第12話 怒りの理由
入学式を終え、午後から始まる学院での生活に各々備える。ヴェンとエミリーは魔術学部の研究棟にある食堂で食事をとることにしていた。食堂には魔術学部の学生たちがお昼時という事で集まってきている。研究棟には図書館もあり、食堂のすぐ隣に位置する。食事をとる学生だけではなく、飲み物を持ちながら本を読んでいる学生もいる。
「おいしい~。なにこれ! オムレツってこんなに美味しかったんだ!」
「村にもオムレツあったじゃん」
「いやたぶん中身が違うんだよ! 美味しすぎる!」
エミリーは野菜や、ひき肉を黄金に輝く卵に包まれたオムレツを食べている。ヴェンはトマトなどの野菜が挟まれているサンドイッチを食べていた。先ほどまで憎悪に満ちていた表情をしていたエミリーは、今は美味しい食事を食べて幸せそうな表情をしている。
「ね、エミリー。なんでさっきオーランドに会った時にあんなに怒っていたんだい?」
ヴェンは疑問に思っていた。ヴェンの記憶の中ではオーランドと会ったことはなく、アイリーンの紹介の仕方も昔からの知り合いというわけではなかった。エミリーがヴェンの知らないところで出会っていた可能性もあるが、ほぼ毎日一緒に修練に励んでいた中で、それは考えにくかった。エミリーはオムレツを頬張り、幸せの表情から一変する。
「怒ってないよ別に」
「いや今だって怒ってるじゃないか」
「怒ってないって! だって、会ったのさっきが初めてでしょ? 私が怒る理由なんてないよ。あれだよ、最初の挨拶の態度が悪かったからちょっとむかついただけ」
「ふーん・・・・・・」
エミリーはぷいっとヴェンから顔を逸らしてオムレツを再び食べ始める。エミリーがこの態度になると何をいっても不機嫌になることをヴェンは知っている。この状態になるということは相当怒っている。やはり、なにかあるのではないかとヴェンは考えながらサンドイッチを食べ進めていた。
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