第21話(特設SNS)
ーー俺(レイ)は、天草の想いを心に秘めて、病院を後にした。マキは天草の病室に残ると言っていた。そりゃ彼女だもんな。俺と鈴木は黒塗りのセダンに乗り、帰路に着く。第3勢力のリーダー、飛平大谷は完璧に仕事をして、身の安全を確保してから、警視庁組対五課にタレコミを入れたそうだ。東京犠牲者学園は、俺の勘通り、完全に真っ黒だ。だが、警察は揉み消すらしい。だったら俺達、横浜陰茎学園総出でカチコミだ。
それにしても、パパの事だよな? 米兵のジョージ・セナって。伝説の不良、金子が唯一勝てなかった男。流石タックネーム、ルシファーだぜ。
鈴木は、俺と天草が何を話したか詮索しなかった。きっと鈴木と天草の間に強い信頼関係があるのだろう。
そろそろ俺の住んでるマンションだ。すると車が停まった。
「昨日ここらで降ろしましたよね~?」
「ああ、助かった、西園寺。じゃあ明日」
「ちょっと待ってくれ」
「どうした、鈴木」
「ゴールド・メンバーズの特設SNSに入ってないだろ」
「特設SNS?」
「数代前の第4勢力リーダーが片手間で作ったアプリだ。ゴールド・メンバーズ全員が加入している。そこから全体命令を出せ」
「どうやって入るの?」
「メンバーの招待のみとなっている。俺が招待しよう。秘匿性が高いから安心だぞ」
鈴木は携帯電話を取り出して、暗証番号を教えてくれた。俺は自分の携帯電話を操作して特設SNSを開いた。色々と情報伝達が速かったのはこれのお陰か。
「これでよしと」
「命令を出す場合、各勢力、役職、個人、全体と色々選べる。使い方はシンプルだ。チャットやボイスチャットも出来る」
「片手間で作ったとは思えないほどのクオリティだな、スゲーや」
「そうだろう。俺も最初は驚いた。キャプテン・ジャパンが入ってないと示しが付かんしな」
「明日は忙しくなるぞ」
「何をするつもりだ?」
「東京犠牲者学園にゴールド・メンバーズ総出でカチコミ」
「面白い。大隅さんの仇を取ろう、死んだわけじゃないが」
「じゃあまた明日な。頼りにしてるぜ、鈴木」
「ふっふっふ、任せろ。また明日」
俺は自宅マンションに着いた。ハビィは元気だろうか? 俺は部屋に入って電気を点けた。ハビィは俺のベッドの上で眠っていた。パソコンとテレビが点けっぱなし。電気代の事を考える間もなく睡魔に襲われたか。ソッとしておこう。俺はテレビとパソコン、部屋の電気を消してリビングへ行く。特設SNSでカチコミを全体命令だ。俺はアプリを開く。
【こちらキャプテン・ジャパン。明日の朝9時から東京犠牲者学園にカチコミを行う。行ける者は返事をしてくれ。出来れば総出で行きたい】
【【【はい! はい! はい!】】】
100人以上から返事があった。だいたい第1勢力と第2勢力のメンバーだ。名前と所属勢力が表示されている。出来れば遊撃隊の第3勢力に先陣を切ってもらいたいけど。おっと、飛平からもコメントが来た。何々?
【俺は反対だ。東京犠牲者学園は雑魚の集まり。ジェノサイドは俺達らしくない】
確かにな。お坊っちゃまが行くような学園に戦力の要である第1勢力を動かす訳にはいかないか。ましてやゴールド・メンバーズ総出なんて無駄か。
【助言ありがと、飛平。じゃあ第1勢力のメンバー10人くらい着いてきてくれ】
【ちょっと待った、キャプテン・ジャパン。キャプテン・ジャパンも行くつもりか?】
【そうだけど、なんかまずい?】
【俺一人で東京犠牲者学園のボスを倒した。キャプテン・ジャパンが動くほどの戦力は向こうにない】
【このSNSで発信する前に鈴木にも話したが、やる気満々って感じだったぞ?】
【鈴木は今ログインしてないようだが、鈴木が行くほどでもない】
さて、どうしたものか。東京犠牲者学園に侵入して、軽く闘ってきた飛平の助言は大切だ。無視できない。飛平は正論を言っている。それなら!
【第1勢力補佐、バリカンを先頭に第1勢力の10人で、東京犠牲者学園を荒らしてきてくれ。人選はバリカンに任せる】
【【【賛成!】】】
落としどころは決まった。しかしバリカンの奴、ログインしてるのに何もコメントしない。人選で迷ってんのか?
【仕方ねえな、行ってやるよ。但し俺はお前をキャプテン・ジャパンと認めた訳じゃない。キャプテン・ジャパンは天草さんだ。意識が戻ったって聞いたぜ? さあ、どうする瀬名レイ】
バリカンは忠誠心が皆無だな。後で鈴木に叱ってもらおう。
【こちら鈴木。天草は意識を取り戻したが、脚の骨にヒビが入ってるみたいだ。しばらくは動けない。キャプテン・ジャパンは瀬名ただ一人だ。文句のある奴は俺がシメる】
【すみませんでしたー!】
流石のバリカンも鈴木には頭が上がらないか。バリカンを叱ってくれてありがとう、鈴木。ってか、鈴木って第1勢力のリーダーなんだ。当然と言えば当然だ。まあ、一年生がゴールド・メンバーズのアタマになるのは金子以来みたいだし、納得いかない奴がいても仕方ないか。
【頼んだぞ、バリカン】
【仕方ねえな】
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