第21話 才能の差は埋められない
「ちっ・・・・・・。仕留めきれなかった」
小さく相手に聞こえない声でヴェンはつぶやいた。仕留めきれずも、攻撃の手を緩めることなく、双剣流の極意である攻撃をつなげていく連撃をつなぎ続ける。双剣流の弱点は連続攻撃し続ける故のスタミナ切れ。相手に反撃を許さない連撃であるが、剣を振るい続けるのは人、自分自身。防ぎ続けられればいつか体力は尽きる。ヴェンは一撃で仕留められなかったことで焦っていたが、それよりもシピンは一撃を喰らったことの衝撃で動揺を隠しきれず、防戦一方となっている。
(最初の攻撃を防がれることも想定はしていたが、持久戦になりそうな展開は少しきついかもしれない)
次の展開を予想しながら次々に剣を振るい続けるヴェン。
「おい! なに笑ってるんだぁ!」
「えっ?」
ヴェンは不敵な笑みを浮かべながら剣を振るっていたのだ。それを見たシピンが怒りに震え、先ほどまでの動揺を忘れ、攻撃に転じようとする。剣を振るう方向に大剣をぶつけるだけだったのが、一撃を振るう態勢を整えるように低く屈むような姿勢を見せる。
「調子に乗るのもいい加減にしろっ! 最初の一撃がうまくいったからとガンガン攻めてくるが届いてないんだよ!」
「シピンさん話す余裕あるんですね。まぁこっちは持久戦になっても勝てる自信があるんで笑っていたのかもしれないです」
「どこまでもむかつくもやっしこだな」
剣をぶつけ合いながらも言葉を交わし続ける二人。その間も距離を取ることなく常に剣を振るうヴェン。
「お前、双剣流だろ? そんなに立て続けに攻撃して体力もつのか」
「忠告ありがとうございます。シピンさん。でも、その心配はいらないんでまだまだ行きますよ!」
そう言い放つとヴェンはさらに攻撃の速度を上げる。だがしかし、シピンはそれに動じず、屈んだ姿勢のまま攻撃を大剣で受けきる。
「攻撃が軽いんだよ」
その瞬間シピンが大剣を両手に持ちヴェンの攻撃をうけたまま薙ぎ払う。空気を切り裂くかのような一振り、すさまじい轟音とともに石くずが空を舞う。
「ぐはぁっ」
ヴェンは壁にぶつかっていた。一瞬の出来事だった。壁には亀裂が走る。
「おいおい、一撃で終わりか。ワタシに傷を負わせるくらいの実力者かと思い直していたところだったがとんだ勘違いだったな」
「ばかにしないでくださいよ。よくみてください。僕はまだ立っていますよ」
シピンはヴェンをみて腹をかかえて笑った。頭から血を流し、服はところどころ裂け、頭から血を流し、肩で息をしている彼が立っていたからだ。
「ボロボロじゃねぇか。よくその姿で立っていられるよ」
「見た目はボロボロだけど、実際のダメージはそれほどじゃないんで」
そしてまた正面から挑むヴェン。
響き渡る剣の音が、決闘場に響き渡った。二人が熾烈な闘いを繰り広げていた。彼らの剣が激しくぶつかり合うたび、火花が散り、金属同士の激しいぶつかり合いが生じた。
剣が交差し、刃が刃と激しくぶつかり合う瞬間、それぞれの剣士は力強く反撃しようとする。その一瞬、剣同士が押し合い、その力が衝撃波となって周囲に広がった。続けざまに、剣が再びぶつかり合い、音と光が交錯した。自身の流派の技術と力を駆使し、相手の攻撃をかわし、刃をぶつける。緊張感が頂点に達し、観客はその壮絶な一戦に息を飲んで見守っていた。
「たしかに見た目とは裏腹に動けるなもやしっ子」
「体力が底なしなんで」
さきほどは一振りで吹き飛ばされたヴェンだったが、シピンが攻撃に転じる時には双剣流の技術の一つである攻撃を受け流し、攻撃と回避を繰り替えす。
シピンは大剣で攻撃を受けつつ、攻撃に転じる。
刃と刃がぶつかり合う音は、決闘の激しさと緊迫感を物語っており、この瞬間が勝者と敗者を決する運命の瞬間であることを示していた。
どれだけの時間、剣を振るい続けているかわからない。どれほどの時間が経過したかわからないが、観客たちはその一挙手一投足を静かに見つめる。
「そろそろ限界だな」
シピンがそうつぶやき大剣を振るった直後、ヴェンの剣は高く空を舞い、朝日に照らされ一瞬光る。ヴェンは地面に落ちる剣を見つめる。その表情には驚きと敗北の痕跡が刻まれていた。
「じゃあな後輩くん。お前才能ないよ」
そう言って決闘場を去っていくシピンの顔にはどっと汗が噴き出していた。大剣を引きずりながら歩いて行った。
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