魔術師探し 聖女side

 首都から馬を借りて移動すること2日。

 道中ある小さな村などに宿を借り、休みながら進んできた。

 (ここがルクス...すごく大きい街ですね...海も見えますしすごく綺麗です...)

 そんなことを考えながらルクスに到着した。

 馬から降りて門番に狩人証を見せる。

 「こんにちは、狩人のレイ・リラードと申します。ルクスに入っても良いでしょうか?」

 「わ、わかりました。少し確認します.......はい、問題ないです」

 「ありがとうございます」

 微笑みながら門を進んでいく。

 するとすぐに面食らってしまった。門をくぐり抜けた瞬間、 

 「聖女様が来られたぞー!」

 という声が響いていたのだ。前もってギルドには連絡を入れていたのだが、そのせいか続々と人々が集まって来てしまった。

 「えっ.....と...ギルドはどこですか?」

集まってきた人たちにそう質問すると、近くに居た受付嬢と思われる人々が

 「こちらです!」

と言いながら先導してきたので、大人しくそれに従うことにした。

 そしてギルドに着くとルクスの総括責任者ギルドマスターが出てきて、

 「ルクスへようこそ。ルクスのギルドマスターをやっているアックス・フォートと申します。馬を預かりますね」

 そう言うと自ら馬を引いてギルドの馬小屋に連れて行った。

すぐに総括責任者ギルドマスターは戻ってきて

 「ギルドに入ってみます?それともすぐに街を見に行きますか?」

と聞いた。レイはすぐに

 「一旦ギルドに入ってみたいです」

と答えた。

 (魔術師さんが居るかもしれないですし、なにか情報を得られるかもしれません...)

 そう期待し、ぎぃぃぃ、とギルドのドアを開けて中を覗き見る。

 すると扉越しに聞こえていた声は一瞬だけ消え、ざわめきが広がる。

 「聖女が来たぞ...」

 「なんてこった...ヤバい魔物でも出たか?」

 「凡そアイツがやらかしたんじゃねぇか?」

 (アイツ...?もしかしてその人のことでしょうか...詳しく聞けると良いんですが)

「アイツとはどのような方なのですか?」

「え?あー...魔術師だよ。だいぶ変だけどな。名ま__」

「アットホームでしょう?アーヴァン王国どころかこの大陸で最も仲が良いギルドと自負しているんですよ」

 急に目の前に現れた総括責任者ギルドマスターが徐ろに言葉を遮り、辺りに興味を持たせるような発言をした。

 レイは突然のことに驚きながらもそれだけで情報を整理する。

 (総括責任者ギルドマスターは何か知っているようですね...それよりも変、とは見た目も強烈ということなのでしょうか?それとも心の軸が変とみなしているんでしょうか?どちらにせよ...)

「魔術師は居る、ということですね」

「ん?何か仰りましたか?」

「いいえ、なんでもありません」

 レイはニッコリと微笑み、

 「それよりもすぐに街を見てみたいですね。どのような感じなのか気になります」

 と言葉を繋いだ。

______________________________________



 自由に街をほっつき回ってその魔術師の聞き込みをするつもりだったのだが、どうやら総括責任者ギルドマスターはそれを警戒しているらしい。最初は単なる警備の一環なのかとも思ったが彼のことに暗に触れる質問などは見事にいなされてしまい、彼に関する情報が集まらないように徹底しているようだった。

 結果的に日付を越すまで歩き回ってみても彼の情報はほぼ集まらなかった。

 宿について神への祈りを済ませた後、すぐにベッドに入った。

 (一人ではやはり厳しいですね...フレッドも用が済んだら来てほしいのですが。)

 そんなことを思いながら、レイは眠りについたのだった。



翌朝。


 レイは普段よりもずっと早く目が醒めてしまった。神への祈りを日課通りに済ませた後、持ってきている服などを確かめ、今日何を着るかについて悩み始める。

 散々悩んだ末に動きやすそうな服装を選んだ。動けるのであればなるべく動きたいのでそこは即断だった。

 レイは食堂が開いている時間を確認すると食堂に降りていこうとして部屋のドアを開けたタイミングで2つ左隣の部屋から人が出てくるのに気付いた。

 「あ...おはようございます」

 「...おはようございます」

 すぐに挨拶を返すと淡白ながら挨拶を返される。

 特に疑念を抱くこともなく食堂に降りていった。

 食堂に着くと既に多くの人が居り、自然と目線が自分の方に向かっていることに気付いたレイは身体を縮こませながらそそくさと朝食を注文し、受け取って席に座った。

「いやぁ人気者だねぇ、聖女様」

「知っているんですか?」

「そりゃ有名人だよ!たとえルクスでもね!」

 目の前に座っていたベテラン風の女性の冒険者に話しかけられる。

(何か情報を得られるかもしれません)

 レイは一縷の望みをかけて、彼女と話を続けたのだった。

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