119 進化の系譜 その99
冒険者ギルド・グラスランド町支部創設以来、子供大人関係無く……最速でランクF→Eでランクアップしたトーコ。そして、ダンジョン侵入許可を得られるランクDゲットすべく、再び必要な依頼をこなし始めるのだった……
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──翌日──
「えーっと……ランクDになるには……」
◎ホーンラビット×30の討伐。角・毛皮・肉の納品を頭数分
◎グラスウルフ×5の討伐。牙・毛皮の納品を頭数分
※討伐の結果、納品物品が納品分の数に満たない場合は揃えるまで狩る(解体はギルドではなく、自分で行うことを前提とする)
「……か」
ホーンラビット30頭って普通は荷車とか持ってないと無理だよねぇ……と思いつつ、書かれた紙を見ながら歩いている。背後にはロックホースが荷馬車……否、幌馬車を曳いている。今回は条件の討伐数が多い為、アイテムボックスと見せ掛けたストレージに仕舞ってもいいんだけど、他の探索者や冒険者の目もあるので余計なトラブルを招かない為に荷馬車代わりの幌馬車を持って来てる訳だ……いや、あたしじゃなくてロックホースくんが引いてるんだけど……
てくてくと歩くロッ君の腕に座ってるあたしは、紙を折り畳んでポケットに仕舞う。
「さて……まずはホーンラビットかな……」
空気中の水分を集めて目の前にレンズを構築する。所謂、角膜に乗せるコンタクトレンズ……のようなレンズを少しだけ離して宙に浮かせてる訳だけど……軽いので下から水蒸気を僅かに吹かせてちょっと揺れてるんだけど……まぁ許容範囲内だ。
「んーー……あ、居た居た」
何頭かのホーンラビットを発見するトーコ。
※普通のうさぎだと「ー羽」と数えますが、ホーンラビットは少女が抱っこできるような大きさではないので「ー頭」と数えます(下手すると少女とホーンラビットが同じくらいの体格っていう……)
「ロックオン……」
ぶわ……
っと、トーコの周囲に幾本もの鋭い氷の針が浮かび上がる。尚、トーコの視線の先にはトーコにしか見えないロックオンマーカーがホーンラビットたちに浮かび上がり、固定される(あくまでトーコの視界では……で、実際に他人から見える訳ではない)
びきびきびき……
細さはそのままに伸長したアイスニードル。そして……
「行け」
びゅおっ!
あっという間にすっ飛んでった氷の針たちは、目標まで弾着する。
〈〈〈ぴぎぃーっ!!〉〉〉
……と、断末魔の叫びがあちこちで響き渡り、乾いた倒れる音が僅かに聞こえてくる。
「じゃ、回収して貰える?」
ま゛っ
ロッ君がサクサクと歩いて拾ってまわり、トーコは幌馬車……の幌の上に跳び乗って次の獲物を探し始める。ロッ君が戻って来た頃には次の集団を見つけてロックホースに頼んで射程内まで接近して行く……。そんな狩りを繰り返している間にホーンラビットは要求数を満たしていた。尤も、グラスウルフの生息域に接近していた為、そちらもぼちぼち……というより、要求数は5頭だったのだが……
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「ただいま戻りましたぁー!」
ざわっ……
時刻はまだ午後になったばかり。お昼を取ってから戻ったにしても早過ぎる頃合いだ……
「トーコさん!……早過ぎませんっ!?」
レイチェル女史が大慌てで受付カウンターに両腕を乗せて叫ぶ。
「え?……そーですか?」
俺、何かやっちゃいました?……というようなノリで聞き返すトーコ。トーコはお昼を取っている……が、戻る際に水筒という名の革袋から水を飲んだだけなので、時間が余り掛かってないだけだが……w
「……そ、それで獲物は?」
レイチェル女史がこの短時間で集められる筈が無いわよね? 中間報告に来ただけよね? という、お願いだから、全部終わっているという予想を裏切って間違っていて……と祈りつつ、トーコに恐る恐る訊く。
「あ、外に全部あります。数が多いので裏に回りますね!」
とだけいうと、トーコは裏庭の倉庫前へと荷馬車をまわすという……
「ま……まさ、か……」
レイチェル女史は慌てて受付カウンターから飛び出し、廊下を走って裏庭へと駆ける……。このままでは、グラスランド町支部最速ランクアップ第2弾となってしまう……。それも、幼い貴族の娘に依ってだ! いや、別に自分としては構いやしないのだが……他のギルド員からすればメンツ丸潰れだろうし、このままダンジョンという戦場へロクに戦闘経験を積まずに挑戦を始めてしまう。
そう思うと、居ても立ってもいられないレイチェル女史であった……
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「じゃ、宜しくお願いします」
「おお!」
今回のランクアップ用に狩って得たホーンラビットもグラスウルフも、全て冒険者ギルドに納めないといけないらしい……
(まぁ、普通に討伐と素材を売却した額は貰えるしいっか……)
ちなみに解体はロッ君がやってくれた……え? 自分で?……。ちょっと嫌だったので丸投げした。反省はしていない! そしてレイチェルさんが駆けて来てちょっとゴネられた。
いいじゃん……ちゃんと要求条件達成してんだから……
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心配されてる内が花って言葉は、蛙の顔に小便のようで……。例えが汚ない? 別にいいじゃん(ヲヒッ!)
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