第7話(ち○んこダイニング・タツ)

電車が最寄り駅に着き、俺と弥生は水族館に向かって歩く。手を繋いで。端から見ても付き合ってるラブラブカップルだ。駅から水族館までの10分ほど、ずっと手を繋いでいた。


俺達は水族館に着く。開館時間はもう過ぎてる。待たずに中に入れた。


「楽しみだね、レイ君。ここ初めて来たからホント楽しみ」

「水族館はベタだと思ったけど、来て良かったな」


俺と弥生は展示されてる海の生き物を色々見てまわる。弥生は無邪気な笑顔を弾けさせてる。夏になったらまた二人で来よう。なぜならイルカショーがあるからだ。今は冬だからイルカショーはやってない。もっともっと弥生に喜んでほしい。


弥生が高足ガニの水槽の前でしゃがんだ。


「どうしたの?」

「美味しそう」


え、そういう眼で見てたの? やっぱりこの子、天然だわ。可愛くて勉強できて天然って無敵かよ。全一教会の事がなければ、すぐに目標のアイドルに成れるな。弥生なら大丈夫。


「確かに」

「フフフ、だじゃれ?」

「高足ガニと確かにを掛けた訳じゃないぞ」

「どうかな? なんて」

「全く」

「次行こ、次」


弥生は立ち上がり、俺の腕を掴んで隣の水槽を見に行く。すると、ピンポンパンポ~ン。


『お客様にお知らせします』


「迷子でも出たのかな」

「いや脱走だよ。ある意味」


『館内の中央にて、ペンギンの行列を行います。尚、写真を撮る場合、フラッシュはご遠慮下さい』


ピンポンパンポ~ン。


「レイ君、ペンギン見に行こ!」

「おう」


俺と弥生はペンギンの行列を見に、館内中央に行くと、人だかりができていた。人気なんだな。すると、飼育員を先頭に10匹くらいの小型ペンギンがひょこひょこと列をなして歩いてきた。


「レイ君、映え写真撮ろ」

「おう」


弥生がポケットから携帯電話を出して、カメラ機能にした。


「自撮りするよ。レイ君、もっと近くに」

「お、おう」

「はい、チーズ」


パシャ。弥生はペンギンだけを撮るのかと思ってたけど、写真はペンギンを真ん中に俺と弥生の顔も入った。


「ねぇねぇ、もう一回撮るよ」

「おう」


パシャ、パシャ、パシャ。弥生は携帯電話の画面を見て、画像を確認してる。そして俺に画面を見せてきた。


「どう? 良い感じでしょ。後でレイ君の携帯に送るね」

「ああ、頼むよ」


ペンギンの行列イベントが終わった。俺と弥生は館内のベンチに座って休憩する。


「お腹空いた」

「そろそろ12時だ。ランチに行こうか」

「何食べよっか」

「この辺りだと、ハンバーガーなんてどう? チェーン店じゃない所」

「良いねえ。行こ行こ」

「オススメは、鍋の店が出すハンバーガーだ」

「鍋の店? 珍しいね。そこ行こ」


俺と弥生は水族館を出て、ランチに向かう。水族館から店まで徒歩15分ほどで行ける。〝ち○んこダイニング・タツ〟という鍋店だ。


「ちょっと暖かくなってきたね」

「温暖化だな」

「お昼だからだよ」


弥生が手を繋いできた。出来れば手袋越しじゃなく、肌と肌で触れ合いたい。


「お店、混んでるかな」

「人気店だけど、鍋は夜に食べる物だから空いてると思うよ」


俺と弥生は、ち○んこダイニング・タツに着いた。どうやら行列はないようだ。俺は弥生をエスコートして店内に入る。結構混んでた。


「いらっしゃいませ~!」


高校生くらいだろうな。姉ちゃん店員が応対した。


「二名ね」

「二名様入りま~す! カウンターとテーブル、どちらにします?」

「カウンターで」

「席へどうぞ」


カウンター席が丁度、二つ空いてた。俺と弥生は隣同士で座る。弥生はマフラーと白いコートを脱いだ。弥生って意外と胸がデカい。けしからん! 俺、けしからん事を考えるな!


「レイ君、ここ本当にハンバーガー作ってるの? 本格的なちゃんこ屋さんだよ?」

「お、おう。コートは足下にかごがあるからそこに入れて」

「うん」


俺はメニュー表を取り、弥生と一緒に見る。目立たない箇所にハンバーガーの写真とS、M、L、LLのサイズと値段が書かれている。


「リーズナブルね。その割りに結構ボリュームがありそう。私、Sにしようかな」

「じゃあ俺はLL行こうかな」

「サイドメニューも付いて来るんだ。私はポテト」

「俺はナゲットにしよう。ドリンクも付いて来るから選んどいてね」

「ちゃんこ屋さんにドリンクバーはないのね」

「まあ、そうだろうな。ファミレスとは違うからね」

「なるほど、なるほど。私、決まったよ」

「じゃあ店員さん呼ぶね」


俺は店員を呼び、注文した。

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