第2話 透き通る水面より美しく
〜魔界・初労平原 虚殺 蓮〜
光が収まった瞬間次に見えたのは草原だった。
涼しい風が吹き荒れ、すずs...
あれ?俺飛んでる?
いや、正確には...
落ちてるなこれ!
死んだわ...運の悪さが...
なんて考えているうちに、地面は近づいてくる。
死のタイムリミット。
いや、でもゲームだったら復活するか?
いや、痛みも再現されるから、死ぬ痛みを生きながら感じる生地獄。
しかし、どうしようもできず重力に従う。
改めて下を見ると、誰かが立っている。
こちらを向いているようだが、視力が悪すぎてよく見えない。
てか、自分の落下地点に立っている。
その瞬間、落下速度が下がり、その人の頭の上で止まった...
しかし一瞬だけだった。
すぐさま落下し、その人を下敷きにしてしまった。
しかし、自分が生きていたに気を取られ、そのまま馬乗りにしている。
どうやら低速落下の位置が低かったおかげで、落下の威力が軽減されたらしい。
「重い...」
「あっ...すいませn...」
女性だ めちゃくちゃ可愛い女性だ
(・・・)
俺、女性に馬乗りしてる?!
「すいません!!!今から死んでくるので少々お待ちを!」
「待って?!??」
急展開に、ふたりとも頭がついていってない。
「すいません、急に降ってきたと思ったら、貴方のことを馬乗りしてしまって...」
「いえいえこちらこそ...低速落下呪文がうまく行かなくて...」
「いや、めっちゃ助かりましたから」
「あ、良かったです...」
流れる沈黙。
「あの、もしかして僕のこと女だと思ってます?」
「え?」
謎の質問が飛んできて驚く。
「僕、男なんです。 よく間違われるんですよ(笑)。」
「嘘でしょ?!その声と見た目で?」
明らかに透き通るような高い声と、華奢な顔は女性にしか見えない。
「僕、
女性に似てしまったんですよね」
少し照れを隠せない凪。
「俺は...」
言葉を発したと同時に、後ろで爆発音が聞こえた。
正確には、巨大な物の落下音だった...
化け物だ
巨大な石で作った人間みたいだ。
俺の頭の中で、コイツは『ゴーレム』だと理解した。
背丈は3メートル程ある...
約、自分の倍はある。
これを倒せって...コト?
初戦の相手って、スライムとかじゃないの?
「凪くん、逃げるよ!」
とっさに声を発したが、彼は化け物に面と向かい飛び上がった。
次の瞬間、冷たい水が頬に触れた。
凪は、レイピアのような水をまとった剣を、流れる水流のように動かし、
化け物の硬い肌を切りつけた、
しかし、その岩肌に剣は通らず、弾き返された。
転げながら受け身を取り、再びレイピアを構える。
しかし、荒ぶる水流は、岩肌を濡らすだけ。
更にゴーレムの怒りを買い、巨大な拳をモロに受けてしまった。
俺がなんとかしないと...彼の攻撃方法は奴には通じない...
刹那、脳内にアンドロマリウスの言葉が流れた...
俺は、何も考えずに無我夢中で叫んだ。
「砕けろ!!!!」
その言葉は、化け物に届き、砕け散った。
これが...
凪は驚いて、状況を理解できていない。
俺は、本能的に、ここは危険だと察知し、
凪の手を引いて逃げ出した。
その感は正しかった、
その音に導かれ、新たなゴーレムたちが3匹ほど向かってきた。
俺は、もう一度術を使おうと試みたが、
先ほどまであった奇妙な力が減っていることに気づく。
それは魔力だろうと察した。
恐らく、MP的なやつ。
そんな事考えてる場合ではない。
全速力で駆け出した。
すると、かなり遠くの方に街があることに気づく。
そこまで走ればいいと目標はできた、
しかし、体力的な限界が近づいてきている。
この距離は走りきれない。
逃げ切れない。
頭に浮かんだのは、死んでやり直すことだ。
足を止めた。
「止まるな!」
誰かの声がした、無論凪ではない。
声の主は、瞬間的に二人をゴレームたちから引き離し、
ゴーレム達に立ちはだかった。
「爆破魔法・
近くに空爆が落とされたかのような爆風が、俺たちを襲った。
しかし、その爆破元にいたゴーレムたちは粉々になり、
生き永らえたことに安心感を感じた。
「君たち!今どき、こんな平原に出るのは、とんでもない
わかっているだろ!」
「いや、知らないです。僕はゲーム始めてから10分も経ってないんで」
「あ、すいません。ということは、このゲームの真システムを知らないのか...」
「真システムって?」
「単刀直入に言おう、このゲームから我々は出れず、この世界で死ぬと、
リアルに死ぬということだ」
「は?」
「そこに死体があるだろう。」
目線の先を追うと、蝿がたかっている死体が転がっていた。
「本来ならこの死体は消え、スタート地点に復活するはずだが、
見ての通り死体は消えず、彼は復活しなかった。
ある学者が調べたところ、この世界にバグが生じ、復活しなくなっている。
とのことだ、更に、今のところ全プレイヤーの中で、誰一人として、
ゲームからの出方がわからないとのことだ...」
嘘だ...
俺は、発する言葉が見つからなかった。
「今日はもう日が暮れる。宿屋に行くと良い。
私が案内する。」
彼女は、力の入らない俺たちを立たせてくれた。
赤髪のその女性は、微笑みながら自己紹介した。
「私は、メイト=アルフィッシモ 魔法騎士団の女団長よ」
俺たちには、そんなことどうでも良かった。
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