第17話 消失
それぞれの研究テーマが決まり、数日後再び魔術研究棟の講堂に新入生は集められていた。
「なんだか少し人数が減っているきがしますね」
「エマもそう思う? 私もそんな気がしていたんだよね。ヴェンはどう思う?」
「うーん、たしかに減っているような気がするけど、集まっていないだけじゃない? 研究に没頭しすぎて」
講堂内を見渡すと、入学式後と比べてグループが形成されていた。恐らくそれぞれの研究室に配属されたメンバーで固まっているのだろう。そんな僕らも、研究テーマを決定する最終日に来た、エマ・オグレディも含めた3人でかたまって着席していた。まだ数日しか経っていないが、エミリーとオグレディはすでに名前で呼び合う仲になっている。ヴェンとも仲が悪いわけではなく、ある程度打ち解けてはいる。講堂の扉が開き、長いひげを蓄えた賢者ローズが現れる。
「集まっておるな。いいかよく聞きなさい。すでに察しているものもいるかもしれんが入学式から比べて人数が減っておる。とはいってもこれは毎年のことじゃ」
講堂内がざわつく。いつものことということは研究テーマを決めるという事案で生徒数が減ることだろうか。ヴェンはたかがこれだけのことで生徒数が減るとは考えにくいと思っていたし、見たところ一気に10人程度減っている。すでに入学試験で多くの人数が落第となっているなか、入学直後の生徒を1/5まで減らすのはおかしいと考えていた。
「今年も想定内の人数が研究テーマを決めれず、退学となった。魔術学部の学生として自身のテーマを1週間という期間を与え、決めることができないというのは元々魔術学部で学ぶ資格がないと同義じゃ。がしかし、今年に限っては少々困ったことになっておる。研究テーマを決められず退学したのはわずか二人、その他の生徒に関しては行方不明となっているんじゃ」
再び講堂内がざわつく。ヴェンたち3人は互いに顔を見合わせる。エミリーが思わず立ち上がる。
「行方不明の原因についてはわかっているんですか?」
賢者ローズは髭を触りながら目をつぶりじっと考えるようなしぐさをしている。何を考えているかはさっぱりわからない。
「それは現在調査中じゃ。ただ大きな魔力が感知されたあと、消失している事案が学内で確認されている。これがなにかしら関係しているかは不明じゃが、魔力に関しては魔術学部の学生が長けておる。もしかしたらなにかしらの事件に巻き込まれている可能性もあるのでむやみに出歩かぬように、もし何かあればすぐに教授たちに伝えるようにとだけ伝えておく」
エミリーは黙り込んでいる。ローズの言葉を咀嚼し、なにかの糸口を見つけるように考え込んでいるようだ。いつものように天真爛漫な表情はそこにはなかった。これからエミリーはなにかしら動くかもしれないとヴェンは考えながらエミリーを見つめていた。
「まぁ魔術学部に限らず、スターズ学院の生徒は冒険者であることも多い。そのため、迷宮区攻略中の死亡ということもたびたび起こる。生徒の死や、行方不明の事案についてはそこまで詳しく調査しないんじゃ普通。ただ今回は入学直後の生徒が行方不明になっていることもあり、注意喚起しとる。くれぐれも気を付けるように」
そんなこと言われてもどうやって気を付ければいいんだろうか。そう思っていると
「どうやって気を付ければいいんですか!?」
とエミリーが大声で発言していた。
「それは・・・・・・まぁ自分たちでなんとかして」
無責任すぎる・・・・・・。
「これから研究するにあたってじゃが、何かしらの研究成果、結果がでれば報告するようにその報告内容をもって進級するにふさわしいか判断していく。最後の最後で報告するもよし、細かく報告するもよし。すべて君たちに任せられている。以上じゃ」
そう言い残し、講堂からローズは出ていった。
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