第5話(デートのお誘い)
俺はハビィにミルク与えて、自分の飯前までゲームをすることにした。〝ロイヤルちんまん〟というネトゲだ。18歳以上対象。レースゲーム風で、前を走る車のリアに着いてる穴に、自分が操縦する車のフロントに着いてる棒を挿入したら勝ち。逆に入れられたプレーヤーはノックアウトで脱落して終わりとなる。俺の世界ランクは31。最高がランク33だから高い方だ。ランク33は総勢30人と狭き門。いつか入ってやるぜ。
俺はノートパソコンを床に置いて準備をする。ログインすると世界中のプレーヤーからスタート待ちの所へ自動マッチングしてくれる。
【ロイヤルちんまん! レーススタート!】
レースが始まった。コースは夜の日光いろは坂登り。路面状況はドライ。いくつものヘアピンコーナーがあり、難易度は高めだ。ただコーナーで前の車に突っ込んで挿入すればいい訳じゃない。基本は直線でスリップストリームに入り、ピンポイントに棒を穴に入れなくてはならない。コーナーで入れるのは高等テクニックだ。
【いやーん、ゲロゲロ】
チッ。もう入れた奴がいるのか。手練れだな? コーナーで距離を詰めたか。
【おいどんでごわす、ゲロゲロ】
しまったー! 一瞬の隙を突かれて俺の車の穴に入れられてしまった。相手はランク32。ランクが1つ違うだけでここまで実力差があるのか。つえーな。今日はここまでにしといてやるか。
【どっこいしょ】
俺はログアウトしてノートパソコンを畳む。すると、ハビィがミルクを飲み終えてひょこひょこ歩いて俺の膝の上に乗った。
『レイ。悪趣味』
「ハビィもやるか? ハマると面白いぞ~」
『絶対やらないよ』
「他にも〝上様のおな~に~〟や〝バイブ横浜バイブ〟や〝おっぱい揉み揉みスタイル〟ってのもある」
『絶対やらない。僕、猫だよ?』
「盛りはつかないか。じゃ、そろそろ俺の飯に行ってくるよ」
『うん』
俺はリビングに行き飯食って、風呂でシャワーを浴びて、部屋に戻ってきた。すると、ハビィがノートパソコンに挟まれてた。
「何やってんの?」
『みゃーお、助けて』
「ははーん。さてはエロゲやりたくてパソコンを開いたな?」
『違う! 決して違う!』
「はいはい、そういう事にしときますよ」
俺はノートパソコンを開いて、ハビィを脱出させた。
「本当は何をしてたんだ?」
『僕の知らない事を調べようと。マジでエロゲをしようとしてないからね!』
「分かってるよ」
俺はノートパソコンを立ち上げて、ハビィに使い方を教える。ハビィは子猫なのに呑み込みが早い。化け猫か!? ハビィは肉球を使ってカーソルを動かし、猫パンチでダブルクリックをする。やはり化け猫!? 子猫の割には俺と大して精神年齢が変わらない、と思う。
ブー……ブー……ブー……。携帯電話が鳴る。誰からだ? 画面を見ると、弥生からだ。ドキドキしちゃう。これが、恋愛!? ピッ。
「もしもし」
「レイ君」
「どうしたの?」
「声、聞きたいな~、なんて。迷惑だった?」
「いや、全然」
「そう、よかった。レイ君は高校決まった?」
「俺、勉強できないから横浜陰茎にしようかと思ってる」
横浜陰茎学園はバカでも入れる、ちょっとヤンチャな奴が行く高校だ。
「横陰って良い噂聞かないよ」
「弥生はどこに行くの?」
「私は東京犠牲者学園」
「偏差値65以上の進学校じゃないか。凄いな」
「レイ君とは同じ高校に行きたいけど。私も横陰に行きたいな」
「絶対ダメ。人生が台無しになるよ」
「私ね、親の命令で犠牲者学園に行くの」
「どゆこと?」
「親が全一教会の信者だって話したでしょ?」
「うん」
「犠牲者学園って全一教会の資本が入ってるの」
「マジか」
「親と話し合って約束したの。犠牲者学園を卒業すれば、私は全一教会を正式に脱退していいって」
「中学を卒業するまで沢山思い出を作らないとな」
「進学しても私と会ってくれる?」
「勿論だよ。明日は休みだからデートしようよ」
「え、うん」
何だろう? 思った反応と違う。デートに誘えば喜んでくれると思ったけど。
「都合悪い?」
「違うの。余りにもストレートなお誘いだったから、ドキッとしちゃって」
「悪い悪い。俺は感性で生きてる人間だから。ところで、拾った猫はどうしてる?」
「弱ってたけど、段々元気になってきたよ」
「猫、喋らない?」
「喋るよ」
「な~…………にーー!?」
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