジャムを届けにポワロの家にやってきた。
そして、セシルからの情報と、編み上げ靴の事をポワロに話した。
レイモンドはお金に困っていたことをポワロに話した。
アクロイドが亡くなって500ポンドの遺産が入って喜んでいたことを、
後ろめたくて隠していたのだが、ポワロに嘘をつき続けるのもつらく、話に来たのだった。
ブラント少佐が、フローラに恋をしているとポワロは喝破する。
その晩、麻雀大会が開かれた。(このシーン、麻雀を知っていると結構面白いんだけど本筋にはほとんど関係ないw)
シェパードが『天鳳』を引き当ててしまい、つい興奮して結婚指輪の話をしてしまう。
キャロラインは、「フローラはラルフを愛したことは一度もない」と言った。
これからパーカーへの尋問が行われる。。
恐喝者がパーカーであればいい、とポワロは言った。
パーカーは前の雇い主を恐喝していた過去があった。
パーカーはアクロイドも脅迫したかったため、その種を探そうと立ち聞きなどして廊下をウロウロしていたのだった。
パーカーは、アクロイド本人が脅迫されていたと信じていたようだった。
つまり、フェラ―ズ夫人への恐喝とは無関係なのだった。
シェパードは、ポワロに『結婚指輪』の件を喋ってしまった事を謝罪した。
フェラ―ズ夫人は、1年間で2万ポンドも恐喝されていた。
キャロラインはシェパードの8歳年上で、シェパードの母親代わりとして面倒を見てきたつもりだという。
キャロラインの推理によると、アクロイドを殺せたのはラルフとフローラだけ。そして、ラルフが犯人だとはとても思えない、と言う。
ポワロはふと呟く。
「ある男には、弱い性格がある。何もなければ、善良な市民として一生を過ごしたはずです。
たまたまある秘密を掴んでしまう。今こそ金を掴むチャンスだ、と弱い性格が訴えかける。
そして、欲に目がくらんで、どんどんやりすぎてしまう。追いつめすぎて、金の卵を産むガチョウを殺してしまう。
しかも、悪事が暴露される危険性に直面してしまう。彼は一年前とは変わってしまい、道徳心は薄れてしまい、アクロイド氏の口封じをしたのです。
そして、彼はまた親切な人間に戻りますが、必要が生じればまた再び短剣を振りかざすのです」
(ポワロは完全に、この時点で動機と犯人を見抜いている)
リバプールであの晩、アクロイド家を訪ねてきた謎の男、チャールズ・ケントが捕まった。
彼はケント州で生まれたのだろう、とポワロは言った。
チャールズ・ケントは大金を持って酒場に行ったという。そのため、アクロイド殺害の時間にはアリバイがあった。
ポワロと警察の訪問にフローラは動揺したが、同席していたブラント少佐に「一緒にいて下さい、お願いします。警部さんの話をあなたに聴いていただきたいんです」と言った。
40ポンドを盗んだのはフローラ・アクロイドだった。
そして、それを隠すためのフローラの偽供述(アクロイド氏にお休みの挨拶をした)によって、
犯行推定時刻がすっかり変わってきてしまうのだった。
フローラとラルフを結びつけたのは、『お互い弱い人間だったから』だという。
ブラント少佐は、(フローラをかばうため)自分が金をとったと苦しい嘘をつくが、すぐに見破られてしまった。
ポワロはブラント少佐に、「あなたはフローラを愛しておいでです。そして、フローラにそれを隠してはいけませんよ」と言った。
「あなたは彼女がラルフ・ペイトンを愛しているとお考えのようです。しかし、フローラはラルフと結婚する事で、継父を喜ばせたく、耐えがたい家での生活に嫌気が差したからです。
フローラはラルフを友だちとして好意を持っています。フローラは義理堅い人間なので、ラルフに容疑がかかったとみると、立ち上がらなければいけないのです。
しかし、フローラが愛しているのはラルフではありません。あなたがフローラをもう愛していないなら話は別ですが」とポワロは言った。
ブラントは「お金の事なんかで、フローラを嫌いになったりはしない」と言った。
「私は愚か者だった」とブラントは言った。
「あなたは愚か者ではないですよ。恋に落ちた愚か者というだけです」とポワロは微笑んで言った。
(文章で台詞だけ読むと冷たいけど、ポワロの暖かな感情を感じるシーンです。ポワロは『ゴルフ場殺人事件』でもヘイスティングスの恋のキューピッドを務めていました)
