第4話 テイン語
時の流れ。
それは人により異なるとも言える。
例えば、数学の授業が好きな人が感じる時間と、数学が嫌いな人が感じる時間は異なる。
また、電車の中にいる人と電車の外にいる人との時間の相違。
時の流れは皆一緒に見えて実は異なる。
単純そうで単純ではない。
時の流れを意図的に変えることができるのはこの世界ではおそらく賢者だけであろう。
拓たくが顔を引きつりながら、今見た出来事について質問する。
その質問に対し賢者が容易に説明した。
「わしが時空変換理論を研究しておるのは昨日言った通りじゃ。その研究過程で見つけたのじゃよ。時の流れを変える、変換する方法をじゃ!正確には空間を歪めたと言った方がいいのじゃろうか。今はめ込んだ宝石には術式や魔力信号、魔力回路など、まぁお主らにも言っても理解できないものがプログラムされておる。それを魔力拡張機と同じような働きをする壁穴に埋め込んで洞窟中に拡げたんじゃよ」
「時の流れを変えたと言ってましたけど、どういう風に時の流れを変えたのでしょうか…?」
「洞窟外での時間と洞窟内での時間の流れを変えたのじゃ。そうじゃの…洞窟外での1時間じゃと…、ここじゃと1日くらいじゃのぉ。」
「てことは…、外での1時間はここでは1日で、1日は24時間で…えーと…」
拓が指を折りながら、上向きながら暗算している。拓以外のクラスメイトも考えている。
「1ヶ月で約2年ってとこかしら?」
計算にもたつく拓に変わり、スラリとしているモデルのようなスタイルに艶のある長い髪を持つT H E美人。学校で一番頭の賢い・村上莉菜むらかみりなが即答した。
「お主、計算早いのぉ」
賢者は満足げに髭をもしゃもしゃ弄りながら莉菜を褒めた。
「そうじゃ、じゃから2年という時間がある!ここで過ごす約2年は外の世界で約1ヶ月じゃ!わしがみっちりお主らを教える時間はある!早速この国の言葉から勉強じゃ〜!!」
「ちょっと待ってくれる賢者さん?」
「どうしたんじゃ?頭の良いお嬢さん?」
莉菜が何か怪奇に思った。
「なぜ、ここの世界と私たちがいた世界での時間の概念が同じなのかしら?」
「お主は凄いのぉ〜!」
賢者はニタリと笑みを浮かべ高らかに笑った。
だが、笑い終えるとスッと我に戻ったのだろうか、一瞬深い表情が漏れた。
「その疑問はお主らが入学するときに話をしよう」
莉菜は不満げな顔をして「そう」とやんわり応えた。
二人のやりとりで多少空気は乱れたが、賢者がパチンと手を鳴らし空気を戻した。
「さて、気を取り直して早速勉強じゃ〜!!」
こうして祐希ゆうきたちは賢者によるブランドン学園に入学するための勉強が始まった。
祐希たちにとってここで過ごす1日は外の世界で流れる時間より早く不思議な感覚だと思うが、特に違和感を抱くことはなかった。とういうより、実感が湧かなかったのだ。
賢者は祐希たちに有り余った部屋を貸し出した。
一人一部屋はあるが昨日同様、部屋の中は何もなくベッドすらなかった。
無数に有り余る部屋に何の部屋だったのか疑問を抱くものもいた。
昨日召喚された場所から、一直線に歩くと今朝の長机や研究机に出る。
その場所でこれから食事や会議はここですることになった。
食事は賢者が洞窟内で栽培している穀物や野菜がメインである。
その長机の奥側には無数に並ぶ本棚があった。
また、入ってきた穴とは別の穴が洞窟の壁中に空いている。
その穴の中に監獄のように無数の部屋が並んでいた。
流石に地べたで寝るのが嫌すぎるので女子たちの講義により、各自の部屋にベッドはつけられた。
あともう一つ、女子たちの講義により余った部屋を活用して浴槽は無理だったがシャワーをつけることができた。
シャワーは賢者の手作りであり、何か刻印された鉱石から水もしくはお湯が出るようになっている。
男子は女子様様である。
男子たちは女子たちの前で正座し「「「ありがたやぁ〜」」」と拝んだ。
賢者は祐希たちに魔法などを教えるのではなく、言語を徹底して教えた。
賢者の計算でいくと1年以内に言語を理解できるようになれば問題ないらしい。
祐希たちにとって新しい言語を勉強することはとても容易なことではなく、何回も逃げ出したくなったことであろう。
しかし、この世界で生き抜くため、この世界で順応するためには必要不可欠なことであった。
この国の言語は『テイン語』と言い、日本語とは異なり英語に近いものであった。
そんなこともあり、テイン語に向き不向きな人で別れた。
祐希は英語が最も苦手な科目であったため苦戦している。
意外にも浩也、拓はテイン語の飲み込みが早い。
案の定、莉菜はほぼ完璧に理解している。
どのように勉強しているかというと、一対一で賢者の分身体と会話したり、歴史本の音読、賢者の魔法による歴史本の脳内再生、毎食前に単語テストがあり、全問正解した人から食事に手をつけることができるなどとにかくアウトプットがほとんどであった。
そんな日々が過ぎていくなか、皆が寝静まる頃。
祐希は自分たちが召喚された場所に座り込んでいた。
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