第5話 高校生の進路

  ☆☆☆

 進路相談の時期がやってきた。

 三者面談で詳しい話を詰めていく。

 ほかの友達だちは大学、短大、専門など夢がかなう場所に行くらしい。


 母親に自分の意見を言うのは初めてかもしれない。

「私、働きたいところができたから高卒で働くわ」

 母親は案の定、渋い顔をして反対した。

「長い人生だもの。専門学校くらいなら出せるから手に職を付けてみたらどう?」

「そうね」

 心理学系の専門学校に行くことにした。内申点は足りているから推薦でどうにかなった。

 あの店に勤め続けるのなら精神を病まないために必要なスキルかもしれない。

 自分の進路は定まった。

 家からも通える距離で家事も手伝えるし、今まで通りにSのところに出入りもできる。

 ☆☆☆

 

 秋の風が強まるころ、この日は人数が多くなっていた。

どこからの口コミなのだろう。占いにはまるもの、寿命の売りに走るもの。

(儲かるんだな。この店って)

 死神から手数料を取っているから何百万単位なら黒字。

 一通りのお客様が用事を終えたころ、Sは私に提案してきた。


「おい、お前、占い勉強しようか」

「はぁ?」

「仕事場で反抗的な返事をしない!  だからこれらの占いだって大切な収入源。きっちりこなせるようにならないと収入減るだろ」

「真剣に稼がなくても、大きな柱はあるじゃん」

「時々監査が入るんだよ。人ならざる者から依存していないかどうか。きちんと人間界で役に立つこともしないといけないんだよ」

「そうなんだ。Sはどれができるの?」

「占星術、タロット、手相」

「へー。そんなに種類あるんだね」

「お客様に提供するときは大体まとめて提供する。どれがいいってわけでもない」

「ふぅん」

「大切なのはどれだけ相手の未来を当てられるかだ」

「確かに」

 Sはどさりと参考書を持ってきた。

「こんなに――」

「しっかり学べよ」

 しばらくは研修期間だと言い残して、接客に行ってしまった。


 占星術、タロット、ルノルマンカード、オラクルカード、手相。西洋系の占いだけでなく日本から伝わる干支を使ったもの、神社にあるようなおみくじ。

 一時期話題になったある人が編み出した占い方までの本がびっちりある。


「まずは得意なものから行きましょう」

 自分の得意不得意を知ることが学ぶコツである。

 日本に伝わるものと手相はなんとなくわかってきたものの、西洋の物は決まりが多くて一朝一夕にはどうにもならない。


「カードの置き方だけでこんなにもあるなんて」

 これに加えて顧客の対応もしないといけない。

 まだまだ自分は世間知らずでこれから職業人生を歩んでいくのだと知った。

「頑張らないと」

 Zの試行錯誤はなおも続く。





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