第19話 迫られる

 みんなほぼ素っ裸の上にガウンを着ている。

 こころはさっき見ているが、涼子の体は初めてだ。ついガウンの合わせ目に視線が行く。

「萌ちゃんって、ほんとに深くんのこと好きなんだね」

 そのたびに律儀に萌は唇を尖らせるのを見て、涼子はいう。

「だってこいつ写真を撮るのを言い訳にして」

「写真、ああ、あの二眼レフ、今日は」

「もって来てます。お二人の写真撮りたくて」


「え、また? 前撮ったじゃない」

「いえ、」

 深はそこで言葉を切った。そして深呼吸をする。

「ヌードです」


「いいよ」

「ちょっと、涼子、あんたはスタイルいいからいいけど」

 こころはとっても無理という。


「こころさんも、素敵ですよ、さっき見させてもらいましたけど。なあ、萌」

「悔しいけど、私なんかよりはるかに女性の体です」

「そんなことないよ、萌ちゃんの肌若いもの」

「ポーズはお二人が決めてくださって結構です、ぜひ勉強のためにも」

「写真家になるわけじゃないですけどね、こいつは」

 萌の言葉に二人は笑った、確かにそうだ。


 それでも二人のポーズの付け方はさすがだ、これからの参考になること確実だ。

「現像したら、頂戴ね」

「え、彼に見られたりしたら騒動になりませんか」

「私は大丈夫、涼子は」


「あいつのことは言わないで」

「そっか、ごめん」

「お腹がすきました」

 ちょっと微妙な雰囲気になりかけたことをま萌は察知したらしい。


「そうね、食べよう、今日はビールにウイスキーに」

「えっと俺たち高校生なんで」

「あ、そっか、まあそれはそれとして」


 結局萌と深のこと、カメラのこと、話は盛り上がっていく。女性が三人いると、男性はほぼ玩具だ。萌の話す、あることないことに、こころと涼子は手を叩いて笑った。

「あることあることでしょ」

 深の反論を萌は一蹴した。


 いつの間にかみんな布団をかぶってごろ寝、ということになったみたいだ。

 萌音の顔が横にあってびっくりした、かすかに寝息を立てている彼女はとてもかわいい。

 ふいに肩を軽く叩かれた。振り返ると唇に人差し指を当て静かにという合図をする涼子がいた。

 指で隣りの部屋を示す。向こうへということだろう。


 大丈夫こころは起きない、萌ちゃんも、多分。

 その言い方に深は涼子が何か細工をしたことを感じた。

「今日は大丈夫な日なの。だから抱いて、処女をもらってほしい」

 涼子は真顔で言った。

「えっと、それはありがたいですけど、なんで。さっきの花h氏だと彼氏さんが」

「そうよ、それが原因。あいつ処女は面倒だから、俺と付き合いたいならどっかでやって来いってぬかしやがった」

 あらら、ずいぶんと過激な言葉だ。

「だから、俺と、ですか」

「だめ? 私魅力がない?」

「いえ、とっても素敵ですし抱きたいです」

「なら」

 涼子はガウンのひもを解き一歩前に出た。

「あのですね、多分彼氏さん、照れてるんだと思います。それか、涼子さんみたいな美人とそうなることをビビっているんだと思います」

「そうかな」

「彼氏さんに、せまってみてください。今みたいに。それでだめっだったらもう一度。その時はいくらでもお相手します」

「ありがとう」

 涼子は、深に軽くキスをした。


 今に戻って萌の横に寝転ぶと、いきなり首に手が回ってキスされた。

「頑張ったね、絶対やると思ってたのに」

 聞かれてたのか、早まらなくてよかったと心から思った。


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