第8話

「カナ、可愛い!」


「もっかい! こっち向いて!」


親友達に祝福されるカナは、太陽のような笑みで周りを明るくしている。両親と親友達だけの式は、カナを中心に回っている。


式場に咲く向日葵よりもカナの笑顔が眩しい。


招待客は、俺の両親とカナ、ハヤトとセイラとサエコだけ。カナ以外は小学校からの幼馴染だ。高校の時カナと仲良くなり、みんなで昼飯を食うようになった。


カナに惚れた俺が告白し、成功して有頂天になっていたら事故で両親が死んでカナは転校していった。


それから、カナはずっと頑張っていた。


みんなカナの事を心配していた。だから、今日という日を迎えられて嬉しい。


少人数のリゾートウェディングは自由で楽しい。


その分、金はかかるけどな。カナと暮らすようになって節約できるようになり、なんとか費用を貯められた。


準備に少し時間がかかっちまったが、満足できる式になったと思う。


婚姻届は式の前日に提出した。これでようやく、カナと夫婦になれた。


カナは少し仕事をセーブして、今は週に二回配信をしている。当然収入は減ったが、充分暮らしていける額は稼げている。


俺も働いてるしな。約束通り、料理は俺が作ってる。繁忙期はカナが作ってくれるが、俺の飯の方が良いらしい。だから、俺も仕事を効率化して自分の時間を捻出するようにしている。


最近は、残業せず業務を終えると評価される会社も増えてきた。うちの会社もそうだ。ばあちゃんが若い時は、そんなの無理だったんだろうな。


時代は変わるもんだなと思う。


ばあちゃん、カナが配信で稼いでるの最初は信じてなかったもんなぁ。こんなに稼ぐなんて、犯罪じゃないのかってめっちゃ心配してたのを思い出す。


カナのファンはカナのゲームスキルに魅了された人達が多かったので、結婚して配信ペースを落としてもカナを支持してくれた。


例のクソジジイはばあちゃんの家を手放した。ハヤトの会社に騙された、訴えると文句を言いに来て警察が呼ばれたらしい。いろんな弁護士に詐欺だと訴えるも、誰も相手にしてくれないそうだ。


そりゃそうだろ。ハヤトに落ち度はない。だってちゃんと定期借地権の事をあのジジイに説明したんだぜ。証拠の書面も残ってる。けど、難しい事はいい、金を寄越せ、家は俺のものだと騒ぐだけで理解しようとしなかったのはアイツだ。


説明したのに怒鳴るばっかりで参ったよ。分からないなら、聞いてくれたらきちんと説明するのにと笑うハヤトはちょっぴり腹黒い笑みを浮かべていた。ハヤトのクライアントはカナだから、カナが有利になるように話を進めるのは当然とはいえ、ちょっと友人が怖かった。


味方にすれば最強だし、あのジジイが困る分には構わない。説明するだけ優しいだろ。カナを切り捨てたのは向こうだ。


そうこうしてるうちに土地を引き渡す日が来てしまい、家は壊されたそうだ。ばあちゃんが解体費用を業者に預けていたから、解体費用が払えないとゴネるジジイの意見は一切通らなかった。


ばあちゃん、ここまで見越して解体費用を預けてたんだとしたらすげぇわ。散々ばあちゃんを利用して生きてきたジジイは行方知れずだ。多分、カナを探すつもりだろう。俺が教えた街に行くと言い残してそれっきりだ。


どれだけ探しても、カナはいないのに。だって俺は、嘘の引越し先を教えたんだから。


俺らに縁のゆかりもない土地を這いずり回ってろクソジジイ。


「ヤマト! 早く!」


いけね、つい物思いに耽っていたらファーストバイトの時間だ。


「ああ、今行く。って……なあカナ」


「なあに?」


「それはちょっと、デカくねぇか?」


ファーストバイトのスプーンがデカい。こんなの一口で入らねぇよ!


「大丈夫、大丈夫! ほら、あーん!」


「くっ! 分かった、分かったよっ!」


あー、甘い。口の中がめちゃくちゃ甘い。


「おばあちゃん見て! クリームいっぱいだよ!」


カナがばあちゃんの遺影を持ってきた。写真のばあちゃんが、微かに笑ったように見えた。


ばあちゃん、安心してくれ。カナは幸せになるよ。俺も、カナがいれば幸せだ。


———————————————————


最後まで読んで頂きありがとうございます♪


この話の前日譚を短編で書きました。

高校生のヤマトとカナが付き合うきっかけを書いています。


よろしければご覧ください。


初めて見た笑顔

https://kakuyomu.jp/works/16817330660836529923

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おばあちゃんの愛と、復讐 編端みどり @Midori-novel

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