第17話 え、撮られるの

 写真の出来はなかなかだった。

「カメラマンで食っていけるかもね」

 萌は真面目な顔で言った。

「そっか、そうしたらモデルさんや女優さんと」

 言ったとたんに、腹にパンチを食らった。

「殺すから」


 萌はそう言って笑ったが、目だけは笑っていない。

「ほんと、このカメラ壊しちゃおうか」

 萌はじいちゃんのカメラを放り投げる真似をした。

「まて、まて、まったく乱暴な娘だな、可愛い顔をしてるくせに」

「お世辞を言っても許さない」

「待てって、大体俺はヌードを撮れとは言うけれど、後はお前の彼氏の問題だろう」


 深はそっと逃げ出そうとした、このパターンは絶対的に自分に不利な話になると踏んだのだ。

 好都合なことに、玄関で電話が鳴った。

「あ、逃げるな深」

「はい、服部です、あ、はい判ります」

「萌も一緒にですか、多分大丈夫だと思います」


「中村こころさん、わかる?」

「うん、ショーっとヘアの方の人」

「だっけ、覚えてないや、今週末会えないかって。萌も一緒に」

「私も? なんで」

「知らない」


 土曜日、深はハスラーの後ろに萌を乗せて、こころの通う大学を訪れた。

 あらかじめ教室は教えてもらっていたが、大学は広く、あっちこっちで尋ねてようやく、こころが待つ教室にたどり着いた。


「単刀直入にお願いするね」

 教室に入るなり、こころは待ちかねたというように言った。

「二人のヌード取らせてほしいの」

「は、ヌード? 二人のですか?」


「うん、ずっとモデル探してたんだけど、なかなかピンとくる人がいなくて」

 卒業制作に、絡み合う男女を考えたそうだが、モデルの段階で困ったらしい。

「この前二人にあって、これだって思ったの。お願い、何でも言うこと聞くから。バイト料はあんまり出せないけど」


「別にバイト料はいいですよ、俺は。でもどっかに発表されると」

「あ、顔はわからないようにするから、お願い」

「俺はいいけどどうする」

「深とならいいよ」

「ありがと、ほんと嬉しい」


 教室というか、こころの研究室には、ベッドがあった。この撮影用に家から運んだという。

 腰にタオルを巻いただけの深と、下着姿の萌、それとパンティー一枚のこころ。自分たちだけが脱ぐのは恥ずかしい、と萌が言ったことから、こころも脱ぐことになった。パンティーだけなのは、ノーブラだったからだ。

 意外と大きな胸が揺れる、がこころは深の視線を気にしていないように思えた。


「じゃ、萌さんを抱きしめて、キスして。それからブラジャーを外す。二人はもうやってるんだよね、その時の雰囲気を」

 身もふたもない言い方だが、まあやると言った以上は仕方がなかった。


 萌はどうするんだろうと思ったが、完全に面白がっている。

 そういえばこいつは美術部だった、深よりもこういうことにかけては才能がある。

 萌を抱きしめると、首筋に唇を這わせた。本気か芝居か萌は軽く口を開くとため息を漏らした。


 響くシャッター音をBGMにして、航は萌のブラを外した。




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