第29話 講師の秘密?

「服部君、服を着たら講師室に来て」

西城さんは深にそう言い残すと講師室に入った。

「なんで、どうして彼女が履いてないの」

「それ、萌が言うか?」

そう萌も面白がってスカートの中をノーパンで見せていた。間違いなく深の反応を楽しもうと思ったに違いない。


「いいでしょ、私のものなんだから」

「ったくいい恥さらしだよ」

眼があって真っ赤になる下級生、にやにやする同級生。下級生でも露骨に下半身に視線を送ってくるものもいる、お前らのも全部見てやろうか。


「すぐ終わらすから待っててよ、一緒に帰ろ」

「ん、わかった」

萌はそう答えると友達の輪に向かった。女の子の輪から嬌声が上がる、間違いなく自分がネタにされていると深は思った。


「服部君、私のどうだった」

いきなり言われた。

「え、あ、その」

「彼女も見せてたからさ、つい張り合いたくなって。でも私の見て大きくしたよね、勝ったのかな」


なんて答えりゃいいんだ、でも驚くのはまだ早かった。

「私露出狂なんだよね、何とかしなきゃって思っているんだけど、ね、服部君いつも見てくれない、お願い、そうでなければ私そろそろやばい」


「撮れるぞ」

「じいちゃん、見えてるの?」

カメラは家だ、手元になくてもわかるらしい。

「ああ、お前が見るものは見える」


「わかりました、出来る限り、その代わり僕にも西城さんのヌードを撮らせてください、それと、この話、ある理由で萌に筒抜けになっています。たぶん話しても信じてもらえないでしょうけど、萌とはそのテレパシーでつながっているような、しかもお互いにシャットアウトできないので」


西城の顔は一瞬にして青ざめた。内緒話が筒抜けなのだ、当然だろう。

「大丈夫です、俺も萌も一切他言はしません」

「な、萌、入って来て」

「ん、待って。こっち、ちょっとけりつけるから、三十秒ほどで」

「三十秒後に萌が来ます」


ノックをして入ってきた萌は、信じられないといった表情を浮かべる西城に頭を下げた。

「わかりました、深を貸し出します。このことは他言しません」

「今度説明しますが、私たち人生相談が慣れっこになっちゃいまして」


西城は渋々といったように頭を下げた。

「私に二人を描かせてくれる? もちろんヌードだけれど」

ばらした時の保険ということかもしれない。

「全然大丈夫ですよ、日程はお任せします」


「ちゃんと履いてるか」

「ばか、決まってるでしょ、駅の階段で見られちゃうじゃない」

「だよな、西城さんはどうなんだろ、そのまま行ったらいずれ破滅だよね」

「なんかさあ、いろいろな人いるね、なんで私たちこんなことになったんだろう」

深も萌と同意見だった。もっともそれぞれ面白いが、なかには気分の落ち込む話もある。この前の涼子とこころの話のようなのは、二度とあってほしくはなかった。


発端は、やっぱりじいちゃんかなあ。あのカメラがすべての始まりのような気がした。

「おいおい、全部わしのせいにされても、この経験は、お前たちが社会に出たとき役立つから。法律関係者は、人の心がわからないとな」

「まって、俺、なにになるのさ」

「内緒だ、というよりそれは言えん。ただお前だけでなく嫁もな」

「私も」

それは萌にとって予想外の話らしい。




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