幕間 転移魔術理論
きっかけは彼に会いたかっただけ。遠く離れて暮らす彼にいつでも、思ったらすぐに会いに行けるようにするにはどうすればいいのかを考えた。時間をかければ会いに行けるし、会いに行けない時間も愛を育む時間ととらえることもできるとは思う。そうだとは思うけれど、私は会いたいのだ。自分が思ったときにすぐに会いたい。ただそれだけ。
そこで思いついたことは自分自身が転移することだった。魔力の存在するこの世界で、自身の魔力や魔石を利用して任意の場所に転移することはできないだろうか。空間に干渉し、任意の場所をつなげる。これが完成すれば首都にいながらも彼のもとにすぐに駆け付けることができるし、私自身がさみしい想いをすることもない。
転移魔術理論と名付けてはいるが、まだ確立したものではない。これを後世に残すかどうかもわからない。ただ私のためだけに残すものとなるか。今後、誰かがさらに転移魔術を発展させるのかはわからない。ひとまずは研究成果を残していこうと思う。序章として転移魔術を確立するきっかけ、自分自身の想いを書き記すとする。
転移魔術が完成すれば会いたい人に会いにいつでも行くことが可能になる。こんなわくわくすることがあるだろうか。寂しさがいとも簡単に埋まることがあるだろうか。物体を転移させることができれば流通にも大きな影響を及ぼすだろう。馬車で数日かけて運んでいたものが一瞬で移動することができるようになる。この転移魔術の研究は経済においても大きな影響を及ぼすことになるだろう。
だが、忘れないで欲しい。この魔術を研究するきっかけとなったのは彼の存在があったからこそなのだ。心の底から愛することのできる存在、いつでも身近に感じたい人。誰もが愛する人にすぐに会いに行くことが出来るようにしたい。
私は一緒にいるだけでこんなにも幸せになれる人と出会えたことに感謝したい。いつまでも幸せに、幸福な日々が続けられるようにと願うばかりだ。
E.O
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます