第27話(三毛猫VSカラス)

ーー僕の名前はハビィ。三毛猫型最終決戦兵器の戦闘民族だ。レイが横浜陰茎学園に登校したある日、窓の鍵を開けて行ってくれたから、僕は前足で窓を開けて日向ぼっこをしている。春風が心地良い。眠い、昼下がりは特に眠い。バサッ! バサッ! なんだ? 羽の音?


「カー! カー!」


ゲッ! 窓からカラスが入ってきた。怖いよー。助けて、レイ。いや、僕は戦闘民族。自分の力で追い払わなきゃ! カラスの後頭部にレイのダンベルでガツンだ! バサッ! バサッ! くっ! すばしっこい奴、ダンベルは無理か!?


「ニャー! シャー!」

「カァ?」


秘技! 猫パンチ! しゅっ。バサッ! バサッ! 避けた!? 僕の猫パンチを!


『猫、ちょっと待て』

『へ?』

『お前、三毛猫の魔獣だろ』

『何で喋れるの?』

『俺はヤタガラスの魔獣なんだ。ほら三本足』


カラスがチラッと足を見せた。確かに三本足だ。


『敵か?』

『いや腹が減ってたから猫でも食べようかと。でも安心しろ、魔獣なら食わない』

『猫用のカリカリ食べる?』

『おお! 助かる!』


なんだ、お腹が空いただけの魔獣か。って魔獣!? しかもヤタガラス! 確か古来より伝わる伝説の魔獣だ。敵か味方か?


僕はヤタガラスにカリカリを差し出す。ヤタガラスはバリバリもりもりとカリカリを貪る。かなりお腹が空いてたんだな。すごい食欲。


『ふー。食った食った』

『で、敵なの? 味方なの?』

『ヤハウェの王族の事だな? 俺は日和見主義。どっちの味方もせん』

『そうなんだ。他にも魔獣と会った?』

『千葉県の山奥でキョンの魔獣と会ったな。あと成田空港で麻薬探知犬のバイトをしている魔獣もいる。ところでお前はどっちに肩入れしてるんだ?』

『勿論、王族を倒す勢力だよ』

『そうか。なら悪い知らせがある』

『何々?』

『王族側は最終兵器を召喚した』

『最終兵器?』

『大魔法使いメフィストだ。奴に敵う者はいない』

『大丈夫、こっちにも最終兵器がいるから』

『そりゃ助かる』

『どういう意味?』

『俺は日和見主義だと言ったが、王族側は俺を支配下に置きたいみたいだ』

『カラスの魔獣はかなり優秀だって聞いた事がある』

『手を組まないか?』


どういうつもりかな。手を組む? こちらとしてはヒュムの動向を知れるのは大きなアドバンテージだ。襲われた時は怖かったけど、良い奴そうだし。


『僕の名前はハビィ。君は?』

『田吾作(たごさく)だ』

『よし、手を組もう』

『そうこなくっちゃ』

『うん』


僕は前足で、田吾作は羽でチョンと握手する。


『そっちの最終兵器とやら何者だ?』

『光属性と闇属性を持った人間だよ。簡単な魔法も使えるんだ』

『いかんな』

『何で?』

『大魔法使いメフィストも光と闇の属性を持っている。簡単な魔法では対抗出来ない』

『レイはめちゃくちゃ強いよ。多分大丈夫』

『まさか格闘で何とかしようとするタイプではなかろうな? 遠距離魔法で一撃だぞ』

『レイなら一瞬で距離を詰めれるよ。もしかしたらそれも簡単な魔法なのかも』

『取り敢えず、状況はかなり不利だ。全一教会のアジトに偵察に行ってこよう』

『どうやって? 見付かったら、王族に捕まっちゃうよ』


パッと田吾作の姿が消えた。どこに行った!? 僕はキョロキョロと辺りを見渡す。


『こっちだ、ハビィ』


気配もなく、田吾作が僕の後ろに移動していた。


『何? 魔法?』

『ヤタガラス族の固有魔法だ。透明になれるのと近距離のワープ魔法が使える』

『スゲー。三毛猫の固有魔法って分かる? 僕、生まれたてで地球に来たから色々分からなくてさ』

『牙だ、鋭い牙で闘え』

『それ魔法? さては知らないだろ』

『図星というやつだな、カッカッカ!』


僕に手の内を見せてくれた。田吾作は信用できそうだ。


『また来てくれる?』

『勿論だ。もうマブダチだからな』


まあ、マブダチか。そんな感じだな。


『窓の鍵は開けといてもらうね』

『うむ。では偵察に行ってくる』

『気を付けてね』

『任せろ。俺は古(いにしえ)の魔獣だぞ』

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