第22話(バリカンVS謎の用心棒)

ーー俺はバリカン君。今、東京犠牲者学園の裏手の河川敷に居る。時間は朝の9時。連れてきた奴は、第1勢力のメンバー10人。楽勝だな。新しい電動バリカンも買ったし。飛平さんの情報によると、ここで薬物の取引が行われたようだ。俺達は単車10台で来た。俺は認めたくないが、単車にまたがっても足が地面に着かない。だから後ろに乗せてもらい、ニケツで来た。


誰か来た! おそらく東京犠牲者学園の生徒だろう。俺は手で指示を出して、俺達は草むらに隠れた。セカンドバッグを持った男子生徒が河川敷の斜面に座った。タバコを吸ってるのか? 白い物を持って紫煙を撒き散らしてる。


「ふんふふん♪ふんふふん♪アイライク大麻ー♪アイラ~ブ覚醒剤♪ここに注射器がありまして~♪袖を捲って~♪チクッと注射器発射ー♪でも今日は大麻の気分ー♪」


誰も見てないと思って調子こいてる奴の独り言ほど間抜けなものはないぜ。


「あへあへあへ! くぅ~! たまんねえな~!」


俺は確信した、コイツは薬物をやってると。シャブ野郎に聞こえない程度のひそひそ声で指示を出す。


「いいか、お前ら。あのシャブ野郎を仰向けに、両手両足を押さえろ。行け」

「「「はっ!」」」


ガサッ。ゴールド・メンバーズ第1勢力のメンバーが一斉に飛びかかる。簡単に押さえ込めた。


「うわっ! なんだお前ら!? 気持ちよくなってんのによー!」

「俺が誰だか分からんようだな」

「チビッ子が!」

「許さねえ! 今すぐ分からせてやるよ!」


俺は、シャブ野郎のマウントポジションに着く。そしてポケットから電動バリカンを取り出して、ウィーン、ジョリジョリジョリジョリ。


「何!? 何!? 何してんの!?」

「お前、もうちょい髪の毛伸ばしとけよ。上手くカット出来ねえだろ」

「え!? どういう事!?」


見栄えは悪いが、立派で惨めな落武者ヘアスタイルだ。シャブ野郎の頭頂部を電動バリカンで刈り上げてやった。


「鏡を見せてやれ」

「はっ!」


部下の一人がシャブ野郎の正面で手鏡を見せる。


「え!? え!? え!? 何してくれてんだよ! 今日誕生日だぞ!」

「知るか間抜け。一年間その髪型をキープしないと呪われるからな」

「そんな…………」


まあ、嘘だけど。それにしても久々のヘアカット。堪らなく楽しい! 他人の人生を少しでも滅茶苦茶にする爽快感! たまんねえな~。


風で刈った髪の毛が手に付いた。きたねえ! 許さねえ!


「お前は、俺達を見た。両目を潰す」

「ま、待て! 大麻でもコカインでも覚醒剤でもやるから許してくれ!」

「許してください、だろ!」

「許してください!」

「違う! 許してにゃん、だろ!」

「許してにゃん!」

「アハハハハ! コイツ、ガチのバカだぞ! 頭の良さに偏差値は関係ないな、アハハハハ! 許さねえ!」


人の気配! 部下のものじゃない。俺は辺りを見渡すと河川敷の上に男が立っていた。接近まで気が付かなかった!? 何者だ? 東京犠牲者学園の制服じゃない、私服姿だ。


「お前らか? 東京犠牲者学園を嗅ぎ回ってる雑魚ってのは」


コイツが、飛平さんが言ってた自称東京一の不良? 一人で11人を相手にするつもりか? 自分が強いと勘違いしてる奴ほどプライドが高いものだ。俺の戦闘力は飛平さん以上。コイツも落武者ヘアスタイルにしてやるか。


「全員、その生意気な奴を落武者にするぞ! かかれー!」

「「「はっ!」」」


バキッ! ドスッ! ガコッ! ドカッ! ゴキッ! バタッ。始めに飛びかかった五人が一撃でブッ飛ばされた。コイツ、強い。飛平さんが倒した奴とは別人か?


「お前ら待て! 俺が闘う」

「バリカン君、お願いします」


部下達はコイツに勝てないと悟ったか。五人がかりが一瞬でやられちまったしな。俺がのしてやるぜ。俺は、男の前に立つ。敵は背が高い、俺を見下ろしてる。許さねえ! ドスッ! 俺は敵にボディーブローを食らわした。ガードが間に合わなかったか? 鳩尾にクリーンヒットだぜ。


「何やってんの、チビ」

「へ?」


バキッ! 俺の顔面に敵の拳がもろに入った。いてー! 挙動が見えなかった。ノーモーションでこの威力。一撃で意識が飛びそうだ。だが、俺はどんなにボコられようと倒れない! それが俺の持ち味! つーか、俺のボディーブローが全く効いてない。


「お前ら、横浜陰茎学園の連中だろ」

「な、なぜそれを知ってる? お前はいったい…………」

「カマをかけたんだよ、ばーか」

「くっ!」

「アホが。俺は、東京犠牲者学園の用心棒。お前らみたいなガキが勝てる相手じゃないんだよ」


バキッ! 今度はノーモーションじゃない。フルパンチだ。いてー。意識が…………飛……ぶ…………。

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