第8話 アイリーンは憂鬱

 転生してからというもの知識を詰め込み、剣術を磨き、実践を経験していき、いかに冒険者として実力をつけるのかを目的としてきた。せっかくの異世界転生、この世界を楽しむために自分自身の力を上げることで自由が広がる。三十五年生きてきて学んだことは何をするにも積み重ねが重要だという事。そして、その積み重ねを始める時期が早ければ早いほど未来は明るい。

 苦労は早めにしろってことと、楽に稼げる(強く)ことはないってことだ。


 自分が転生したということに気づいたのは生まれて間もなくだ。聞いたことのない言語、見たことのない世界。体自由に動かせないし、うまくしゃべれないけど頭の中はクリア。これはまさに流行りの転生ってやつだと理解した。


 またとないチャンスだと思った。三十五年間特に山もなければ谷もない人生で、自分のやりたいことも見つけらずただ淡々と会社員として過ごす日々。進まない日々、進もうとしない自分。進まなければ後退していくだけ。そんな人生から抜け出せると思った。たくさんの美女とイチャイチャするんだと決心したときに動かせない体なりに違和感を感じた。下半身がスースーする。裸になれば風を感じずにはいられないあのイチモツがなかった。


 初めての谷の経験だった。

 

 言葉を理解し、話せるようになったのは2歳で、私は確かめたいことがあった。誰も見ていない聞いていないときを見計らって試す。


「ステータスオープン」


 特になにも起きない。次は手を使いウインド画面を開くようなしぐさをするがこれまたなにも起こらない。


「スキル確認」

「開け」

「いでよステータス!」

「状況確認!」


・・・・・・。


 最近の異世界転生って自分のステータスが確認できたりするんじゃないの?

 転生したから特別なスキルを持っているとか、こう自分の能力をみれる的なのがあるんじゃないの?

 2歳になって初めて魔術を使えたときに周りからこの子は天才で魔力総量が人より二倍以上あるとか言ってたのは何を見て言っていたんだと疑問に思った。


 まぁ人生そんなうまくいくわけないし、ステータス確認とかってゲームの中の話だよな能力って結局自分で努力して体鍛えて、勉強して身に着けるものだし、人生甘くないよな。


 そう思ったのが2歳のときで、憂鬱の始まりだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る