第20話 勝つとか負けるとかそんなことはどうでもいい
決闘を見ている観客たちは開始すぐの攻防に息を飲む。いや、想像していた展開と違ったことに唖然としていた。
シピンがいきなり正面から攻撃を受けたのだ。単純になんの作戦もなくただ正面から突っ込んできた攻撃に傷を受けたのだ。観客の中には学生ではなく、フードを被った小柄な人物が隅の席にちょこんと座っていたが。初手の攻防に動揺していたのか体が震えている。
「な、なんでそのまま正面から。言っていたことと違う。どうし、どうする。嘘の情報を流したと責められる。あぁどうして・・・・・・」
「となりの席いいかしら」
フード被った人物は急に声を掛けられ、ぎょっとした様子で声の方向に顔を向ける。
「あっあんたは、オースティンと一緒にいた女、たしか・・・・・・」
「エミリー・ロクサスです。あなたはロバート・シピンのお付きの用心棒のキーナ・ロマックですよね」
突然立ち上がり、フードから顔が覗く。首にかかるくらいの髪、小柄な体格にぴったりな小さな顔、右頬には大きな切り傷の跡が残っている。
「なぜ私の名前を知っている! 君たちはシピン様のこともなにも知らない様子だったじゃないか。ダニー坊やもあいつらはむかつくから、シピン様が勝つように適当に情報流してと・・・・・・」
「ダニーのむかつくは本当の気持ちかもしれないけれど、彼は最初から私たちの味方ですよ。そして、私たちのいう事には絶対だから」
「ダニー坊やが言ってこと、それに君たちがシピン様を全く知らないとは嘘だと?」
「ロマックさん私たちのこと全く疑わないんですもん。思った通りにことが進んでいきました。いや、予定通りではないんですけど」
エミリーは困ったような顔をして腕を組む。ロマックはまだ立ち上がったままだ。
「作戦もすべて嘘で、私がシピン様に情報を流すことを前提に話を進めていたと。君たちは最初から正々堂々勝つつもりはなかったのか」
「正々堂々って、それはシピンさんたちも一緒じゃないですか。私たちの作戦流しちゃうんだから」
ロマックを歯を食いしばったような顔を見せる。
「おそらく君たちは最初の一撃で勝負を決めたかったのだろうけど、シピン様はそんなに甘くないよ。Aランク級の実力があるってことは本当で、不意打ちも致命傷はさけている。オースティンが圧倒的に不利なのはかわらない」
「まぁ私は正直、勝っても負けてもどちらでもいいんです。ヴェンが死ななければそれでいいんです。でも、彼がやりたいこと達成したいことの手伝いはしたいなとも思うんで、全力で勝ちにはいきますけど」
そう言うとエミリーは決闘に目線を戻し、真剣な眼差しでヴェンを見つめていた。
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