第15話(異世界の魔獣)

ーー俺は自宅マンションに帰宅した。腹が減った。何か食う物は…………。両親はアメリカで足止め。一応、冷凍食品を多めに用意してくれてある。冷凍チャーハンでも食うかな。レンジで4分だ。


俺は、チャーハンを温めている間、ハビィの様子を見に行く。ちょっと帰りが遅くなっちまったが、元気でいるだろうか。


「ハビィ、ただいま」

『おっ帰りー』

「初登校、疲れた。いきなり暴走族のアタマになっちゃった」

『何が起きた!? しゃー!』


ハビィの毛が逆立つ。流石のハビィも、そりゃびっくりするよな。


ブー……ブー……ブー……。俺の携帯電話が鳴る。誰だ? 俺はポケットから携帯電話を取り出して画面を見る。弥生って奴だ。ズキン! 頭がいてえ。こんなに頭痛が起きるなら着信拒否に設定してやる。ピッピッピッ、と操作して着信拒否にした。


俺の携帯電話が鳴り止んだ。


『弥生は元気?』


ズキン! 頭が痛い……。


「ハビィ頼む、その名前を言わないでくれ」

『別れちゃったの?』


意味が解らない。また頭痛が起きるくらいなら深堀はしないでおこう。


「まあ、そんなところだ」

『ふーん、残念』

「飯食ってくる」

『いってらー』


俺は、リビングに戻る。ハビィが元気で良かった。それにしてもハビィの奴、でかくなったな。もうカリカリのご飯を貪る。まだミルクのがいいと思うんだけど。


チーン。冷凍チャーハンが温まった。横浜中華街仕様のチャーハンだ。袋のまま食えるタイプだから皿を汚さない。スプーンを用意して食べる。鈴木がクスリはダメだと言ってたが、風邪薬はオーケーだよな。処方薬も。ダメってのはあくまで違法薬物のことだろうな。


俺は食べ終えて部屋に戻る。ハビィがパソコンで、ロイヤルちんまんをプレーしていた。ハビィのアカウントはランク32。俺を超えた。


「楽しいか?」

『話しかけないで! 今いいところ!』

「とんでもねえ猫だな」

『ああ~、負けちゃった…………』

「ほどほどにな」

『今日はやめやめ』

「熱くなりすぎるなよ」

『分かってるけどさ、負けると悔しいじゃん』

「全く」


いいのか悪いのか、ハビィは成長した。ちょっと感情の起伏が激しい。


『ねえねえ、レイ。座って』

「急に改まってどうした?」

『ずっと考えてたけど、レイとは信頼関係が築けたから思い出した事を話すね』

「おおぅ、全一教会の事か?」

『うん。僕は異世界から召喚された魔獣なんだ』


ーーハビィは、ヤハウェという星から地球に召喚されたそうだ。俺と会話出来るくらいだから、驚きはしなかった。冗談を言ってるトーンでもない。


ヤハウェは地球と同じく戦争が絶えないそうだ。地球と違う点は、魔法が攻撃の手段で、魔獣は魔法使いを守るために戦場へ投入されるそうだ。猫の魔獣は諜報活動が主だが、三毛猫は戦士らしい。これに関しては疑問だ。ハビィは大きくなったとはいえ、普通の猫と変わらないヒョロっこい奴だ。戦士って感じじゃない。


異世界ヤハウェでは、ハビィの親が所属していた国が滅ぶ直前に、産まれたばかりのハビィは召喚という形で星を脱出したそうだ。魔獣は何体かいて、地球各地に散ったらしい。ヤハウェの王族も地球に避難してきているそうだが、地球の人間と見た目の違いはないそうだ。ヤハウェでは人間の事をヒュムと呼ぶそうだ。


ハビィが言うには、やはり全一教会に三毛猫の雄を造り出す手段がなく、別の組織の力を借りて召喚したらしい。その別の組織は、恐らくと前置きした上で、もしかしたら異世界ヤハウェの王族なのかもしれないそうだ。カネのある全一教会と技術のあるヤハウェの人々、利害が一致してるとも言える。


ヤハウェの王族は地球を乗っ取るつもりかもしれないと、ハビィは言ったーー


「地球を征服しようってんなら、どんな野郎でもぶん殴ってやらあ」

『その意気、その意気』

「今日、入る事になった暴走族のアタマはキャプテン・ジャパンて名乗れと言われたしな」

『横浜陰茎学園は、ゴールド・メンバーズって暴走族がシメてるみたいだね』

「ネットで見たか。とりあえず、学園でケンカ売られる事はなくなったと思う」

『レイ、強いもんね』

「今日は三年生を50人くらいボコったよ」

『おっかねえ』


あれ? 何で俺は全一教会を知ってるのだろう。ハビィが教えてくれた? 俺とハビィの出会いが思い出せない。どうなってんだ? ま、深く考えないでおこう。


『そうそう。もう1つ言わなきゃいけない事がある』

「何? 異世界の事か?」

『レイの属性は、光と闇が混雑してるんだ』

「属性って何?」

『生まれもった性質って言うのかな。ヒュムは皆、何かしらの属性を持ってるけど、僕が見た感じ人間はだいたい1割ほどしか属性を持っていないんだ』

「ハビィにはその属性ってヤツが見えるのか?」

『見えるというより感じ取るんだ。ヒュムでも本来、属性は一種類しか持ってない。レイはかなりレアな人間だよ』

「光と闇の属性…………。中二病っぽい」

『ふざけない! 真面目な話をしてるんだよ?』

「すまん、つい思った事を言ってしまった」

『よろしい。話を続けるね。多分だけど、2つの属性が混ざり合う事で、レイは人間なのに霊的能力が高いんだと思う』

「幽体離脱は寝不足の原因だ」

『それは我慢しないとね。生まれもったものだから。レイが強いのも2つの属性が作用してるからだよ』

「光と闇以外にも属性ってあるの?」

『多くのヒュムは、火、水、土、風、この4つがメーンだよ。生まれもった属性で、魔法を使うのも耐性もアドバンテージがある。レイは魔法を使えるか分からないけど、耐性はあるよ』

「とりあえず、全一教会を更に調査だな。奴らの企みをぶっ潰してやるぜ」

『その意気、その意気』

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