第7話 歴史学の勉強

スパイン大陸がこの世界で最も大きな大陸に対して、スパイン大陸と海を隔てて存在する二番目の大きさの大陸はクワイド大陸である。クワイド大陸は様々な気候が存在する大陸でもあり、国の総数は55か国と小さな国が親密関係にある。

そんなクワイド大陸は約400年前魔王が支配していた。というのも、クワイド大陸にあるソイレス王国は魔王の生まれの地である。

ブランドン王国が建国される前、魔王率いる魔王軍が世界統一を目指し各大陸に勢力を伸ばしていた。そんな魔王軍に対抗するために、魔王軍と対峙している勢力と勇者率いる勇者軍は立ちはだかった。そんな二つの勢力が大きく、激しく衝突した地がある。

その場所こそ、ブランドン王国の首都スピナタスである。しかし、この戦争は魔王軍が優勢であったのだ。軍の数、質、戦略、特に魔王軍では勇者たちが知らない魔法が使われていた。勇者軍が魔王軍に勝る要素はなかった。しかし、勇者軍は勝てたのだ。

圧倒的な勇者の力によって…。

現に今、スピナタスのどこかには魔王の亡骸が葬られていると噂されている。



祐希ゆうきたちはいつも無数にある本棚に囲まれながら、必要とあれば賢者が黒板のようなものを使いつつ勉強をしている。夏休みに受験勉強を図書館でする学生のようだ。

洞窟内は青く明るく、始めは違和感も抱きつつ慣れない言語で勉強していた祐希たちだったが、今となっては慣れてしまったものだろう。

古紙とインクの匂いに包まれ、祐希たちは黙々と勉強をしている。



ゴツン!祐希たちが歴史書を使い勉強するなか誰かが机に額をぶつけ居眠りから目覚めたようだ。


賢者が「やれやれ」と首を横に振りながら言う。


「また、浩也こうやかぁ。お主は歴史学が大嫌いじゃの〜」


「だって、この国の歴史を勉強しても実感湧かねぇつぅかぁ〜、俺元々御伽噺おとぎばなし系好きでもないんだよなぁ」


「これは実話じゃぞ?」


「いや多分そうなんだろうけどよぉ…。なんかなぁ…」


賢者は普段見る事のない真面目に考えている浩也のことが無性に気になる。


「何が言いたいんじゃ?言うてみろ?」


浩也が頭をガシガシ掻きながら、両手をググッと伸ばし背伸びして答えた。


「いや、魔王軍って圧倒的に勇者軍より強かったんだろ?なのに、たった一人の力でどうにかなるもんなのかなって」


浩也の疑問に何か思ったのだろうか、莉菜りなも間髪を入れずに賢者に聞いた。


「これって本当に実話なんですか?私も浩也君が言ったことが気になっていたの」


「歴史書に書いてある通りじゃよ。勇者は魔王軍を遥かに上回るほど強かったんじゃ」


賢者はそう言っていたが莉菜の目には賢者が少し顔色を変えたように見えた。莉菜は賢者が何かを隠していると勘付いた。


浩也は「そっか」と軽く納得し、背伸びしていた体を元に戻し再び勉強を始めた。



祐希たちは夜ご飯を食べ終わるとそれぞれ自由時間なので各自したいことをしている。

祐希はご飯の食べた後眠たくなって、すぐに自分の部屋に戻り寝た。しかし、祐希は今誰かに体を揺さぶられている。


「…き。…うき。祐希!」


誰かの声が聞こえる。ゆっくりと重い目蓋を広げた。


晴人はると晃彦あきひこ!」


寝ぼけた目を開くと晴人、晃彦が祐希の前で笑みを浮かべている。


「何気持ち悪い笑みを浮かべて寝込みを襲おうとしているんだよ」


「祐希違うよ!晴人が祐希も呼ぼうって言うから二人で起こしにきたんだよ」


「呼ぶって?」


「え〜となぁ祐希。単刀直入に言うけど、今から俺、晃彦、うみ、祐希で魔法の訓練しないか?」


「魔法の訓練?」


祐希の胸は激しく踊った。何せ祐希は隠れアニメ好きであるからだ。普段はことにアニメ好きと気付かれないようにしているが、歴としたアニメ好きなのだ。


「晴人。晃彦。お前ら最高だぜ」


眠気は吹っ飛び、祐希の顔には好奇心の表情が張り付いている。

祐希の部屋を出ると、部屋の前には決め顔を作った海が壁にもたれながら短時間で考えたのであろうと思われる決めポーズで立ち振る舞っていた。そんな海の立ち振る舞いに祐希のテンションはおかしな方向に進んでいた。


「よくぞ俺を呼んでくれた。同志よ!」


海はニタリと側から見たら気色の悪い表情を浮かべ、興奮気味だった。


「っふ。祐希がいなければ話にならないのだ。同じ道を目指すものよ」


相変わらずの厨二病ぶりを発揮する海に、祐希も調子を合わせていた。


「あぁ。では早速魔法を学びに行こうか同志よ」


「我が同志よ。我らの望むべき姿へ!さぁあ!我らで、我らで魔法の極致へ!頂きへ!いざ行かん!!」


「そうだな同志よ。まずは、魔導書らしきものを見つけよう」


自分の世界に入り込んだ海に合わせるのは至難の技。結局のところ海の調子に合わせるの手っ取り早い。


四人は無数にある本棚から魔導書を探した。埃の被った魔導書や何か粘つく魔導書など新しいものから古いものまであり、どれから手をつけたらいいのか分からずじまいであった。そんななか、海は頭上にある背だけが金色でその他は緑色の本が目に入った。

すぐさま四人を呼び、海は身長が足りず届かないので祐希にその本をとってもらい四人でその本を囲い着席した。


その本はずっしりと厚く、表紙の文字も金色で書かれていたが祐希たちには読めなかった。

しかし、読めなかったのは表紙の文字だけでありその他は読むことができた。

本の内容は魔法のことについて書いてあったが祐希たちが予想していたものとは違った。

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異世界行路 〜仲間たちとの学園生活〜 松皇 光 @tannpakunn2004

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