第4話 【ASMR】耳を澄まし心リフレッシュ

   #引き続き背後から。


日向

「えっと、体をリラックスさせたから、次は心をリラックスさせる番だよ。その前に、あたしちょっと動くね。」


   #正面から。


日向

「はい、向かい合わせー。えへへ。」

「あ、目はそのままつむってて。考えない、考えない。余分な情報はシャットアウト!」

「あたしの声だけを聴いて、頭をからっぽにするのが、心のリラックスの第一歩だよ。ほら、耳を澄まして……。」


   #右から、ねっとりささやく。


日向

「別府温泉……。」


   #左から、ねっとりささやく。


日向

「浜脇温泉……。」


   #右から、ねっとりささやく。


日向

「亀川温泉……。」


   #左から、ねっとりささやく。


日向

「柴石温泉……。」


   #右から、ねっとりささやく。


日向

「鉄輪温泉……。」


   #左から、ねっとりささやく。


日向

「堀田温泉……。」


   #右から、ねっとりささやく。


日向

「明礬温泉……。」


   #左から、ねっとりささやく。


日向

「観海寺温泉……。」


   #正面から。


日向

「どう? ゾクゾクした?」

「あはは。温泉の名前をささやいだだけなのにそんな顔しちゃってー。湯者さんのヘンターイ♪」

「…………。」


「わ、分かんない……! こんな感じでいいのかな!?」

「環綺ちゃん……ホントにこれが正解なの……!?」

「…………。」


「んーと、えっとね。このプログラムは、環綺ちゃんの受け売りなの。」

「あたし緊張とかしたことないから、心のリラックスって言われてもよく分かんなくて。」

「さっきの温泉地の名前もね、環綺ちゃんの地元・別府温泉の有名どころなんだよ。」


「環綺ちゃんによると、喋る内容はなんでもいいから……。」


   #突然、左からささやき。


日向

「『こうやって……耳元でささやいてあげれば、湯者さんは喜ぶよ……♪』」


   #通常に戻って。


日向

「……って言われたんだけど、ホント?」

「環綺ちゃんのことは頼りにしてるし、日向はコツをつかむのが早いから大丈夫よって励ましてくれたけど、こればっかりはなー……分かんなーい。」

「というか、コツってなに? なんのコツ?んーー……。まあ、でも、これで湯者さんがリラックスできるなら……。」


「うん! 続けよっと! こうやって……。」


   #突然、右からささやき。


日向

「こうかな……。湯者さん、どう?」

「あっ……まだ、目は開けないでね……。」

「あたしが何か訊いても……考えたり、答えたりしなくて大丈夫……。」


「そのまま……そのまま……ぼ ーっと、聴いててくれればいいよ……。ねえ、湯者さん……。」


   #突然、ささやきが左に移って。


日向

「あたしの声……好き?」


   #ささやき、右に戻って。


日向

「あ♪ いま、ちょっとびっくりした?」

「こーやって……すぐそばにいるんだから、湯者さんの反応がよく分かるね……♪」


   #左からささやき。


日向

「あたしが言ったとおりに……できるだけ目をつむっていてくれることも……。」


   #右からささやき。


日向

「あたしがお願いしたとおりに……何も考えないように、頑張ってくれてることも……。」

「…………。えへへ……♪」


   #突然、ささやきが左に移って。


日向

「……あたしの言うこときいてくれてる湯者さん、なんかかわいいかも……♪」


   #ささやき、右に戻って。


日向

「そっか……あたし、気付いちゃった♪」

「こんなことで……ホントに湯者さんが喜んでくれてるのか、分かんなかったけど……もしイヤなら、ずーっとじっとしてないで、どこかで止めてるよね。」

「そうしないってことは……あはっ♪ 湯者さん、楽しんでくれてるんだぁ……♪」


   #右から左から、エコーのように立て続けに囁かれる。


日向

「湯者さん……変な人だね♪」

「でも、嬉しいな……。」

「言いなりになるの、気持ちいい?」


「気持ちいいよね……♪」

「ぼーっとしてるの、だらしなーい♪」

「今だけは、それでいいんだよ……。」


   #さらにテンポ上げて


日向

「変態♪」

「かわいい♪」

「なさけなーい♪」


「かっこいい~♪」

「ほらほら、言い返して?」

「だめだよ。じっとしてて♪ ね。」


   #左右同時に。


日向

「『湯者さん♪』」


   #3秒ほど、間――。通常から。ささやきではなく。


日向

「あはは! ねえ、どーだった、どーだった?」

「あたし、なーんとなくコツつかんじゃったかも♪ 湯者さんが素直に聴いてくれてたおかげだよー。」

「あたしの方も、湯者さんなら許してくれるかな、って思って色々言っちゃった♪」


「こういうのって、お互いの信頼関係が大事なんだね。湯者さんじゃないと、こうはいかないのかも……。そう考えると――。」


   #右からささやく。


日向

「あたしと湯者さんって、相性♪ いいのかもしれないね……♪」


   #左からささやく。


日向

「あはっ♪ そうだったら、すっごく嬉しいな……。」

「彗ちゃんも……環綺ちゃんも……ふたりとも素敵な子だから、目移りしちゃうかもしれないけど……。」

「湯者さんがいちばん好きなのは、あたし……いちばんリラックスできるのは、あたしの声、あたしのそばなの。」


「ほら、いま、この瞬間から、あなたはあたしの声が好きになーる……。」


   #右からささやく。


日向

「あなたはあたしの声がもっと好きになーる……。」


   #左からささやく。


日向

「あなたはあたしの声がもっともっと好きになーる……。」


   #通常からささやき気味に。


日向

「うん♪ これでよし♪ えへへ……♪ このプログラム……なんか楽しかったな……♪」

「湯者さん。これから、リラックスしたいなーって時は、あたしのことを思い出してね♪」



《第5話へ続く》


★mimicle(ミミクル)にて配信中★

『ASMRボイスドラマ 温泉むすめ あなたになら甘えられる鬼怒川日向』(CV・富田美憂)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る