第6話
「カナ、カーナ、おーい!」
「ごめん、後で!」
あー……こうなったらもうダメだ。多分、自分の動画を見て、ゲームを練習して、企画を立てて……カナの頭の中には仕事の事しかねぇ。
俺の一言で、火をつけちまった。
相変わらずストイックだ。けど、そんなカナも可愛いと思う。
「しゃあねぇ、風呂入って寝るか。カナー、風呂は11時までに入れよ」
「分かった! アラームつけとく!」
会話が成立するだけマシだな。
さて、カナと話せないなら今のうちに情報を整理するか。俺は、ハヤトに電話をかけた。
「やっぱ抜かりねぇなぁ。ハヤトに頼んで良かった」
情報は集まった。やっぱりばあちゃんは、カナを大事に思っていたんだ。
だから、あの家を相続させたくなかった。あのじいさんが苦労しても構わないと思ってるんだろう。調べりゃまだ色々出るかもしれねぇな。
リフォーム代をカナが出した件については気になるけど……それは後でカナに確認してみよう。
こうなったらアラーム鳴るまでカナは動かねえよなぁ。カナはアラームを11時につけてるだろうから、10時半くらいに風呂に入るか。
ドラマを見て、風呂を入れて、風呂から上がるとちょうどカナのアラームが鳴りカナが防音室から出てきた。
「お疲れ、風呂入ってるからゆっくりしてくれ。俺もう入ったから時間気にせずゆっくりしろよ」
「ありがとぉ……。なんか頭がグルグルする」
「もう今日は風呂入って寝ろ。防音室は使用禁止だ。睡眠取るまで使わせねぇ」
「えー! そんなぁ……」
「駄目だ! 倒れたらばあちゃんが悲しむぞ」
「良いもん! ばあちゃんは結局、私の事なんかどうでも良かったんだよっ!」
「そうじゃねぇ、ばあちゃんはカナが大事だったからあの家から離したかったんだ。カナに少しでも財産を残せば、あの家から離れなかっただろ?」
「……うん」
「なぁ、定期借地権って知ってるか?」
「なにそれ」
「家は地面に建てるだろ、ばあちゃんの家は土地が借りものだったんだよ」
「うそ……! おばあちゃん地代なんて払ってなかったよ!」
「ハヤトが確認してくれた。ばあちゃん、カナが来る前に一気に地代を払ったんだ。あの家の土地の契約が切れるのは来年。普通の借地権と違って、定期借地権は契約が切れたら土地を更地にして返さないといけない。建物を壊すにも金がかかる。ばあちゃんの残した貯金じゃ、全然足りねえ。だからカナをあの家から離したかったんだと思う」
「じゃあ……じゃあ……! なんで壊すって分かっててリフォームなんか……!」
「それが俺も気になってるんだ。リフォームにかかった金はいくらだ?」
「五百万」
「結構な金額だな……。まさか……、ばあちゃん生命保険に入ってなかったか?」
「ん……、そういえば入ってたかも。おばあちゃんの大切なもの入れを持ってきたから見てみる」
ばあちゃんは、大事なものをクッキー缶にまとめる癖があった。
「なにこれ、手紙? 遺言書は神棚にあったのに……」
ばあちゃんの手紙には、こう書かれていた。
※定期借地権は平成に制定された法律です。この作品は少し未来の話だと思って下さい(定期借地権は調べた限り最低50年の契約のようですので、2041年以降と思って頂ければ…)
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