第38話 二人プラス一人?

「誰とするの」

 萌が聞くまでもないことを言った。この状況ならば深以外にあり得ないだろう。

「絢子さん、彼氏はいないの。その人とやってるときに憑依すればいいじゃない」

 萌が憤然として言った。

「なっちゃん昔から深を狙ってたでしょ、私知ってるんだよ、ふたりっきりで隠れてお医者さんごっこしてたでしょ」


「おい、萌、何言ってんだ」

「だって、嫌だ」

「私、彼氏いないんだ、というよりそんな楽しいこと全部諦めてきた。なっちゃんのことが気になって、自分だけ幸せになるなんて」


「そんなこと、絢子ちゃんのせいじゃないじゃん、私気にしてないよ、幸せになってよ」

「そうだよ、だから深となんてやったらダメなんだ。やり捨てられちゃうんだよ」

「おい」

「だってそうじゃん」

 そう言われると深には返す言葉がなかった。

「深ちゃんとやると幸せじゃないの?」

「じゃあ萌ちゃんに憑依する」

「ちょちょっと待って」


「きゃあ」

 萌が膝から崩れ落ちかけたのを、深は慌てて抱きかかえた。

「ふうんこんな感じなんだ」

「なっちゃん」

「萌ちゃんいい体になってんね、これを弄んでるのか、深ちゃんスケベ」

「小三で死んでるんでしょ、どっからそんな言葉」

「こっちに来ると何でもわかっちゃう」


「絢子ちゃんは」

「なあに」

「脱いで、一緒にしようよ」

「まず脱いでみよっか、深ちゃんのカメラが写真撮りたがってるから」

「カメラが?」


「うん女の裸が見たくて見たくてっていうスケベじじいだから」

 あれ、この言い方は。

「さすが旦那さん、わかるんだ、そうだよ今のは萌ちゃん」

 どういうことだ?

「私の中に二人いるの」

「大丈夫なの?」


「知らないけど意外と窮屈じゃないよ」

「絢子さんも仲間になろうよ」


 絢子さんは、作業用のワークパンツのベルトに手をかけた。

 ほんの少しの躊躇がある、でもそれを思いきるようにワークパンツを脱いだ。

 下は、恐ろしく普通の茶色と白のボーダーだった。


 Tシャツの裾に手をかけこちらも一気に脱ぐとベージュのブラが現れた。要するに彼女は人に見せる気など全くなかったということらしい。

「ポーズは?」

「プロの人にそんなの無理ですよ」

「私、仏像専門だから」

 絢子さんは笑った。


「じゃあ、まずはそのまま、こっち向いてください」

「こんなことになるなら、もっと色っぽいのにすればよかった」

「生々しくてそそりますよ」


 ブラを外させると、緊張のために少し鳥肌が立っている、そしてお椀を伏せたような胸の頂点に乳首が固くたっている。

「萌さあ、絢子さんのおっぱい後ろから隠して、それでパンティーを太ももまで下げて」

 なんで、私がと言いながら、萌は絢子さんのそばに行こうとした。

「あ、萌も脱いでね、素っ裸に」

「わーい、ヌードだ」

「なんでなっちゃんが喜ぶの」

「撮ってみてほしいじゃない」

「そうかぁ」


 一人ごとを言っているみたいだが二つの人格が話し合っている、そばにいると不思議な気分だ。

「萌はなんでそんな色っぽいの履いてるの」

 彼女は黒のレースの上下を付けていた。

「そりゃあ、最初から見せる気だったからだよね」

「なっちゃん、それは内緒」




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