第39話 怨みと成仏

 一度脱いでしまうと、多くの女性は急に大胆になる。絢子さんはぱっとパンティーを脱いだ。

「脚広げちゃおうか」

「やだ」

 と言いながら望むとおりの姿をさらしてくれる。


 シャッターを押すたびに、絢子さんがなまめかしさを増していく。

「私も撮ってほしい」

 萌? 違うなっちゃんだ。たとえなっちゃんが表に出ていても体は萌のままなら、前と何も変わらないはずだけど。


「そうかな、でも撮って」

 面白いことに気が付いた、服の脱ぎ方が違うのだ。なっちゃんは先ずスカートの中に手を入れてパンティから脱いだ。それも脱ぎすてずに、太ももにに引っ掛けたままだ。


 萌は、あまりやらない、というより見たことがなかった。

 スカートを持ち上げて、見えるか見えないかのところで止める。どれもこれも萌とは違うお茶目さだ。


 そうなると不思議なもので別の魅力がある。

 上着のボタンを全部外し、見えそうで見えないところでやめる。パッと脱ぐよりよりそそる写真ができた。


 でもこの写真たちっていったいどうなるんだろう?

「しらないな、そこまでは考えていなかった」

 カメラが無責任なことを言う。ほかの女の子もそうだけど、萌のヌードは絶対に表には出せない。


「じゃあ燃やしちゃう?」

 あれ?萌か?

「それも嫌だな、萌の写真を焼くなんて」

「二人のアルバムに張るしかないね」


「して」

 萌が、手を広げて誘った。

「え、ここで」

「うん、絢子さんの目の前で」

「見せてあげたい」

 訳が分からん、でも確かにちょっと見せつけてみたい気がする。


「後ろからして」

「やだ、恥ずかしい」

「だって床に寝転べないでしょ、ならば椅子に手をついて後ろからしかないじゃない」

 声は萌のままだけれど二人の人格が言い合いをしている。


「絢子ちゃんにも参加してもらおうっと」

「え、私も」

 絢子さんは成り行きがわからず、裸のままうろうろしている。服を着ようかきまいか迷っているうちに、萌が脱ぎだして、つい着そびれたのだろう


「深のもの舐めて口で大きくして、知ってるよね、ディープスロート。見たでしょ」

 絢子さんは真っ赤になった。


「萌の体は私が入れれるように、ぐっちょんぐちょんに濡らしてあげる」

「や、やだあ、恥ずかしいから、深、見ないで」


 初めて見る萌のオナニー。というより女の子が一人でしているのなんて、深は見たことがなかった。

「や、やあん、く、だ、だめえ」

 今まで聞いたことのない色っぽい声に深のものは大きくなっていく。

 

 萌と熱い時間が過ぎ、ぐったりした萌の身体を離すと、深は床に寝そべった。


「きて」

 無理だと思う、準備が整っていない。それでも絢子さんは自分から行動をした。


「い、痛い」

「はねられたとき私はもっと痛かった」


 なっちゃんが乗り移っている。

 絢子さんの体を乗っ取っているのだ。


「ぎ、ぎゃあ」

 自分で腰を下ろしながら悲鳴を上げている。


「ま、待って」

 俺は復讐の道具じゃない。

「だって、痛かったし辛かったんだよ、こいつのおやじのために」

「だからと言って」


「深さんいいの、それでなっちゃんの気が済むのなら」

「ひ、ひいい」

 絢子さんが悲鳴をあげながら、自分で動き出した。それは拷問にも似ていた。


「まって、そんなのだめだ」

「なっちゃんとやら、そんなことをするために、十年も待ったのか、もういいじゃないか、恨みを捨てて、成仏して、速く生まれ変わりなさい。その方が幸せだよ」

 じいちゃんの声がした。


「やだ、そんなことしたらみんなと離れ離れになる、また独りぼっちに」

「大丈夫だ、なっちゃんは独りぼっちになんかならないよ、君は五年後に生まれ変わるよ。・・・・・の子供として」

「ほんと、ほんとに、絶対?」


「嘘は言わない、五年なんて向こうではあっと言う間だ」

 わずかな沈黙の時間があった。

「わかった、じゃあ私、消える」

 一瞬にして、空気が明るくなり、なっちゃんの気配が消えた。



「なんでやっちゃうわけ」

 帰り道、萌は完全にお冠だった。

「仕方がないじゃないか、なっちゃんが」


「なにがなっちゃんが、よ。最後、絢子さんの中に出す必要なんかなかったじゃない」

「それは、あ、そうだ、なっちゃん生まれかわるって、ところ聞こえた?」

「あ、話変えた、もう腹立つな」

 ご機嫌斜めは治らない。

「くそじじい、なんて言ったの」


「まったく相変わらず口の利き方を知らん嫁じゃな」

「それは教えられない、それを話したら未来がどうなるかわからない」

「そうなのか、じゃあ聞かない」


 そう言ったとたんに、深はあることが閃いた。

「なあ、萌。子供ができて女の子なら」

「そうだね、名前は決まってるね」

 萌も同じことを考えたみたいだ、まあそれでもいいか。












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