第2話 大森城の謀略
空想時代小説
10月6日、梁川城攻めが始まるとともに、大森城攻めの一団が山沿いにすすむ。梁川城には1000ほどの守勢がいた。平城で攻めやすい城なのだが、陽動作戦で福島城勢を誘いだすのが目的なので、総攻めにはいたらない。相手も籠城策なのか討ってでてこない。
一日たっても福島城勢に動きはなかった。そこで、政宗は本陣を信夫山にすすめた。途中の瀬上(せのうえ)という平原で小競り合いがあった。先陣の黒川勢が伏兵の襲撃を受けたのである。あたりはススキが茂っており、兵が忍ぶには最適の地である。黒川晴氏はススキを焼きはらうように命じた。成実だけが馬上で悔しがっている。戦いたくてうずうずしている。1刻(2時間)ほどで、火勢が衰え、進軍が始まった。
信夫山についたのは、陽が沈みかけたころであった。福島城までは半里(2km)ほどの距離である。福島城のかがり火がよく見える。敵は当初、川を越えて背水の陣をしいていたが、仙台勢が信夫山に到着したところで、多勢に無勢ということで、川を渡り、対岸に陣をしいている。川は1町(50m)ほどの幅で、深みと浅瀬がある。当然、福島城勢はその場所を熟知しており、浅瀬を渡っていったのだ。仙台勢は、そこまでの情報はなく、夜の渡河は無謀であった。
政宗は、中腹の神社の境内に本陣を置いた。政宗は、戦の時は興奮して寝付けなかった。傍らには数名の小姓と小十郎親子がいる。副将の原田甲斐は5000の兵とともに、山の裏手にいる。
政宗はある報告を待っていた。夜分に、その報告が横山隼人によってもたらされた。
「隼人、大森城はどうなった?」
「殿、謀られました!」
「なにっ! どういうことだ?」
「大森城は空城でございました。引き渡すという約状でしたので、それもありかと思ったのですが、支倉殿は危ぶまられ、一度山を下ることを決められました。すると、山すそから鉄砲を撃ち込まれるとともに、火をかけられ、下ることができなくなりました。兵糧や武器弾薬も少なく、敵が攻めてきたら、とてももちませぬ。拙者は山の裏手から敵の目をかいくぐり抜けてきた次第です」
「うぬ、やはり本庄繁長。策を使ったか、油断ならぬ相手じゃ。小十郎どうする?」
「大森城は捨てざるを得ませぬ。支倉殿には撤退の命を伝えまする。山全体を包囲する力は相手にはありませぬ。火をかける芝やススキがなくなれば撤退はできると思われます。明日は、松川をはさんで対峙することになります。兵力では圧倒的にこちらが多いわけですから、通常の力攻めでいけると思いますが・・」
「相手は、たかだか3500。負けるわけがないな」
政宗は自信をもっていた。傍らの小十郎は、そんな政宗を見て、やや不安になっていた。
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