ポワロは新聞に、
「リバプールで、ラルフ氏が発見された」という偽の記事を載せてもらうよう頼んだ。
シェパードは機械いじりが趣味で、手製のラジオも作れるようだった(この情報、出すの遅すぎない?)。
ミス・ラッセルがやってきた。チャールズ・ケントに似ている、とシェパードは感じた。
フローラの偽証が明かされ、チャールズ・ケントが犯人ではないかとラッセルに話すと、ラッセルは急いで弁明を始めた。
「彼がやったのではありません。私が証明します!」と言うと、ラッセルは話した。
チャールズ・ケントとは、ミス・ラッセルの息子だった。
遥か昔、ケント州に住んでいた時に、未婚のまま産んだ子供だった。
彼はグレてしまい、麻薬などにも手を出していたので、ラッセルはケントをアメリカに出した。
しかしケントは金の無心をし、遂にラッセルの元にやってきたので、あの晩、屋敷の外で隠れて会う事にしたのだった。
皆を集めて、最後の推理
ポワロが書いた記事は、翌日朝刊に載った。
ポワロがシェパード家にやってきた。
今夜、皆を集めて食事会を開きたいという。
シェパードが皆を呼び集める役になった。セシルの家に行くと、
フローラとブラントが婚約したということだった。
取り乱したアーシュラ・ボーンが、シェパード家を訪ねてきた。
すぐにポワロに会いたいと、言っているらしい。
「あなたはアーシュラ・ペイトン。ラルフ・ペイトン夫人ですね?」とポワロは言った。
ラルフが逮捕された、と聞いてアーシェラは泣いていた。
アーシュラ・ボーンは父親が亡くなると、世の中に出て自活しなければならなくなった。
そこで雑用係のメイドになるため、姉に推薦状を書いてもらった。
やがてラルフと出会い、秘密の結婚に至る。
ラルフは借金を返し、父から独立したら、結婚している事を父に伝えようと思った。
そして数か月後、アクロイド氏に「フローラと結婚すれば、大金をやる」と言われ、ラルフはそれに頷いてしまった。
アクロイド氏は勝手に婚約を発表しようとした。
アーシュラは驚愕し、ラルフを呼び寄せた。アーシュラはアクロイド氏に全てをぶちまけると話した。
その午後、アーシュラはラルフと既に結婚していると告げると、アクロイド氏はブチギレ、アーシュラは解雇されてしまった。
アーシュラとラルフは大喧嘩をし、アクロイド氏はその時間に死んでいた。
ラルフはそのまま逐電してしまった。
ラルフと会ったのは21時33分ぐらいで、屋敷に戻ったのは21時45分だったということだ。
屋敷に戻って、アーシュラは22時くらいまで自室にいたが、当然アリバイはなかった。
シェパード氏が事件の手記を書いているというと、ポワロは大喜びをした。
今すぐ見せてくれというポワロに、シェパードは気後れしながらも、原稿の束を渡した。
昨夜のミス・ラッセルの訪問のシーンまでを、既に書いておいたのだった。
原稿を読んだポワロは、「謙虚で寡黙で感心しました」と言った。
「ご自分の個性を出そうとしないので驚いた
非常に綿密で、ありのままに記録している。ただし、あなた自身の行動については適度な沈黙を保っている」とポワロは言った。
___________________
客たちがやってきた。
セシル、フローラ、レイモンド、ブラント、アーシェラ、シェパード、パーカー、ラッセル、ポワロ。
まず最初に、皆の前でアーシュラとラルフの結婚をポワロは発表した。
フローラはアーシュラの肩に手をかけると、アーシュラを祝福した。
ラルフの所在についても知っている、というポワロに皆の疑問が集中する。
それに対してポワロは「私は全て知っている」と答え、「ここにいる全員が容疑者です」と言った。
今までの経過をポワロは全て話した。あずまやで、あの晩2組の男女が別々に秘密に会ったということ。
ミス・ラッセルと、チャールズ・ケントの会合。
アーシュラ・ボーンと、ラルフ・ペイトンの会合。
アーシュラとラルフには、遺書を書き換える前にアクロイド氏を殺すという動機があった。
しかし、時間が合わなかった。
さて、アクロイド氏は誰かと話していたと信じられていたが、本当に誰かと一緒だったのだろうか?
