第15話 モーテルって

中村こころと高野涼子と名乗った二人は大学生だという。

ショートヘアの方がこころさん、長い髪を後ろで結んでいる方が涼子さん。

こころさんは福岡の出身で、涼子さんは岐阜の出身らしい。

二人で京都の市内にアパートを借りているという。

バイクはホンダとスズキ。ホンダはご存じ飛葉ちゃんの愛車、スズキはテレビ版「ワイルド7」で使われた水冷のやつだ。


結構な値段がするはずだ。きっと二人ともお金持ちなのだろう。

「まさか、バイトが大変なんだから」

二人は顔を見合わせて笑った、美人だ。

そう思ったとたん、萌に足を踏まれた。どうしてこういうところは勘がいいのか。


「写真撮ってもいいですか」

深はバッグからカメラを取り出した。

だめなわけはなかった。さっきから、カメラが、早くと大騒ぎをしている。


「え、そのカメラ」

「私たちより君の方がお金持ちじゃない、そのカメラ」

「じいちゃんの形見なんです、カメラ詳しいんですか」

「うん、私たちそっちの学部だから」


「え、プロなんですか」

「あ、違う違う、カメラをつくる方」

「え? 工学部ってことですか」

「うん」

「えー憧れます」

萌が甘えた声を出した、女子高校生みたいだ、って本物の女子高生だった。


それぞれのポートレイトと、愛車の前で数枚の写真を撮った。

「送りますから、住所教えてもらえますか」

お互いの住所と電話番号を交換して彼女達とは別れた。


「ヌード取るんだ、またやっちゃうのかなあ」

「そうはうまくいくかどうか」

「あ、上手くいくって言った、やっぱりその気なんだ」

「萌だけだから」

抱きしめようとしたら、するっと身をかわされた。

「騙されないから」


「あーあ、私も自動二輪取るかなあ」

「いいんじゃないか、これなら簡単だよ」

「でも走るのはタンデムがいいなあ」

「そんなの前後そのたびに変わればいいじゃない、二人とも走れたら便利だと思うよ」

「ほんと、一人で走りたいと思わないの」

「なんで、萌と一緒の方が楽しいじゃない」

萌が飛びついてきた。

人目があるだろう、こっぱずかしいじゃないかと思ったが、まあそれもいいか。


「ね、モーテルって行ってみたい」

耳元で大声で言われて、深は思わず運転を誤りそうになりあやうくこけるところだった。

慌てて、左に寄せてバイクを止めた。

「急に何言ってるの」

来るときに見たんだ、可愛いお城みたいなやつ。歩いてとかじゃやだけど、バイクなら。


確かにそうだなと深も思った。

「深は誰かといったかもしれないけど」

「行ってないし」

「ほんと、じゃあいこうよ」


「こんなふうになってるんだ」

萌は明らかにはしゃいでいる。

部屋のど真ん中に丸いベッド、周りは一面ガラス張り。

「なんか笑うしかなかった」

「ここまでやる?」

「大人ってバカなの」

そう言いながら、二人はけらけら笑いあった。


「ねえ、見て」

ベッドに寝っ転がった萌は天井を指さした。

上もガラス張りだった。


「なんかお笑いになっちゃうね」

「うん、脱いで、やってみたい」






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