第13話 萌の初体験

「おかしな形、触っていい」

 聞くまでもない。

「俺も萌のが見たいな」

「え、それは」

 萌がちょっとだけ後ずさりをした。


「今日は、恥ずかしい」

「今日はって、いつなら」

「今度」

「今度っていつ」

「今度は今度」

 萌は両手で前を隠した。絶対見せないという固い意志が感じられた。


「緑さんも見せてくれたのに」

 萌の目がはっきり吊り上がった。

「姉さんは姉さん、私は私」

「そんなこと言うなら、もうやめる、姉さんとすればいい」

 萌は涙ぐんだ。緑のことは口走るべきではなかったと潤は気が付いた。


「ごめん、撤回。萌が嫌なことはしない」

「ほんとに、姉さんと比べない」

「比べない、萌が一番」

「一番、それじゃ二番は」

 女の子ってのはめんどくさい。


「訂正、萌しかいない」

「ほんと、じゃあ無理に見たりしない」

「しない」

「私のこと、愛してる?」

「愛してる」

「じゃあ、キスして」

 やれやれ、やっとお許しが出た、疲れると思うが、さすがにそれを顔に出すほど深は子供でもない。


 さっきと違い今度は二人とも裸だ、キスよりも触れ合う肌の感触が鼓動を速めた。

 背中にまわした手から萌の緊張が伝わってくる。

「なんか固いものが、お腹にあたるんだけど」

 萌がくすぐったそうに体をよじる。


「えい!」

 渾身の力で萌の体を抱き上げた。

「きゃ」

 バランスを崩しかけて萌は深の首に両手で抱きついた。当然のように二人の肌は密着した。彼女の吐息が胸にあたる。


 萌はまだ少女だ、これまでの三人と比べて深はそう思った。

 緑でも萌に比べると格段に大人だった。

 おかしな言い方だけれど順番が逆になっていたら、萌にもっときつい思いをさせたような気がした。


 深が果てたとき、どこにそんな力があるそう思うほど、深は萌に抱き締められた。

 萌の目に涙が滲んでいた。


 自分もまだ子供だと思う、それでも萌と愛し合うことができた。萌が初めての相手ならもっと余裕がなかったかもしれなかった。

 萌が恥ずかしがる顔、萌が耐える顔、萌があげた悲鳴、萌が流した涙、そして萌の肌の感触。全部一生忘れないだろう。

 

 ベッドの上のタオルはものすごいことになっていた。

「あーあ、もう捨てなきゃ、こんなのお母さんに見せられない」

「洗濯機回してみようよ、先にシャワー浴びておいでよ」

 深は、萌の股間から太ももにかけての惨状を、見ていられなかった。


「しちゃったね」

 シャワーを浴びて、冷蔵庫から出したオレンジジュースを二人で飲んだ。

「写真撮ってみようか、セルフタイマーかけて」

 バスタオルに二人でくるまった写真、シャッターはきちんと落ちた。


「カメラに認められたってこと?」

「ヌード撮ってみようか」

「誰にも見せないって誓う?」

「当たり前、なんで見せなきゃなんないの」


 照れながら、萌がポーズをとる。自分の彼女ながら素敵だと思う。

 でも、シャッターは落ちなかった。

「なんで、お子様の身体はいらないってか」

 裸で萌が怒っているのがなんかおかしい。

「俺はひとの女に興味はない」

 深と萌は顔を見合わせて笑った。









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