第24話(陽動)
俺は、人質になってたメンバーの一人を支えて立たせる。脚の骨は折れてないようだ。
「すみません、俺達が不甲斐ないせいで」
「東京犠牲者学園の駐車場まで歩けそうか? そこにゴールド・メンバーズの車が停まってる」
「はい、行けそうです」
俺は次の奴を立たせて同じ指示を出す。すると、鈴木が目を覚ましたようだ。起き上がった。
「くっ! 負けちまったか」
俺は、鈴木に駆け寄る。
「大丈夫か?」
「ああ。でも腹がいてえ。用心棒はどうした?」
「のして、両肘を180度逆方向に曲げといたよ」
「やはりお前は強い。いや、強すぎる。本当に高校一年生か?」
「サバは読んでないよ」
「ハッハッハ!」
「さ、帰ろう」
俺達が歩き出した時に、コツン。俺の爪先に何か当たった。これは電動バリカンだ。バリカンの物か。俺はその電動バリカンを拾う。壊れてはなさそうだ。そして、用心棒の頭に。ウィーン、ジョリジョリジョリジョリ。用心棒の頭頂部を十字型に刈った。ざまあ。丸坊主にするか、十字型のズラでも着けるんだな、アハハ。さて、この電動バリカンはどうしよう? バリカンに返してやるか。
ーー俺達は、ゴールド・メンバーズのセダンとミニバンで横浜陰茎学園に帰った。すると校庭で大乱闘が起きていた。戦ってるのは、ゴールド・メンバーズ第2勢力のメンバーと東京犠牲者学園の制服の連中だ。バットや鉄パイプで第2勢力に襲いかかってる。鈴木の読みは当たった。敵の狙いは学園の方だ。陽動をかけられたか。横浜50人VS東京100人と言ったところだ。第1勢力は校内を守ってるのだろう、表に居ない。
「やりますよ~」
「何をするつもりだ? 運転係」
「まあ見といてください、鈴木さん」
ブォーン! バコバコバコ! 黒塗りのセダンが、校庭で暴れてる東京犠牲者学園の生徒を跳ねていく。西園寺がゾーンに入った、のか? 意外とやベー奴だな、西園寺って。
「一度でいいから大義名分の下に人を轢いてみたかったんですよね~」
やっぱ、西園寺ってやベー奴だ。それについて鈴木は何も言わない。やり過ぎな感じもしないでもない。敵は武装してるしな。
西園寺は昇降口の前でセダンをスピンターンさせて折り返す。これが、子供の頃からサーキットで鍛えたテクニックか。横Gが凄かった。鈴木は平然としてる。怖くないのか?
「行きますよ~」
ブォーン! バコバコバコ! 西園寺は、針の穴に糸を通すかのようなステアリングさばきで、ピンポイントに東京犠牲者学園の生徒を跳ねていく。結構なスピードで。
東京犠牲者学園の連中が撤退を始めたようだ。校門から我先にと逃げていく。そりゃ怖い暴走車に跳ねられりゃ仕方ないか。
東京犠牲者学園の連中の殆どが逃げたようだ。セダンに跳ねられたり、第2勢力にボコられたりした奴は転がってる。お坊っちゃまが何人来ようと、ゴールド・メンバーズに勝てないよ。それにしても、あの男といい、裏で全一教会が動いてると見ていいだろう。家に帰ったら、ハビィに相談してみよう。何か解るかもしれない。
「あーあ、自慢のクラウンがボコボコだ~。僕のじゃないですけど」
「よくやった、運転係」
「ありがとうございます~」
俺は、ポケットから河川敷で拾った電動バリカンを取り出す。
「西園寺。これ、バリカンに返しといて」
「バリカン君の武器ですね? 分かりました~」
俺は西園寺に電動バリカンを手渡す。あとは任せよう。
俺と鈴木は、セダンから降りる。鈴木は難しい顔をして何か考え事をしている。捕虜の扱いについて考えるのかな。それとも用心棒の事か。
「キャプテン・ジャパン。倒れてる東京犠牲者学園の奴らを捕虜にする」
「そう言うと思ったよ。でもどこに閉じ込めとくの?」
「地下室がいいだろう」
この学園は地下室があるのか。西園寺の案内にはなかったな。
「コイツらを捕虜にして東京犠牲者学園の出方を見るのか?」
「東京犠牲者学園のバックに着いてる連中の出方を見る。お前がボソッと言った全一教会がバックだろう。警察でも手を出せないなら、俺達が壊滅させてやろうじゃないか」
「用心棒みたいな奴は俺に任せろ。次来たら脚の骨もへし折ってやる」
「そうだな。俺は勝てなかった」
「気にするな、たまたま合い口が悪かっただけだ。鈴木のパンチ力は、俺が受けた中で一番パワーがある。大人のヘビー級ボクサー並みだ」
「お前は、ヘビー級ボクサーと闘った事があるのか」
「俺の父親がアメリカ兵で、横須賀ベースのトレーニング場で様々な格闘技を習ったからな。その中にボクシングもあったんだ」
「お前の親も米兵か。俺の親父も軍人で海兵隊に所属していた。そして俺には種違いの妹がいる」
「父親が違うって事か」
「俺はハーフだが、妹は純日本人。横浜陰茎学園の新入生だ。手を出すなよ?」
「出さねえよ。安心しろ」
米軍基地の近くでは、何かとハーフの子供が産まれがちだな。
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