第33話(再び組対五課の大隈)
ーー俺の名前は大隈。第20話にも登場した警視庁組織犯罪対策五課に所属する警察官だ。二代目キャプテン・ジャパンだった男でもある。
俺は、横浜陰茎学園へ調査に行った。東京犠牲者学園がカチコミに来たらしい。その時に捕虜を10名ほど捕ったみたいだが、全員逃げられたそうだ。俺はどうにか現役のキャプテン・ジャパンに接触したい。鈴木と林南が実質的な権力を握っている。俺は二人に対し粘り強い交渉の末、瀬名レイと面会する事に成功した。場所は横浜陰茎学園の保健室だ。瀬名レイと女の子が居た。出来れば瀬名レイとサシで話したいけど、一緒にいる女の子はいったい…………。
「瀬名君、俺は二代目キャプテン・ジャパンをやってた大隈だ。会うのは初めてだね、よろしく」
「噂は聞いてるよ。組対五課なんでしょ?」
「ああ。出来れば瀬名君とサシで話したいんだけど」
「この子も関係者みたいなもんだ。全一教会のストーカーに狙われてる。俺はクララを護らなきゃいけない。話の邪魔はさせない、置物だと思ってくれ」
「誰が置物じゃ」
「クララ、しっ」
「むぅ」
俺は、瀬名レイから聞き取りをした。校庭に現れた熊を二頭殺したそうだ。遺体は生活安全課と猟友会のハンターが持っていったようだ。瀬名レイの戦闘力だけを見れば、金子さんの遥か上を行ってる。勘も良い。横浜陰茎学園は都市部にある。もし熊が一般市民を襲ってたら取り返しの着かない事態になっていただろう。一人犠牲者が出たが、瀬名レイの落ち度ではない。マスコミも放っておかないと思いきや、瀬名レイは英雄にはなりたくないそうだ。鈴木と林南に任せて、マスコミをシャットアウトした。表向きには熊二頭が闘って相討ちという事になってる。今時の子が目立ちたがらないとはな。ハーフってだけで目立つから、そういうのに飽き飽きしてるのかもな。それにしても怪我はしてないようだが、服に血が付いてる。返り血か? それにしては頭部から垂れたような血痕だ。そこについては、はぐらかされてるような? まあ、怒ってガン詰めしに来た訳じゃないからいいんだけど。瀬名レイは世の中に貢献してるのだし。俺が瀬名レイに一番聞きたいのは、全一教会とどこまで関わりがあるかだ。敵対してるのは知ってる。このクララって子も全一教会絡みらしいが。
「俺は、全一教会を潰したい。共闘できないかな?」
「全一教会を潰したいならバックに着いてる組織もまとめてやらないと」
「どんな組織なの?」
「言えない」
「俺を信用してくれてないか」
「そういう訳じゃない。4年後、その組織のトップが集まる会議が開かれる。俺はそこに集中している。それ以上は話せない」
「場所だけども教えてくれないかな」
「警察の特殊部隊だけでなく、軍隊も動かしてくれるなら考えるよ」
「敵は強大なんだね。分かった、金子さんに相談してみるよ。公安警察なら自衛隊の各幕僚長にも繋がりがある」
「へえ、そりゃ凄い。全一教会の総本部だ。そこに4年後に集まる。但し、共闘は保留で」
「ありがとう。全一教会の息がかかってない者を集めて作戦を練るよ」
俺は、瀬名レイに礼を言って警視庁に帰った。これから4年掛けて全一教会の息がかかってない者を洗い出さないとな。俺は途中で生活安全課に寄った。熊の状態を見たいと言ったら、庁舎の外に連れていかれた。
おじいちゃんハンターが、ブルーシートの上に置かれた熊の遺体を検分していた。
「組織犯罪対策五課の者だけど、どんな状態?」
「こりゃ熊同士の争いじゃないよ。一頭は首の骨がへし折れてる。もう一頭は胸部の一点に強い圧力が掛かったのか、心臓が飛び出ている」
「なるほど」
瀬名レイは化け物だ。敵に回したら命はないな。
「二頭のヒグマの状態からして、武器を使って殺してない。おそらく素手だ」
「そんなバカな、ハハハ」
俺は知らないふりをした。
「ワシのじいさんが生きとった時に聞いた事がある。戦国時代に生まれた殺人拳が現代にも脈々と受け継がれておると。おそらくその使い手が横浜におるのだろう」
「興味深いな」
瀬名レイは、その殺人拳を受け継いでるのだろう。そうでなければ辻褄が合わん。
「問題はヒグマがどこから来たかだよ」
「トラックに載せて北海道から連れてきた、とか」
「このヒグマの大きさからして在来種ではない。北米大陸に居るような、あり得ないサイズのデカブツだ」
「となると、違法飼育か」
「その線が濃厚だな、ちゃんと取り締まってもらわんと。ワシらが装備しているライフルでは一撃で仕留めれん。50口径くらいの対戦車ライフルなら或いは。また同じ事が起きてもワシらに期待せんことだ」
「すみません」
この件は警察の怠慢だけじゃない。なぜだか全一教会の影を感じる。取り敢えず、ワシントン条約はどこの省庁で扱ってるんだろ?
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