第6話 専門校在学の話
お店で覚えることもあるけれども、
そのほかにもたくさんの覚えることが多くて辟易する。
心理学の用語、相談されている時の態度、考え方に問題があるのか、
相談者の環境に問題があるのか。
どこに問題があるかによって声かけも変化していく。
力のある資格は大学へ行った方が有利であったかもしれない。
しかし、認定された学校でなければ通っても意味がないので、
今の状況が一番であったと感じる。
占いの知識と心理学の知識を組み合わせ、
お客様がどのようなことで困っているのか大体は予想が付くようになった。
もちろん大体であるし、違うこともあるのだが、
60パーセント当てられるようになってきた。
お客様があっているとおっしゃるのがとてもうれしい。
それでもまだSには届かない。
圧倒的な手相の知識が彼の強みだ。
Sに手相を見てほしいと半年ごとに来る常連様もいるくらいだ。
お客様の様子を見ているとほとんど当たっている。
(手相ってすごいんだな)
ちなみに常連になってくるのは社長など会社の上の方の人だ。
それだけ不安に駆られるということかもしれないし、
占いに懐疑的といわれる男性がハマる理由は手
相の的中率の高さからくるものなのかもしれない。
手相は統計学な面もあるために数をこなしただけ知識を得られる。
だからなのか、Sを指名する客が後を絶たない。
(しかたない。見習いなんだし)
人外の取引は接客もするが、気持ちのいいものではない。
ギャンブル依存症のものが多いが、
シングルマザー、シングルファーザーも見られる。
手相とタロットを極めようと決めて、たくさんの占い方を学ぶ。
一瞬でも相手の心を軽くできるように、相手の人生の指針になれるように。
でも依存しすぎないように心を保つ。
時間はいくらあってもありない。
それがプロの領域に達するってことだ。
「お金をもらうって大変だわ」
「だろう」
「もう接客は良いの?」
「全部終わらせてきた。しばらくは休憩だ」
ドカリと椅子に腰を掛けるS。
タバコを吸っていても違和感のない風貌をしているのに、
彼は匂いが気になるといってタバコ関係は吸わない。
「ねぇ、私の手相みてよ」
「休ませろよ」
軽口をたたきながら、私の手をのぞき込む。
「ふっ。スカウトしてよかったぜ」
彼は、外に行ってしまった。説明せずに終了とは。
(相変わらずどS。勉強に戻るか)
Sの一番近くにあった参考書の端のページが折れている。
そのページには、覇王の線。会社の社長などに多く見られる手相とあった。
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