第3話 初めての
ベッドサイドに座った真紀は、深に向けて突き出した掌を上に向け、小指から順に指を折った。誘ってる。
「えへ、色っぽい? 一度やってみたかったの」
「うん、ドキドキする。」
深は誘われるままにベッドに寝た。真紀の顔が近づき、唇に唇が重ねられた。
もちろん深にとっては、生まれて初めてのキスだ。
柔らかい真紀の唇が、深の唇を開き侵入してくる。舌が絡まると一気に気分が高まった。
最初は全部真紀の成すがままだった。当然だ。エロ本で読むのと実際のSEXは違うに決まっている。
何をすればいいのか今一つ分からない深。彼女がうまく手を取り教えてくれた。
あっという間といえばあっという間で何が何だかわからなかった。実際の時間はどれくらいだったのか。
体中に感触は残っているが、実際に何をしたのかはよくわからない。もちろん気持ちはよかった。
汗もかいたし、後始末もかねて、風呂でいちゃついた二人は、もう一度ベッドに入った。今度は少しは余裕があったけれど、真紀が物足りたかどうかはわからない。
表面上は「よかった、深くん上手よ」と言ってくれたのが、やっぱりうれしかった。
夜が明け、そろそろ船は神戸に入港する。結局真紀はずっと深の部屋にいた。
彼女の荷物はハンドバックだけだったみたいだ。
九州に何しに行ったの、これからどこへ行くの? 色々聞きたいことはあったが、どうも無理っぽい感じがあり、深はあきらめていた。彼女は深が彼女自身のことを聞くたびに微妙に話を誤魔化すのだ。
「写真は送らなくてもいいよ、多分受け取れないから。その代わり私のこと忘れないで」
写真を送ることを理由に住所を聞こうと思ったのに、それもあっさり躱されてしまった。
「忘れはしないけど、真紀さんのことを何も知らないのは寂しいです」
思い切って言ってみた。
「んー、多分二、三日中には分かるよ、じゃあね。楽しかった」
真紀は深にキスをすると、あとを追わないで、と言い残し部屋を後にした。
三宮から国鉄で向日町までは各駅停車で小一時間かかる。昨日あまり眠れなかったこともあってついウトウトしてしまった。夢の中で誰かがささやく。
「まず一枚目、もっともっと撮ってくれ」
思わず目が覚めた。電車は神足駅を出ている、次の次だ。寝過ごしてしまうところだった。
大分から戻ってきて三日、忌引きで休んでいた学校も今日から行く、その朝にテレビのニュースで深は真紀と再会した。
「村岡真紀、二十三歳。福岡で勤めていた金融機関の金を横領、勤務先が被害届を出す前に警察に自首した。横領額は億を超える模様だが、動機等はこれからの捜査による」
淡々としたアナウンサーの声、テレビに映る写真は真紀だったが、深の知っている本人はもっと美人だった。
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