第13話(初日で乱闘騒ぎ)

ーー俺は、父親が言い出したサンフランシスコへの帰省に着いて行かず、ずっと弥生と携帯電話で話してた。国際電話は高く着く。俺、英語は喋れないから、だいたい両親が通訳してくれる。いつまでも子供扱いは勘弁だ。ハビィと一人と一匹暮らし。悪くない。


横浜陰茎学園の初登校日。始業式に両親は間に合わないという連絡を受けた。どうやら、じいちゃんが体調を崩して、おまけにアメリカ西海岸近辺は猛吹雪の異常気象だそうだ。飛行機が飛べない状況らしい。だから登校初日は一人で行く事になった。


横浜陰茎学園は、行き場をなくした関東のヤンキーが集まる学園だ。いざとなれば闘うか。


入学式は特に問題なかった。男女共学で、不良だけかと思ったら、中にはがり勉みたいな奴らも居た。教室に入り、先生の自己紹介…………って、誰も聞いてない。だよね、アハハ。すると教室がザワザワし出した。前の席の男子生徒がひそひそ話をする。俺は聞き耳を立てる。


「おい見ろよ、ドアの外。二年生のバリカン君だ」

「見るな。目を付けられたらヤベーぞ。二年生でゴールド・メンバーズ第1勢力の補佐に登り詰めた逸材だ」


そんなにヤベー奴なのか。関わらんのが一番だな。


そのバリカンとかいう奴が俺達の教室に入ってきた。一年生をシメるつもりか? って! 俺の方に向かってくる。めんどくせえな。


「おい、金髪の一年坊。頭出せ。お前だ、お前」

「さあ、何の事だか」


ウィーン、ウィーン。バイブ!? いや違う。バリカンの音だ。シュッ! いきなり、バリカンで頭を刈られそうになったが、俺は、ソイツからバリカンを取り上げて床に叩き付けた。


「何しやがる! バリカンを弁償しろ!」

「バリカン振り回してんじゃねえよ、チビデブ」

「何だと!? 許さねえ! カラコン野郎が!」


カッチーン! キレた。コイツは150センチメートルくらいしかないな。俺とは30センチメートル以上の差がある。俺はソイツの頭をポンポンしてやるとキレた感じで振り払われた。そして、俺は、ソイツの空いたどてっ腹に、ドス! ボディーブローをお見舞いした。3割程度の力で。


「アイム・ナンバーワン!」


気を失ったか。あ、殴っちゃった。こりゃ一波乱二波乱あるか~?


廊下にガタイの良い上級生が集まってきた。ヤベー、早くも乱闘かな? まあ、ここまでは想定内。


「おい! 一年坊ども! 金髪以外は教室から出ろ!」


金髪って俺の事だよね、アハハ。ボコボコにしてやるか。


クラスメートは皆、廊下に出た。教師も。教師ってこういう時、止めねえの? 流石は横浜陰茎学園だぜ。


「その一年坊にヤキ入れてやれ」

「俺が行く」


なんだ? 俺の前にヒョロいのが来た。こんな弱そうな奴、秒殺だぜ。


「悪く思うなよ、一年坊」

「あっそ」


ヒョロいのが襲い掛かって来たはいいが、おっせえパンチだな。蚊が止まるぜ。バキッ! 俺は、ヒョロい奴の顔面に左ストレートをお見舞いした。1割の力で。気を失ってぶっ倒れたようだ。上級生だろうが俺の敵ではない。


「全員でかかれー!」

「「「オオー!」」」

「アイム・ナンバーワン!」


机や椅子があるから囲むことは出来ない。いくら人数かけようとも、直線的な動線なら意味がない。俺は次々に殴りかかってくる上級生をパンチだけでノシていく。後ろに下がりながら来たところを顔面ストレートだ。


俺は、20人くらい上級生を倒した。


「コイツ、ボクシングやってるぞ! 脚を狙え脚を!」


ばーか。それはブラフだよ。今度は、バールに金属バット、鉄パイプか。年下に人数かけて、その上、ドーグかよ。どんだけ弱い不良の集まりなんだ? 次は蹴りも織り交ぜてくか。


「全員かかれー!」

「「「オオー!」」」

「アイム・ナンバーワン!」


先陣切って金属バットを持った上級生が、俺に向かって突っ込んで来る。振りかぶって俺の脚を狙ったようだが、俺はジャンプして避けて、顔面にローリングソバットを食らわす。次の奴はバールで頭を狙ってきた。軽く避けて、下がった頭にハイキックを食らわす。


俺は無傷で、かかってきた50人くらいを全員ノシた。教室の端に、伸びた奴らの山ができる。すると、一際ガタイの良い奴が教室に入ってきた。コイツ、ハーフだ。黒人とのハーフ。


「金髪の一年坊、コイツらを一人でやったのか?」

「ああ、そうだよ」

「コイツらは、俺達のチーム、ゴールド・メンバーズの第1勢力。チームの中核となる武闘派だ」

「弱かったよ」

「ほう。ん? バリカンも倒したのか?」

「雑魚だったよ」

「ソイツはな、どんなにボコられても膝すら突かないタフさを買われ、二年生でゴールド・メンバーズの役職に就いた。それを倒すとは。お前は強い。俺達のチームに入ってもらう」

「闘いは終わりか?」

「いや、そうはいかん。これじゃ下の者達に示しが付かない」

「ふう。かかってこいよ」

「俺は、ゴールド・メンバーズのアタマ代理、鈴木だ。疲れてるところ悪いが本気で行く」

「俺は、瀬名レイ。ハーフ同士でやり合いたくないが、勝てると思うなよ? アイム・ナンバーワン!」


ズドン! 鈴木が一瞬で俺との距離を詰めてパンチしてきた。俺は両腕でガードするが、いてえ。スゲー、パンチ力だ。だが。俺は、鈴木の腕を掴み、ローキックをして体勢を崩し、鈴木の腕を背中に後ろ手に回し、肩の関節を極める。一瞬の出来事だ。


「イテテテ!」

「ハーフと闘いたくない。関節を壊されたくなかったら降参しろ」

「くっ! つえーな、お前。ゴールド・メンバーズ最強の俺が。分かった、俺の敗けだ」


ガキン! 頭がいてえ。後ろから殴られた? う、意識が飛ぶ…………。

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