238 進化の系譜 その210

 第7層……そのこは大海原が主舞台の階層だった……そして、その中に浮かぶ絶海の孤島……といった雰囲気を持つ小島の中には更にダンジョンが……まるでダンジョンのマトリョーシカ状態だが、稀に無くもないらしい……そんなダンジョンの中に存在していたのは、小山の如く巨大なボスだった……

━━━━━━━━━━━━━━━


──人外レベル4 その35──


キュキューーン……ごっ


 魔力が尽きたのか、魔法陣は薄らいで消失。召喚されていたコメットも最後の1発を放出して品切れとなったようだ。


「さて、ボスの様子は……小破って所かしら?」


 全体的に小山と呼ぶだけあってその材質は岩石と土で構成されており、自然の山ではないので草木などは生えてなかった。コメットが無数に打ち込まれたせいで所々の岩石が砕け散っており、穴があちこちに空いている。だが動くには問題は無さそう……といった具合だ。


「上から打ち込んだから足は健在。腕は多少怪我を負ってるけど無事と……無駄打ちってこういうことかな?」


 ふと気付くと、レイジがorzしていた……ちょっと辛口な評価だったかな?


「はい、これ飲んでおいて」


 ……と、MP回復薬の小瓶を投げる。


「イテッ!」


 どこぞの狂ったビル登攀者が物を落とされて耐えた時の声と似たような声を上げたレイジ。まぁ、あれは「オパッ!」っていってた気がするが……器用に頭の上に立った小瓶を手に取り、飲み干している……その内に回復するかな?



「ふぅ……ちょっと時間掛かるけど、仲間が犠牲になるよりはいっか……」


 息を吐いて目を瞑るトーコ。立ったままでは難しいのか、座り込む。


(……集中集中)


 じわじわと空気中の魔素が漂って来る。通常、目に見えない筈の魔素が高濃度となり、暗紫色の靄として可視化されているのだ……


(……千里眼発動)


 目を瞑ったまま、遠くで暴れている小山ゴーレム(ボス)を脳裏で認識する。


(……起動座標確認……固定)


 トーコの周辺に漂っていた魔素が消失する。ロムとカルスはいきなり目前のボスの中に起こりつつある異変に気付く。


『これは……』


『不味いでゴザル……カルス殿!』


『わ、わかった!』


 大慌ての全力で離れるロムとカルス。阿吽の呼吸とでもいおうか……前衛組は前衛組で育ってるようで何よりだ。


「……いわなくても理解したようね」


〈あのマスター?〉


「あ、多分酷いことになると思うから……これ土壁の陰に隠れた方がいいよ?」


ずもももも……


 土壁アースウォールが無詠唱で築かれ、それは半円状のドームとなっていた。


〈わ、わかったわ……〉


 マリィがドームの内側に入り、レイジも後に続く。


ごぱんっ!


 ドームは完全体となり、やや拡張されて停止する。流石に3人では狭かったから拡張した訳だが……これで、気兼ねなくぶっぱできるな……と、トーコはほくそ笑むのだった!


━━━━━━━━━━━━━━━

カルス「ちょおっ!?」

ロム 「急いで離れるでゴザル!」

カルラ「離れろって……穴掘って入った方が早くありませんかっ!?」

ロム 「……それもそうでゴザルな!」

 ……という訳で、2人は急ぎ穴を掘り始める……間に合うかどうかは神の味噌汁……(苦笑)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る