第16話 恋人同士

 天井の鑑に、服を脱ぐ萌の姿が映る。それはなかなか不思議な風景だ。

 頭、形、そしておっぱい、それだけしか見えない。

「深も脱いでみてよ」

 萌が何か企んでいるような気がして。深も素っ裸になった。


「真ん前向いて。私のこと見て。大きくして」

 萌はベッドに寝っ転がり、大の字になって脚を大きく広げている。

 彼女の視線は天井の鑑を見ていた。

「へえ。身体からそんなにはみ出して見えるんだ」


「わが体、成り成りて成り余れる処一処あり。故、此の吾が身の成り余れる処を以ちて、汝が身の成り合はざる処に、だっけ」

「うん。刺し塞いで」


 萌がベッドの上で体を起こし手を広げた。

 そのしぐさがめちゃくちゃ可愛いと深は思った。ベッドに向かってジャンプする。

「きゃ」

 反動で、萌が脚を大きく開いて跳ね上がった。


「うわ、何このスプリング」

「お金かかってるね、ほんとバカみたい。こんなの作るって」

「でもたのしい」

「そうだね」


「まって、このスイッチなんだろ」

 深が萌の上になしかかあろうとしたところで、彼女にかわされた。

「え、動いた」

 ベッドがゆっくり回転を始めた。


「ごめん、だめだ、止めて、酔いそう」

「えー、つまんない」

「俺コーヒーカップで酔うって知らなかったっけ」

 萌は思い切りほっぺたを膨らました。


「酔わない人と来ようかな」

「ゆるさない」

 深はやっと萌を組み敷いた。

「自分はいっぱいしてるくせに」


 深は萌の唇を唇でふさいだ。

 腕の中で萌は「んーんー」言っていたが、やがておとなしくなった。

 背中にまわした腕に力がこもる。


 家でもどこでもすることは変わらない。

 モーテルは面白いけれど、あえてここにくる意味は、深にはあまり理解できなかった。

 それでも萌音がはしゃいでるのを見るのは楽しい。


「ね、私たちまだ高二だよね、こんなことしてていいのかな」

 萌が抱きついたまま言う。

「友達なんてまだみんな」

「わからないけど、俺、萌のこと好きだよ」

「ありがと、私も」

「でも、」

 思わせぶりな萌の態度に深は急に不安になった。


「何?」

「深はいっぱいしてるのに、私は深だけ?」

「この先分からないでしょ」

「深はいいの?私がほかの人として」

「やだな、やっぱり」

「そうだよね、そうなったら内緒にするから、安心して」


 きっとほかの女の子のことに対する萌なりの抗議なのだろう。まあ正直言ってどうなるかはわからない。


「きっとお風呂も面白いよ、入ろ」

 萌は立ち上がると、勢いよくベッドから飛び降りた。


「大丈夫? ちゃんと運転できる?」

「うん、でもなんか食べたいなあ、腹すいちゃった」

「三回も頑張るから、ほんと深はスケベだなあ」

「誰が頑張らした」

「知らない」


 深はエンジンをかけた、背中に萌が張り付くのを感じる。

「出るよ」

「え、また出すの」

 振り返ると萌がメットの中で笑っている。カチっという音を立てて、萌がメット越しにキスをした。




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