第3話 【ASMR】全身ゆるゆるリラックス

日向

「さて、と……。湯者さん、準備はいい?」

「おっけー。それじゃ、彗ちゃんと環綺ちゃん直伝の『湯者さんリラックス・プログラム』を始めるね。」

「まずはねー、湯者さんの心と体を、ゆるゆるの~、ふにゃふにゃに~、するプログラム!」


「そうすることで、湯者さんはなーんにも考えられなくなって、あたしの言葉がすーっと入ってくるようになるんだって!」

「えっと、姿勢はそれで大丈夫? どこかつらくない? もっとだらーっとしてもいいよ。」

「ほらほら、全力でだらーっとしてみよう!」


「さん、はい! だら~~~~~~っ……。」

「うん、うん……。ま、湯者さんの体じゃ~そんなもんか。」

「あたしの体と一緒にしちゃーダメ、って彗ちゃんにも言われてるし……。それでおっけー!」


「ん? あたしの体の話、気になる?」

「そーだなー……、じゃ、あとで話したげる!」

「まずはプログラム、プログラム!」


「次は……そっと、目を閉じてね。」

「まぶたに余計な力を入れちゃダメだよ……。」

「そのまま寝ちゃってもいいくらい。自然に、優しく閉じて……。」


「うん。そのまま、そのまま……。」


   #以降、背後から優しく喋る。


日向

「ほら……。目を閉じると、余計なものが入ってこなくなって……、あたしの声が、もーっと、はっきり聞こえるでしょ?」

「ふふ……。そのまま、あたしの言うとおりにしてみて……。」


   #以降、左から。


日向

「右手の指先に集中して……。いっぽんいっぽん、指を動かしてみて。」

「無理しなくていいよ。少しだけでいい。」

「まずは、人差し指……。」


「次は、中指……。」

「薬指……。」

「小指……。」


「最後に、親指……。」

「いいね。感覚がはっきりしてきたかな?」


   #以降、右から。


日向

「次は、左手の指先に集中して……。同じように、軽く動かそう。」

「行くよ。集中して……。人差し指……。」

「中指……。薬指……。小指……。」


「ラスト、親指……。」

「うんうん。じょうず♪」


   #以降、背後から。


日向

「そしたら、体の力を抜いていこっか。両手をぎゅっと握るの。思いっきり……力をこめて。……せーの!」

「ぎゅーーーーーー……っ。」

「はい! 力抜いて!」


「思いっきり力をこめてから一気に力を抜くと……体から余計な力みが取れるんだって。湯者さん、感じた?」

「じゃあ、もう一度やってみよっか。」

「あたしの合図で両手をぎゅーっと握って。今度はちょっと長くするね。」


「行くよ、せーの!」

「ぎゅーーーーーー……っ、はい! リラックス~。」

「あはは、いい感じ♪」


「湯者さんの体、さっきよりだら~ってしてきたよ。」

「次は……足の力みも抜いてみよっか。目は閉じたままだよー。」

「足の力みを取る時はね、お尻の筋肉で同じことをすればいいんだって。」


「まずは、軽く力を入れてみよっか。」

「お尻の筋肉を……はいっ。ぴょこ、ぴょこ、って動かしてみて。」

「そうすると……ほら、ふとももの裏の筋肉にもつられて力が入るでしょ?」


「足の筋肉って、そこにつながってるみたいなの。」

「お尻の筋肉にもーっと力をこめると……人によっては、ふくらはぎの筋肉や……足首の筋肉も、つられて動くかもしれないね。」

「それはそれで全然おっけーだよ。」


「それじゃあ、本番行ってみよう! あたしの合図でお尻にぎゅっと力をこめて、そのあとだら~~って力を抜いてね。」

「行くよー……。せー、のっ! ぎゅーーーーーー……っ。」

「はい! だら~~~~……。もういちど~? せー、のっ! ぎゅーーーーーー……っ。」


「はい! だら~~~~……。うん! うまくできたね!」

「実感あるか分かんないけど……、湯者さん、上手にだら~ってできてるよ。変な力みもなくなった感じがする!」

「そしたら、ゆっくり呼吸をしてみよっか。」


「目は閉じたまま……一定のリズムで……」

「すってー……、はいてー……。すってー……、はいてー……。」

「ん。ぼーっとしてきてもいいよー……。すってー……、はいてー……。」


「すってー……、はいてー……。すってー……、はいてー……。」

「うんうん、いい感じ……。そのまま、あたしの話を聴きながら続けてみてね。」

「大した話じゃないから、ぼーっとして聞き逃しても大丈夫。」


「さっき、『あとで話すね』って約束した、あたしの体の話、するね。」

「今よりずーっとちっちゃい時から、あたし、他の人より運動神経よかったの。」

「スポーツなら何でも……それこそ、すぐに他の誰よりうまくなっちゃって……まー、そのせいで一緒に遊ぶ友達ができなかったりもしたんだけど、それはさておき。」


「あれっ。『さておくな』って? そこが気になる?」

「日向、今が充実してるので本当に気にしてないです。」

「あー……、いいじゃん、昔の話!」


「あたし、今の話をしたいんだけどなー。昔のことを気にする湯者さんには~……?」


   #右から、耳に息を吹きかける。


日向

「ふーーーーーー……っ。」


   #再び背後から。


日向

「あははっ! びくってしたー♪」

「ほら、呼吸のリズムが乱れてるよ♪」

「もう一度、ゆっくり……せー、の。」


「すってー……、はいてー……。すってー……、はいてー……。」

「よしよし。えらいぞー♪」

「こうやって体の色んなとこを意識してみるトレーニングはね、日本舞踊をやってる彗ちゃんに教わったんだ。」


「言われて初めて知ったんだけど、あたしが運動神経いいのって、自分の体を使いこなせてるかららしいの。」

「こう、イメージしたとおりに体が動く?」

「みたいな。あたしにとっては当たり前のことなんだけど、それはすごいことよ、って、彗ちゃんに褒めてもらったんだ♪」


「これは、体の感覚をもっともっと鋭くするためのトレーニングなの。」

「湯者さん、体がふわふわしてきてない?」

「余計な力みが取れて、体がぽかぽかあったまってきてるかもしれないね。」


「それか……もしかして、この言葉がうまく聞き取れないくらい、ぼーっとしちゃってる?」

「ふふ、どれでもいいよ。あたしもおんなじ感覚になったことあるし。そのまま寝ちゃってもいいくらいだよ……。」

「さあ、いい感じにふわふわしたところで、次のプログラムに行っちゃおう!」



《第4話へ続く》


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