第3話(鉄拳制裁)
ーーその日の夜。俺はなかなか寝付けなかった。すると俯瞰で自分の寝姿を見る夢を見た。寝付いた時は2時から3時の深夜だーー
「レイ…………レイ…………」
「ううっ、もう食べられない」
「レイ! 何寝ぼけてるの! 遅刻するよ!」
「…………はっ!」
俺は枕元の時計を見ると、学園の始業時間に間に合わないギリギリだ。母親が起こしに来たようだ。バサッとベッドの掛け布団を剥ぎ取られる。俺の母親、瀬名よう子は専業主婦だ。俺が学園に行ってる間は母親にハビィの様子を見ててもらうか。
「ママ、サンキュ。学園に行ってる間、ハビィの面倒頼んだ」
「え、ええ」
俺は急いで制服に着替えて、スクールバッグを持って、家を飛び出した。
「遅刻だ、遅刻だ」
俺はマンションの駐輪場へ行く。俺のチャリ、AMG(アーマーゲー)号に乗って学園に向かう。チャリなら間に合うはず!
学園まで100メートルほど。キンコンカンコン。学園のチャイムだ。ギリギリ間に合わなかった。くそー。変な夢を見たせいだ。よし! 諦めよう。もう無理だ。だが、自由な校風だからと言って遅刻は怒られる。トホホ。
俺は学園の駐輪場にAMG号を停めて鍵を掛ける。そして、階段を上がって3階の教室にこっそり入った。当然バレる。
「瀬名! また遅刻か!」
「先生、実は宇宙人に拐われそうになりまして」
「ばかもん!」
「「「ワハハハハ!」」」
クラスメートの笑い声で教室がどっと沸く。
「まあいい。着席しなさい」
「はい」
「ホームルームを始める」
俺の席は一番後ろの窓際。背が高いし、視力も良い。夏は直射日光にやられて暑いが、各教室にはエアコンが設置されてる。冬は暖かいからよく眠れる。
放課後になった。俺は体育は好きだが、机にかじりつくのは苦手だ。弥生が俺の教室の入り口で待っていてくれた。
「レイ君、一緒に帰ろ」
「おお」
これが…………恋愛か。ドキドキしちゃう。
俺はAMG号を引きながら、弥生と一緒に他愛もない世間話をしながら歩いて家に帰る。
「レイ君、知ってる? 最近、ここら辺りを縄張りにしてた暴走族のリーダーがバイク事故に遭ったって」
「そうなんだ。街のゴミ掃除だな」
弥生は俺に興味がありそうな話題を振ってくれたのだろう。だが暴走族の話はやめてほしい。年上の幼なじみが暴走族のメンバーだからだ。どこですれちまったのか。良い兄貴分だったのに。
すると昨日、子猫が埋められていた辺りをうろつくスーツ姿の眼鏡を掛けた男がいた。見たところ50代か。血相を変えて何かを探し回っているようだ。その男が俺と弥生に気付く。
「もしかして弥生ちゃん?」
「勅使河原(てしがわら)さん…………」
弥生の親戚かな? 取り敢えず聞いてみるか。
「誰? 弥生の知り合い?」
「え、ええ、まあ…………」
「ダメじゃないか弥生ちゃん。男子の隣に立っちゃ」
どういう意味だ?
勅使河原は俺の腕をいきなり掴んで弥生の隣から退かそうとするが、軽く振りほどく。
「何すんだよ眼鏡野郎」
「お前はどうでもいい。 弥生ちゃん、この辺に子猫が居なかったかな? 2匹なんだけど。三毛猫の雄は神の使いなんだ。埋められてる場所を一緒に探してくれないかな」
俺は状況を察して弥生の口を塞ぐ。
「俺、子猫の居場所を知ってるよオッサン」
「どこだ? どこに居る?」
「1割で行く。アイム・ナンバーワン」
「は?」
バキッ! 俺は1割の力で右ストレートを勅使河原の顔面にお見舞いする。勅使河原は鼻血を垂らしながらバキバキに割れた眼鏡を掛け直す。
「いてえなー! 何をするんだ!」
「命を何だと思ってるんだ!? 雑魚が!」
「レイ君…………」
「1割の力まで手は抜いてやった。帰るぞ、弥生」
「うん」
俺は弥生に色々聞きたい。男子の隣に立つな? 三毛猫の雄は神の使い? 察するに宗教団体だ。
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