第26話(ショジョの奇妙な冒険)

ーー私(弥生)は、トー横で友達ができた。2歳年上のネオという女の子だ。親から愛情を注がれず、勉強する事のみを強要されて、中学生の頃からトー横辺りで生活してるそうだ。私はネオに、全一教会の二世信者で嫌になって逃げてきたと打ち明けた。ネオは優しく、うんうんと話を聞いてくれた。ここに来る人は、歪んだ現実から逃避してきた人ばかり。ネオは私にクスリを教えてくれた。トー横の広場で、大量の風邪薬を缶チューハイで胃に流し込む。最初は抵抗感があったけど、一度踏み出してしまえば意識が朦朧として気持ちいい。一瞬でも現実から逃げられる。トー横キッズは皆やってる。ネオはパパ活でお金を得ているみたいだけど、私には盗んできた親のクレジットカードがある。だけどいつ止められるか分からないから、私もパパ活をするとネオに相談した。ネオはキャッシングで限度額までおろせと教えてくれた。そして大金が手に入った。私を庇ってか、パパ活はさせられないと言った。ネオは優しい。私はネオに着いていく。もうレイ君の事は忘れよう。


ネオは、キャッシングしたお金でまず護身用スプレーを買うようにと言った。危険が沢山の新宿だから、私は疑問に思わなかった。


私とネオは行動を共にして、寝る時だけ新宿の安いホテルやネットカフェで過ごす。ある時、ネオは真剣な話があると言った。


「いい? 弥生。トー横で重要な事を教えるね」

「うん」

「警察だけは信じちゃダメ」

「え? 何で?」

「トー横に来る警察は男も女もレープ目的だから」

「そんな…………女性警察官も?」

「女警官はレズばかりよ。職質から上手く誘導して建物の陰に連れ込んでヤられちゃうの。被害者は数十人は出てる。気を付けてね」

「うん、分かった」


ネオの言う事は全て正しい。警察はトー横キッズの敵。私は警察官の本性を知り、その日は何だか眠れなかった。


次の日。私はネオに連れられて、トー横近くのコンビニに行く。朝ご飯でも買うのだろうと思ったら、私は外で待つように言われた。理由はお酒だ。私がいると店員に怪しまれるのかな? ネオは大人っぽいから、すんなり買えるのだろう。


「お嬢さん、ちょっといいかな」


私が店内の様子を伺ってると後ろから声を掛けられた。他に誰も居ない。私は振り向くと、ゾッとした。警察官に声を掛けられた。まずい。ネオはまだ買い物中。


「君いくつ? 随分と若く見えるけど」

「は、えーっと…………」


どうしよう。言葉が出て来ない。なんて誤魔化せば。


「家出でしょ」

「さ、さあ」

「こんな所に居たら危険だよ。交番まで来なさい」


どうしよう。レイ君…………。そうだ! こういう時のためだったんだね、ネオ。私はバッグから護身用スプレーを取り出して、プシュー。警察官の顔目掛けて吹き掛けた。


「ぐあああ! 何をする、小娘! 公務執行妨害だからな!」


「弥生、こっち。走るよ」

「ネオ」


私はネオと一緒に走り出す。ネオはコンビニのカゴを持っていた。もしかして万引き? 私はネオに聞けなかった。


しばらく走って、泊まってた安いホテルまで逃げてきた。


「ここまで来れば大丈夫」

「ありがとう、ネオ」

「弥生、眠そうよ。もう一泊していこ。食料やお酒買ってきたし」

「うん。また風邪薬飲む?」

「もっと良い物があるよ」

「何よー」

「お楽しみはお部屋で~、フフフ」

「もう」


私とネオは一心同体。ネオの言うことは何でも聞く。


私とネオは新宿の安いホテルの一室に連泊する。ネオはコンビニのカゴから缶チューハイとクスリであろう錠剤をテーブルに置いた。


「このクスリって何?」

「MDMA」

「それって麻薬じゃ…………」

「1錠だけなら大丈夫だよ。ささっ、飲んで飲んでかんぱーい」


私はネオに勧められるまま、何の疑問も持たずに錠剤を口に入れて缶チューハイで流し込む。ネオも飲んだ。いきなり意識が途切れそう…………。


ーー私は気が付くと、部屋の電気は点いていた。私はどうやら麻薬をチューハイで飲んで意識を失ったみたいだ。ネオの姿がない。私はベッドから起き上がる。


「ネオ、どこ?」


ネオの荷物がない。よく周りを見渡すと、テーブルに置き手紙があった。


【あんたのお金は頂き。しばらくホスクラで豪遊して地元に帰るわ。正直、あんたと居るとダルい。重いんだよ、ばーか】


私はバッグの中を確認する。キャッシングでおろした300万円が消えてた。死にたい。裏切られた。どんどん周りから人が離れてく。私は最初からネオのカモだったの? 私は気が付くと無意識に洗面所のT字カミソリで手首を切っていた。産まれてから今日まで自分がリストカットするなんて思いもしなかった。もうどうでもいい。

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