アクロイド氏は「最近とても物入りなので、あなたの要求に応じる事はできかねる」という声をレイモンドに聞かれている。
しかしよく考えるとこれは、実際の話し言葉ではない。
手紙の口述筆記の時ぐらいしか使わないような表現だ、とポワロは言う。
アクロイド氏は、ボイスレコーダー(現代のと違って、とても大きい)を買っていた。
ポワロの招きに応じて、扉口からラルフ・ペイトンが入って来た。
シェパードはラルフ・ペイトンに会いに行き、精神障碍者施設に彼を隠した。
ペイトン大尉を救うためには、真犯人が自白しなければならない、とポワロは皆をじっくり眺めまわしながら言った。
「私はアクロイド氏を殺した犯人が、この部屋にいる事を知っています。明日、警部にそのことを話します。お分かりですか?」とポワロは突然凄んだ。
皆が出て行った後もポワロはシェパードを引き留めた。
シェパード氏に電話をかけた人物は誰なのか。
あの晩のうちに殺人が発見されて得する人物は誰なのか。
椅子は一体なぜ動かされたのか。それは、テーブルを遮るために置かれたのだとポワロは言う。
殺人の直後に持ち帰れないもの、そして、いち早く持ち帰りたいもの。
まずパーカーは容疑から外れた。わざわざ電話をかけなくても、屋敷にいるのだからすぐにものを隠せるからだ。
では、何を椅子で遮ったのか。それは録音レコーダーだった。
犯行現場にすぐに向かい、録音レコーダーを鞄に収められる人物。
21時半にアクロイド氏は既に殺されていた。
彼の声は、録音レコーダーに事前に録音されていた声だった。
しかし、時限装置を取り付け、好きな時間に予約で動かすには多少の知識が必要だった。
更にラルフの靴を、持ち出すことができた人物。
「それは……シェパード先生、あなたです」
シェパードは手記を書き終えた。シェパードは自殺することは決めていた。
けれど、シェパードが殺人者だということだけは知られたくなかった。
キャロラインに、犯罪の事実を知られたくない。
ポワロならきっと、キャロラインにはうまく伝えてくれるだろう。
そう信じて、シェパードはベロナ―ル(毒薬)を飲み込んだ。
(録音した声だったのだとしたら、別に口述筆記っぽい文章じゃなくても良かったのでは?? まぁいっか)
☆ドラマ版感想
デイビッド・スーシェ主演の「名探偵ポワロ」は殿堂入り級の名作ドラマシリーズだと思いますが、
本作を映像化するのはさすがに無理がありましたね……。
文章でしか表現できない作品なので、大幅な脚色は致し方がないです。
ただ、映像化にしても、(読んでいる時の印象よりも)シェパード医師老けすぎwww とか、キャロラインが妹になっとる!とかいろいろありますが、本作でほぼ唯一心温まるブラント少佐の存在が抹消されているのは物足りなかったですね。
原作は(人が死んでるのに)もっと牧歌的な雰囲気なので、全然印象が違いましたw
☆記事を書き終わって
ストーリーをなぞると、1万文字超えるのか……なっげぇわ……。
書く方も大変なら、読むほうも大変ですね(読んでくれる人いるんか?)
しかし、ミステリ作家志望者にとっては、超有名なこの作品は必読だと思いますし、情報の出し方や伏線の貼り方などは、
『物語を楽しむ』のとは別の視点で、こういう『解剖分析』はやって損はないと思います。
まぁ、僕はファンタジーを書くことが多いので、ミステリを書く気は全くないんですけどねっ!!
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