第34話 母親、京子

「ちゃんと写真を撮って、浄化してきたよ」

「なにそれ」

「萌が言ったんじゃない」


「で、彼女の体はどうだった」

「やってないって」

「嘘つき」

「嘘じゃないって」


「ほんとだよ、珍しく我慢しおった。もう、ちんぽをかちんかちんにしてたけどな」

「じいちゃん、下品」

「お、すまんすまん」

「なんで、やらなかったの」


「彼女さ、好きな男子いるんだよね」

「え、なんでそんなこと知っているの」

 深には、何となく引っかかるものがずっとあった。

 真子は例の男は当たり前ながら、その男子のことを思いきるために近づいたのではないか、そんな気がしたのだ。


「それで直接聞いた、同級生で好きな男がいるんだって、そいつが恐ろしくまじめな奴で、今の自分じゃ、だとさ」

「なるほど、やさしい深くんとしては、手が出せなかったのね」

「うん、真子がどんな経験をしたかなんて、高校生の彼にはわからない。そんなこと聞かされても彼もつらいだけ。彼がほんとに好きなら、あたってごらんって」

「それでどうしてもだめなら、もう一度さそってくれって言って分かれた」


「えらいなあ、深、大好きだよ」

「おい、そのあとの話はしなくていいのか」

「なにそれ、なんかあるの」


「うん、帰る時に偶然、彼女のお母さんにあった」

 真子の母親、真田京子は深が誰かすぐにわかった。

「ご迷惑をおかけしました。」

 彼女は深々と頭を下げた。


「で、こいつは、真子よりむしろこの女性を助けなきゃと思ったんだ」

「はあ、真田のお母さん、ってもう」

「うん三十八」

「おばさんじゃない」

 その通りだと思う、でも今は男の件もあってやつれているのだろうが、普段はきれいな人だろうと思った」


「で、こいつはつい言っちまったんだ、あなたの裸を撮らせてくれませんかって」

「あんたねえ、三十八って深のお母さんとあんまり変わらないじゃない。あんまりひどくない、それ」


 萌の言うのもわかる、でも深には彼女を見捨てるわけにはいかなかった。

「もう、わかったよ、やっておいで。正直に言ってくれたから、腹立つけど許すから。あとでちゃんと私で清めるんだよ」


「えーっと先に清めておいてくれないか、出来ればまずこっちで」

 深は萌の唇に人差し指を当てた。

「もう、変態。私は舐めるの好きじゃないんだからね、覚えといてね」

 いいながら、萌は真のジーパンのジッパーを下げた。


「こんにちわ、今日はよろしくお願いします」

 長い髪を一つに編み上げ、きちんとスーツを着込んだ京子は、にっこりとほほ笑んだ。

 この前よりは元気そうだ。やっぱり美人だとおもう。


「駅前のホテルを予約しておきました」

 場所と時間は、彼女に任せてあった。

「え、そんなちゃんとしたところでなくても」

「そうはいきません、真子のことも助けていただいたそうなので、私の不徳の致すところを今日は体で返そうと思っています。こんなおばちゃんでもいいですか」

「え、あ、いやおばちゃんなんて、お若いです」

 お世辞でもなんでもなかった。







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