第16話 著者はE.O
「私はエマ・オグレディといいます! 私、この本を読んでもう夢中で! なにをやればいいかわからなかったんですけど、これ読んだ瞬間にこれだと思いまして・・・・・・」
赤髪のメガネ娘は興奮そのままに自己紹介をする。人見知りかと思えば、自分の好きなこと興味のあることにはのめりこんでしまうタイプらしい。
「まぁまぁ落ち着いてオグレディさん。お茶でも飲んでください」
そういってヴェンはお茶を差し出す。オグレディが読んでいる本には興味があった。まだ地下の本まで見ることができていないが、それはオグレディだって同じだろう。上から見ていたとすれば、元からテーマを決めていたヴェンたちのほうが見つける可能性は高いはずだ。図書館を物色する時間を多く取れていた。しかし、ヴェンとエミリーは見つけることができなかった。こんなにも二人が定めた研究テーマに沿っている本を見逃すことがあるだろうか。もしかしたら、先にオグレディが図書館にいき見つけていたということも考えられるが。お茶を飲み少し余裕が出たのか、一気に話してしまったことにいまさらながら恥ずかしさを感じたのか、オグレディは下を向いて赤面しているかのように見えた。
「オグレディさん? 大丈夫?」
エミリーが気に掛けると言葉を発せず頭を上下に振るしぐさを見せる。
「その本は図書館で見つけた? 僕ら図書館の1階から探していたんだけど、見つけられなかったなぁ」
「あの・・・・・・私はこの本、1階で見つけましたよ? それも昨日です。研究テーマをどう決めればいいかわからなくて、ずっと部屋にこもっていたんです。いよいよまずいと思って、図書館に行ってこの本が目に留まって、読んだら止まらなくて・・・・・・」
ヴェンとエミリーは顔を見合わせる。二人で探していたのに見つけられないなんてあるのだろうか。
「そうなんだ。どんな内容なの?」
目を輝かせるオグレディ。
「この本はですね! 転移魔術論と書いているんですがロマンス小説のような内容で書かれていて、その過程の中で転移魔術についても触れられるような形で書かれているんです。ロマンス小説が私大好きで、こういう本としては邪道な書き方とは思いますが、もう夢中になっちゃって」
「なんか変な子だね」
小声でヴェンに耳打ちしてくるエミリー。同じことを考えていたところだった。ちゃんとした内容がかかれているか怪しいところである。
「それってちゃんと転移魔術についてもかかれているの?」
「これが書かれているんです! すごいです! 著者はE.Oってかかれているんですけど、知っていますか?」
「E.O・・・・・・全然思いつかない。エミリー知ってる?」
「うーん・・・・・・グレッグさんのとこで読んでいた本でもそのイニシャルはみたことなかったかな」
「グレッグさんって、まさか元スターズ学院校長のターメル・グレッグ先生ですか!?」
「え、そうだけど。グレッグさんてそんなに有名なの?」
「ターメル・グレッグと先生といえば魔術師の地位向上に大きく貢献したって言われてるんですよ」
二人は顔を見合わせる。村では知らないことばかりだとヴェンは思っていた。
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