第43話 倫子そして、空手部の二人

 ベッドに横たわっても、倫子の胸は崩れず、きれいな形を保っている。

 お嬢様の肌はやっぱり白い。しかもきめが細かい。手で触れると、吸い付くのがわかった。


 軽く手で包むだけで乳首が固く立ち上がってきた。鮮やかなピンクの乳首は胸の頂点で自己主張をしている。

 軽く歯を立てると、倫子の口からは、ため息が漏れた。

「自分で触ったことありますか?」


「ううん?、そんなことして眠っていたものが」

 淫乱の血が噴き出すのが怖いということだろう。

「それが心配だから、ことさら清純派で通したの?」

「だって」


「俺、エッチがうまいってわけじゃないけど、倫子さんのために全力を尽くしてみる」

「でもそれで」

「大丈夫だと思いますよ、それにもしそうなったら、俺がやりまくって責任取ります」

 深にすれば冗談だったのだけど、倫子は真にうけたみたいだ。

 腕を伸ばすと、深の身体を抱き寄せ目を閉じた。


 


「感想をどうぞ」

 おわって、気ををした後で深は倫子に言った。

「ばか」

「お母さんが、はまるのわかるような気がする」

 深は思わず倫子の顔を見た。寝た子を起こしたということ?


「ちがうよ、そうじゃなくて、好きな人とするのはなんていうか幸せ」

「好きな人?」

「あたりまえでしょ、嫌いならこんなことしない」

 倫子はそこで言葉を切った。

「萌ちゃんがいるのは知ってる、他にも寝てる人いるような気はする、でもいいの」


 深は、話がややこしくなっていくだけのような気がした。



「ふうん、よかったね好かれて」

「よくないよ、話がややこしいだけじゃない」

「なんで?」

 なんでって、深は萌が何を考えているのかが、わからなかった。


「まさかやりまくるわけじゃないよね?」

「え、それは」

「美人だもんね、私みたいに可愛くもなくて、おっぱいも小さい女の子なんて、捨てられちゃうんだろうなあ」


 萌はそういうと下を向いた。肩が小さく震えてる。

 深は罪悪感と萌絵の愛おしさで、彼女を抱きしめた。

 はずが、逃げられた。

「ばーか、嘘、引っかかってやんの」

 完璧な泣きまねだった。

「私が負けるわけないじゃない、私はフィアンセなんだよ。他でできないように搾り取る」

 萌はペロッと唇を舐めた。

 なんかこいつも強くなったなあと思う。


「最初だけだと思うよ、あんな美人で金持ちのお嬢様、ほっとく奴いないって」

 それはそうだと思う。深にしても、たぶんそのうち疲れてしまうだろうなあとは思っている。なんといっても住む世界が違いすぎる。


「フロントホックのブラ買って」

「え?」

「彼女してたでしょ」

「なんで? じいちゃんか」


「いいんじゃないか嫁に買ってやっても」

「じいちゃんもそう思うよね」

「思う、こいつ向こうの親からも慰謝料もらったんだから、何でもたかればいい」


「ね、外させてあげるから、セットでパンツも欲しいなあ」

「お前、俺が怪我した金で」

「いいじゃん、こけただけなんだから。お嬢様とやって、そのうえ金もらおうなんて最低だと思わない、せめて可愛い彼女におすそ分けするのが筋ってもんでしょ」


「しゃーねーなー。ま、大人びた萌も見てみたいな」

「明日一緒に買いに行こうよ」

「俺も? 下着売り場へ」

「私はいいけど、深が恥ずかしいでしょ」

 行ってみたい気はするけれど、無理だろうなあと思う。


「俺向こう言ってるから」

「なんで、いいじゃん、一緒に選ぼうよ」

 デパートの下着売り場で、ふたりは、わあわあ言っている。たぶん傍から見たらバカップルそのものだ。

「やだよ、変態みたいじゃん」

「誰も気にしないって」


 結局、選ぶところまでは付き合わされてしまった。

「ねえ、試着室一緒に入る?」

 冗談とは思えない、エスカレーターの横で待ってると言い残し、下着売り場を離れた。

 こんなところで一人ポツンになったら完全に変態だ。


「あれ、先輩、こんなところで何してるんですか?」

 どこかで聞いた声がした。振り返ると、空手部の後輩が二人にこにこと笑っている。

「エスカレーターでスカートの中を覘いてるなんて、変態さんなんですね、先輩って」

「まさか、俺は、パンツより中身の方が好きだ」

「もっと変態さんじゃないですか」


 可愛い顔してひどいことを言う。

 二人は双子だ、小さいころから道場に通っていて、すでに黒帯だ。特に形ではインターハイに出場している。

 空手着姿が似合っていて、空手部の男子だけではなく、同じ体育館で練習している男子の中では噂の二人だ。


「あほ、何言ってんの」

 いきなり後ろから紙袋で殴られた。

「こんなところで何、恥ずかしいこと言ってんの」


「あ、先輩の彼女の」

「噂どおり、なんか夫婦みたいですね」

「えーっと、あなたたちは」


「空手部二年の櫛部」

「空です」

「海です」

 紹介しようとした深の言葉を継いで、二人はそれぞれ名乗ると同時に頭を下げた。


「ああ、ふたりでインターハイに出た」

 さすがに萌も知っていた。

「早川萌です」

「知ってます、お二人は有名だから」

 どんな噂を立てられているのかわかりゃしない。二人は「じゃ、お邪魔をしたら悪いから」といって頭を下げると上の階に向かうエスカレーターに乗った。


「すぐ浮気するんだから」

「たまたまであっただけだよ」

 言いながら二人の登って行った先を見たら、花柄とイチゴのパンティーが見えた。

 二人がこっちに向けてスカートをちょっと持ち上げたのだ。笑顔添えて。










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