第33話 後始末
「服部先輩、大丈夫ですか」
「大丈夫よ、こいつこれでも空手部の副部長だから、わざっと殴らすときはそれなりに避けてるはず」
さすがに萌だ。よくわかっている。
「でも、私のために、ありがとうございます」
「いいの、女の子のために頑張るのが深の趣味だから、気にしちゃだめよ、お母さんとのこともこれからだから、頑張って」
「どれくらいできるかわからないけれど、相談に乗るからね」
取りあえず、真田を家に帰し、深と萌は警察に向かった。
巡査長である、本間には、現行犯逮捕した犯人をそのまま取り調べる権限はない。
司法警察員たる巡査部長、市川が出張ったのはそういう理由だ。
中京署に連行された男は、とりあえず亮に対する暴行容疑で締め上げられ、その後真田や、おそらく他にもいるであろう女性に対する強姦容疑で締め上げられることになる。
被害届に、供述調書、意外と面倒だが仕方がなかった。
なんでこんな面倒なことを持ってきた、と言わんばかりの刑事もいたが、深と萌が何者かを耳打ちされたとたん態度を変えた。
「お疲れ様、さっきはごめんね、真田に気を遣わせたらとおもって」
「うんわかってる、萌は優しいな」
「深には負けるよ」
「蹴られたところ大丈夫だった? 見せてみて」
「脱いだらとまらないよ」
「いいよ、ちょっとだけ惚れ直したから」
ということでその日は、疲れ果てるまでした後で、萌と抱き合って眠った。
週が明け、月曜の朝のことだ。下駄箱の中に手紙が入っていた。
少女漫画ではままあるパターンだったけれど、自分の身に本当にあるとどっきりしてしまう。
見なくても真子からのものであることはわかった。
「お話がしたいのですが、学校で会うと先輩の彼にvちょっかい出してるとか言われるので、手紙を書きました」
「ほい、読んでみ」
一読して、萌は深に手紙を返した。
「私の読ませてどうしようっての」
「なんでも話そうってことになったじゃない」
「あほ、そこまではいいよ」
何だそうなのか、それじゃこれからは、そう思った時に腹にパンチを食らった。
「何回もやろうっていうの」
「お前ら教室でいちゃつくなよな、ったく、一人もんもいるんやで」
「まあ、しゃあないよね、服部君のでかいもんね」
美術部の女子が茶化す。
「おまえらなあ」
「ほら、お前ら席に就け、チャイムはもうなってるぞ」
教師が叫んだ。一応、深も萌も普通の高校生なのだ。日常は授業と部活で過ぎていく。
真田の家は阪急桂の駅から、十五分ぐらいのところにあった。
母親の実家の農家ということで、そこそこの大きさの一軒家だ。
「先輩には?」
「ばれてる、というか話した」
「信用されているんですね」
「どうなのかな、もう将来が決まってるようなものだから」
深は、婚約の話を真子に話した。
「いいなあ、私なんか汚れた女だから」
「それ、言わないようにしておいでって、萌に送り出されてきた」
「奇麗な写真とって、奇麗な体にしておいでって」
ったく萌もおかしなことを言う、深に抱かれると清められる、なんか最近本気でそんなことを思っているようだ。大丈夫か、そんな気もするが、確かに不思議と女の子が救われた顔にはなっていた。
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