第3話 予定は未定
ロクサス家に戻ってからは修羅場だった。家に入る前にエミリーはアイリーンを捕まえ、「私はどうしても魔術学校に行きたい。お姉ちゃんに追いつきたい。グレッグさんから推薦状をもらうことができるらしいの。お姉ちゃんからもお父様を説得して」と姉を頼りに甘える妹を演じてみせた。
もちろん可愛い顔で頼まれた姉は「まかせておきない!」とドン! と胸をたたいていた。
二人の父、トラウトは娘たちがスターズ学院へ行くことに反対している。アイリーンの実力は認めているものの、スターズ学院のさらに上位学部へ行くという事は、国の政治に関わるか、冒険者として最前線にでることを意味する。
「エミリーまで危険にさらす気か! アイリーンの実力はSランクの冒険者。エミリーとは次元が違う。魔術学部に行くのだってただじゃないんだ」
「そうやって才能をつぶしていく。危険かどうかだってまだわからない。娘が行きたいやりたいってことがあるなら後押しするのが親ってもんでしょ」
「お前はまた親に意見する。自分が天才だからって親の方針に口をだすってのか」
二人はテーブル越しににらみあっている。長テーブルの端と端に座っていなければ、いまにも手が出かねない雰囲気になっている。
ヴェンはその間に座り、息をひそめ空気のようにその場にいた。目の前のエミリーは目を輝かせながら、二人のやりとりを見ている。早くこの雰囲気を打破してくれと息をひそめながら思っていた。
「エミリーを学院には行かせない!」
「行きたいって言ってるんだから、行かせてやりなよ! なんで親が子供の可能性をつぶすようなことるするの!」
「俺はエミリーから直接学院にいきたいとは聞いていない」
エミリーは待ってましたとばかりに身を乗り出す。
「私はスターズ学院に行きたいですお父様。合格するかもわからないですが、でもやっぱり行きたいのです」
「なぜだ。なぜ学院にいきたいんだ」
当然の疑問だろう。ただトラウトとアイリーンを決闘させたいだけという理由は当然言えないだろう。どんな理由で二人を決闘させるか見ものだ。
トラウトから疑問を投げられたエミリーの顔がみるみる青くなっていく。
「あっええぇと・・・・・・」
こいつなにも考えてねぇ。でたはいいけど勝負できてねぇ! と心の中でヴェンは突っ込んだ。だが、ここで頼りにされた姉は攻める。
「やりたいことに理由がみつけられないときもあるって。もやもやした感情で学院に行きたいって思うこともあるし、言ってから目的を見つけることだってある。まず行かないとだめだと思う」
いきおいで押し切ろうとするアイリーン。
「目的もなく、理由もなく学院にいこうとしたって、試験に受かるわけないだろ。運よく受かったとしても続くわけがない」
「エミリーは実力がある。目的がなくても自分の実力を高めるためにいくべきだよ」
「じゃあその実力というものをみせてもらうじゃないか」
ヴェンとエミリーは顔を見合わせた。
うん? これはよくない流れであることは間違いない。
「エミリーとアイリーンで決闘してもらおう」
アイリーンは驚いた表情になり、やれやれといった態度をみせる。
「私とエミリーじゃ実力の差がありすぎる。ハンディキャップでヴェンとエミリーの二人を相手にするよ」
「え、僕もやるの?」
エミリーは絶望の顔でいすに座っていた。
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