第11話 許しがたい相手
大講堂で入学式が行われている。定番である校長の話、生徒会長の話、これからの学院生活の話。つまらなさそうにヴェンがあくびをしていると、隣に並んでいる剣術学部の生徒から話しかけられた。
「おいオースティン。なんでお前魔術学部にいるんだよ。オースティンは剣術学部にいないのかって校内で騒ぎまくってたよシピン様が」
ごくごく小さい声で話しかけてくる少し小柄な生徒。剣術学部は背中の星の文様に加え、正面に剣を交差したデザインが施されている。見覚えのある右頬にある大きな傷。
「ロマックか? なんでここにいるんだよ」
ヴェンは驚きつつも、音量を抑えて返事をする。シピン先輩のお付きの用心棒のキーナ・ロマックが制服をきて列に並んでいたのだ。
「うちも学院の生徒だからだよ。試験会場にはいなかったけど。シピン様の力で別日で試験を受けて合格した」
「裏口入学じゃないかそれ・・・・・・」
「ばか、ちゃんと試験受けたって言ってんだろ。相変わらずだな」
「いやいやそれよりもなんで君が生徒として学院にいるんだ」
「まぁ当然の疑問だな」
小柄な体を精一杯伸ばし、腰に手をあてるロマック。今までフードを被っているところしかみたことがなかったが、赤髪のポニーテールの髪は愛らしい瞳とよく似合っている。右頬の傷があることでやんちゃさも感じられ、トータルあざとかわいい感じに収まっていた。
「シピン様がオースティンと決闘してから、従者たちにももっと実力をつけるようにって言いだしてな。うちは元々冒険者だったんだけど、学校になんて行ったことないし、まぁ立候補したってわけ。ついでに護衛とかもしやすいから」
「ふーん・・・・・・。熱心だねぇ」
「ホントのところはオースティンの情報を探ってこいってことだったんだけど、剣術学部にいねぇとは何ごとだ!」
さきほどもまで小声で会話していたにもかかわらず、急に声をあげるロマック。視線が一気にこちらに向く。前にいるエミリーはヴェンたちと関りなんてありませんというように真っすぐ前を向いている。
「おほん。他学部同士で仲良くなるのはけっこうですが、これからはよきライバルとして互いに切磋琢磨するように。いいですか?」
学院生活について話していたであろう学院の教師から二人にむけた言葉が送られる。二人は耳を真っ赤に染めた。
「では、続いて新入生代表挨拶。オーランド君お願いします」
壇上に上がったのはアイリーンではなかった。てっきりSランクの冒険者でもあるアイリーンが選ばれると思っていたが違ったようだ。壇上に上がったのは先ほどアイリーンと一緒にいた褐色の大男だった。
「私は宣言します。ここの誰よりも剣術においても魔術においても強くあります。いつでも決闘を申し込んでいただいてかまいません。虫けらみたいな君たちでは相手にならないと思うがせいぜい頑張ってほしい。私は私の目的のために行動します。どうか邪魔しないでいただきたい。以上です」
大講堂は静まりかえっていたが、だんだんとざわつきだす。全く新入生代表の言葉とはうさわしくなく、あまりにも簡素なないようであった。低く男性らしい声であったが長い髪のせいか女の子のような雰囲気をヴェンは感じていた。
「エミリーどうしたの? なんか体が震えてるけど、大丈夫?」
ヴェンからはエミリーの顔をみることができなかったが、オーランドが壇上にあがってからというもの、なぜか小刻みに震えているように見えた。
「・・・・・・。大丈夫だよ」
そういった後にさらにエミリーはつぶやく。ヴェンには聞こえていないようだった。
「絶対に許さないんだから」
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