第18話 ヌードモデルになる

 萌は見られてすることに抵抗はないのか、いつもより感じているような気がする。

「なんで大きくならないの」

 握りながら不思議そうに聞く。

「舐めてあげようか」


「むり、俺は萌と違ってデリケートなんだ」

「何言ってんの、変態のくせに」


「あのね、ヌード写真は輸入本のエロ写真とは違うんだよな。絡みがあっても本番はないの、だから大きくなんてしなくてもいいから」

 あれ、そうなの。萌と深はちょっと拍子抜けした。

「高校生カップルの本番なんて提出したら、下手すりゃ退学だよ」

 そういって、こころは笑う。


 素っ裸になった二人はとりあえず、こころの言うまま芸術写真のモデルに徹することにした。

 不思議なことに、キスをしたり抱き合ったりしているのに、ちっともその気にはならない。エロ本の写真やピンク映画を見るたびに、男優はうらやましいと思ったが、意外と仕事となればつまんないものかもしれない。


 あーだ、こーだ、とポーズをとりながら、結局撮影が終わったころには日は傾きいている。とちゅう、食パンとコーラの昼食はあったが。ぐったり疲れてしまった。

「うちに来て、夕食をみんなで食べようと思って、涼子に買い出し頼んであるんだ」

 え、それはありがたいとは思ったけれど、帰りが夜になると萌のおばさんがなんていうか。


「おうちには私が説明してもいいけど」

「あ、大丈夫です。今日は帰えらないって言ってあります」

「俺と出かけてるのに?、よく許してくれたな」

「だから、こころさんと涼子さんの家に泊まるって最初から言ってある」


 そこで萌は小声で俺だけに言った。

「カメラがそう言ってくれてたよ」

 なんで、俺にはその話まったく初耳なんだが。

「お前に話すと、また、やましいことを考えるからな」

「だってさ」


「撮ってやんねーからな」

「大丈夫、向こうからせがまれるから」

「そうなのか」

「ならばいいなという話、かな」

 もちろんこの話は、萌と深しか聞こえない。


「じゃあ、ついてきてね」

 萌はこころの後ろに乗っている。確かに向こうの方がバイクも腕もいい、こっちは必死であとをついていった。

 こころのというか二人の住んでいる家は、上京区のはずれ北山杉で有名なあたりにある古い農家だった。住んでいた人が都会に出てしまい空き家だったのを知り合いの伝手で借りたそうだ。


「お風呂沸いてるから、入っておいでよ、一緒でいいでしょ」

 今更、照れる必要もないので、二人はお礼を言って風呂場にいった。

「これってゴエモン風呂? 入り方知ってる?」

「うん、大分のじいちゃんところがそうだったから」


 問題は洗い場が狭いことだった。

 結局、二人で洗いっこをして、風呂釜につかってという、楽しい風呂になった。

「ほら、いちゃついてないで、食事できたよ」

 涼子さんが、交代で入って来た。思わず目で追ってしまい、例によって萌にワンパンを食らった。


 撮影に使う浴衣あるから着て。

「いっか、下は裸で」

 着替えを持ってきていない。

「もって来てあるよ、泊まるつもりだったから」

「俺はないから」

「だからもって来てあるって」

「いつ泊りになってもいいように、深の分もあるの」

 ありがたいけど、すでに萌から逃れられなくなているような気がした。俺らまだ高一だよな。













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