05 進化の系譜 その5

 およ1/3さんぶんのいち年……4箇月が過ぎ、町内会費の徴収の時期が来た。この町内では年末少し前に1年分の町内会費の徴収を行っているのだ。流石に冬ともなれば夏の暑い日々も過ぎ去り……辺りは木枯らしも吹きすさぶ季節となるのだった……

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──とある冬の日……──


「Tさん、町内会の徴収ちょうしゅうです!」


「う゛……はぁーい……」


 寒くて布団やら毛布やら重ねて寝ていたせいで体が余りいい状態ではない。水分しか受け付けなくなってから、水分を毎日コップに3杯……。要は、朝昼晩とコップ1杯の水を摂るようにしていたのだけども……


(まず先に水飲むか……)


 コップに入れるのも面倒と、直接蛇口から口に流し込む……大体コップ1杯分くらい。


ごく……ごく……ごく……


きゅっ……


 蛇口を締め、口を拭いてから玄関に……。


ガチャッ


きぃ……


「あ、おはようございます」


「……えっと?」


 挨拶をしたのだが町内会費を徴収しに来た町内会のおばさん……だと思う。名前は……近所付き合いが殆ど無いので誰だか知らないけど……おばさんがこちらを見て、怪訝けげんな顔をする。


(あ……そっか)


 随分と見た目が変わってしまっていることを失念していた。


「あ、Tです」


 ……と、改めて自己紹介する。


「えっと、Tくんの娘さんかしら?」


(え?……いや、違う……っていっても、これじゃ信じてくれないかな……)


 体躯は縮まり、多分体重も身長も以前の2/3に満たないだろう腹くらいだろうか?……。加えて、白髪っぽい銀髪ショート真っ白な肌染みソバカス無し銀の瞳シルバーアイ……


 ……どー見てもハーフか外人の娘さんな容姿で日本人には見えませんよね!


「え、えーと……あ、そうそう!……Tに養って貰ってるんですよー」


 ……取り敢えず、その場凌ばしのぎの出任でまかせで誤魔化ごまかしてみた。


「あら、そうなの?……あの人も隅に置けないわね?」


 何か信じて貰えた? それとも……


 取り敢えずは残り僅かなお金から町内会費を納めた。……年1,200円也。月100円なのか……


(これでやってけるのか?……この町内)


 他の町内会を知らないので少しだけ不安になったけど、運営といっても今まで町内会主催の何か……というと、盆踊りのお祭りくらいしか知らないし……寂れてる町内でもないのでそこそこ運営費には困ってないんだろうと思う。


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 まぁ、普段は何も無いので何もなければ積み立てしてんのだろう……と思う。盆踊りには今までで2回くらい、小さい頃に参加したくらいだったけど(近所の公園でやっている)それなりに人は集まってたし……

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