第4話 女性刑事
「お帰り、大分どうだった。って言ってもお葬式か、楽しいも何もなかったね、ごめん」
朝の教室で話しかけてきたのは、隣の家の早川萌だ。深が小学生の時にこの住宅地ができて、二家族ともに同じころに引っ越してきた。
小学生のころは、ちっぽけで、がりがりの女の子だったが最近は出るところでて、女らしくなっている。もともと猫系の顔つきで深はずっと好きだが、どうも友達の域からでていないような気がする。
もっとも、周囲からは、二人は付き合っていると思われている。それを萌も否定していないということは……、そんな仲だ。
「気にしなくていいよ、もういい年だったし。形見にいっぱいもらってきた。あとで見に来る? ギブソンももらってきた、ほかにも今日バイクが届く」
「ギブソンってフォークギター? 亡くなったのはおじいちゃんだよね」
「そうだよ、なんか年の割には若くてさ、バイクも町でのチョイノリ用に買ったらしいんだけど、ほかにみんないらないって言うし、俺がもらった。それも今日着くって」
「免許もってた?」
「取りに行く、今度」
「そっか、後ろ乗せてね」
「無理、原付だから」
「なんだつまんない」
というほど、残念がってはいなさそうだ、萌はバイクの後ろに乗る、という感じじゃない。
「今日は何時頃帰る?」
「部活終わってからだから」
「あ、私もだ」
ちなみに深は空手部、萌は美術部だ。
「じゃ、後で」
深たちの通う府立K高校は単位を自分で選ぶこともあって、同じクラスだからと言って一日同じ授業というわけでもない。
次のヌードは萌かな、彼女の後ろ姿を見ながら、深は思った。
「ごめんください」
「いいよ、はいって」
てっきり萌だと思って、玄関を開けた深の目の前にいたのは、見知らぬ女性だった。
「服部深くん、ですね」
ショートにした髪とかっちりしたスーツ。意志の強そうな目に整った顔だち。はっきり言って美人だが知り合いにはいない。
女性はハンドバックの中から、黒革の手帳を出し中を開いた。
制服姿の女性の写真が貼ってある。
「京都府警本部の市川と言います」
「はあ、え、刑事さん」
「ちょっとお話、いいですか」
「はい、中の方がいいですか?今誰もいないんですが」
「ご両親は?」
「母はまだ仕事から帰ってきていません、父は法事で大分に行っています」
「法事で? あ、だから別府からのフェリーに」
フェリーという言葉で、深は市川の用事の内容が分かった。
「真紀さんの件ですか」
市川の目が鋭くなった。
「なぜそう思うの? 彼女とは知り合いだったの?」
「ニュースで事件を知ってびっくりしています。フェリーの中で初めて知り合いました」
「ああ、なるほど。そうだよね、どう考えても接点がないものね」
確認に来た?まさか真紀が自分に貢いだなんて考えたのか。
「わかりました、じゃ、これで」
市川は頭を下げて帰りかけて振り向いた。
「で、なんで部屋の中に彼女の指紋があったの?
フェリーの部屋の指紋をとった?
「え、それは」
「お風呂や、いたるところに彼女の指紋があったんだけど」
「あの、それは」
「フェリーで知り合って部屋に連れ込んだの?」
深はどういうべきかと頭をフル回転させた。
「こんばんは」
いきなりドアがあいて萌が顔を見せた。
「あれ、美樹ちゃん」
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